「
……もしかして酔っ払ってます?」
「酔ってないです」
酔っ払いの常套句であることはよく知っている。それを降谷さんが言うなんて。
赤い頬をして目が座っている降谷さんに新鮮さを感じながら、マタタビパウダーを握り締めた。
私は酔った降谷さんを見たことがない。
仕事上、いつ呼び出されるか分からないからすぐ現場に向かえるようにしている。だから一緒にお酒を飲む時も少しだけ飲む。代わりに私は一緒にお酒を飲めて嬉しくなって、うっかりでろでろになってしまうのだ。その度に降谷さんは呆れたに笑って優しく諌めてくれる。私はそんな彼をぐらぐらの頭で隠れて窺っていた。
「あずささん」
「降谷さんがすごく猫だ」
はあ、と熱い息を吐いて蹲る降谷さんに、マタタビを乗ってた指を差し出しすと、くんとにおいを嗅いで舌で舐め取った。猫特有のざりざりした舌が人差し指の腹を擦る。そのまま牙に触れると縋るように私を見上げた。撫でて、と言っているようだ。差し出された顎を言われるがままに撫でると骨張った喉仏がごくりと上下する。溢れ出る色気が滝を作っていて、なんだかいけないことをしているみたいだ。ただマタタビをあげているだけなのに。
「
……あまり、見ないで。格好悪い」
降谷さんは唇を結んで、気まずそうに視線を外した。
まだ午前中で窓の外を爽やかな空気が流れているのに、この部屋は真っピンクだ。だってこんなふうになるなんて聞いていない。
「降谷さんがえっちすぎてよく分かりません」
「ええ
……?」
窓の外に逃げていた視線が戻って来る。そんなに不安そうな表情をしないでほしい。私はあなたに釘付けなのに。眉間に皺を寄せる降谷さんを抱き締めてこめかみに唇を落とした。いつもより高い体温。猫の体温。背の高い男のひとなのに。
「あとすごく可愛い」
肩にくちなし色の髪と耳が触れる。頭を撫でるとごろごろと喉を鳴らしてくれる。私はそれだけで堪らなくなる。降谷さんはバツが悪いのか頬を膨らませている。
「
……みっともないってことです」
「みっともなくない。私はとても好き。ねえ、キスしていい?」
「今?」
「うん、今。今すぐしたい」
続:猫の日よん
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