起きて隣に寝ていた彼の頭に生えたくちなし色の猫の耳を見た時、まだ夢を見ているのかと思った。今まで色々な夢を見てきたけれど、目が覚める夢を見た記憶はあまりない。ただ覚えていないだけかもしれないけれど。
身を起こしてカーテンを開けると、朝日が差し込み、降谷さんがまぶしさに身じろぎして私の腰辺りに顔を埋めた。まるで猫のようだ。降谷さんはいつも私より早く起きる。だから、今日のように起きないのは珍しい。仕事で詰めていたからだろう。目の下に染みた隈を指で撫でると、猫耳がぴこぴこと震えて彼は目を覚ました。
「
……ん、おはよ」
寝起きのおぼつかない笑顔を見られるのは特権だ。頭を撫でるとごろごろと降谷さんは喉を鳴らした。さらさら指の間を流れる髪が気持ちいい。
「おはよう、降谷さん」
頭を撫でる反対の手で、頬を思いっきり抓った。
「いった! え!?」
「梓さん?」
痛くないはずの頬はしっかり痛くて、これは夢ではないと分かった。
頭に猫耳が生えていると降谷さんに伝えて手鏡を渡すと、当然だけどとても驚いた。「なんだこれ」とか「はぁ!?」とか困惑しながら、耳を引っ張って鏡を覗き込んでいる。いつも冷静な降谷さんの混乱している姿を見られて、非日常ながら少し楽しく思い始めている。
「すごく可愛い」
「
……あのね、面白がってるでしょう」
頭を撫でつつ、猫耳の先に指を触れさせるとぴくと跳ねて耳を倒した。大尉みたい。降谷さんはぎゅっと目をつぶって首を竦めた。
「うん」
「うん、じゃなくて。なんでそんなに冷静なんですか」
「いやあ
……混乱しすぎて一周しちゃった、というか」
溜息を吐く降谷さんのお尻から伸びる長いふわふわの尻尾
――耳と同じ色だ
――が見えて、ついに私は意識を飛ばしてしまった。
続:
猫の日に
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.