2023-03-19 02:58:39
3590文字
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とんだラブレター(セバ転)

最高な元ネタは蜜柑(@mikan02171)さんのこちらのツイート「犯行予告から始まって最後はとんだラブレターだ、で終わるセバの話くれませんか?」

言質も取ったから頑張って書いたってわけ。平和時空ふわふわ設定ブンクロ女生徒。
ところでオミニスにひたすら食べさせてしまった。いっぱいおたべ……。

たわいない話をしながら昼食を取っていた時に、"それ"は投げ込まれた。
ブラッジャーみたいな色と速さで飛んできたオオコノハズクは、僕宛の手紙を投げ込んで早々にご退場していった。よっぽど腹が減っていたのかと思ったが、今思えばこの手紙が厄ネタとわかっていたのかもしれない。

アンの近況報告か、はたまた転入生が何やら面白いことでも見つけてきたか、なんて思いながら至って普通の白い封筒を特に警戒もなく開ける。引き出した手紙はしかし、新聞の切り抜きを貼り付けた異様な文面だった。
曰く、「今日、寝静まる頃に時計塔の最上へ さもなくば飲み物に怪しい薬入れます」。差出人不明。一体どういうことなんだ、怪しい薬って曖昧すぎないか。手紙を読み続けてるフリをしながら、さっと辺りを見渡す。とんだ犯行声明の主は十中八九ここにいるに違いない。いつかの、イタズラを仕掛けた後のアンみたいに。
なのに内容的に一枚噛んでそうなギャレスは同じグリフィンドールの仲間内で盛り上がっていて一切こっちは見てないし、他に怪しい挙動を見せてる生徒も見当たらない。
隣のオミニスは楽しく昼食を続けている。君、見た目の割に結構食べるよな。大体二人分は食べてるしよく間食もしてるはず、一体何処に収まってるんだか。
転入生はそもそも昼抜きでこの場にいない。君はもっと食べてくれ、僕はこの大広間で君を見かけたことが両手で数えるくらいしかない。なおそのうちの一回は組み分けに遅れてきた時、もう一回はオミニスとちょっと口論になっていたのを聞きつけてやってきた時、他は見かねたレイブンクロー生が引き摺ってきた時だけ。いつ倒れても知らないぞ、と持っていた蛙チョコを無理矢理ねじ込んだときは、同じようなことをナティやポピー、同室のサマンサやコンスタンスにもされていると言っていた。それはそれで、少しもやつくような胸のつかえがあったけど。

「どうかしたのか」
「そんなとこ」
「よっぽど面白い手紙だったんだな」

隣のオミニスをジト目で睨め付ける。見えるわけじゃなくても案外雰囲気は伝わるらしく、何かと無言で訴えるようにしていた。
中身はくだらないことばかりだし、大概はオミニスが揶揄い好きなことに端を発するので。何が愉快なのか控えめに肩を揺らす親友の口に残りのパイを突っ込んでやった。暫く噎せてるといい。

「けほっ、ところで内容は教えてくれないのか?」
「果し状みたいなやつ」
「へえ、グリフィンドールに喧嘩でも売ったのか。お前の強さを知らない奴がいるとも思えないが」
「どうだろうな。ともかく話は受けてやるよ」
「"みたいな"か、面白くなってきたな」
……まさか、何か知ってるのか」
「いいや。そもそも読んでもない手紙に知るも何もないだろ」

それもそうか。何か引っかかるような違和感が拭えないまま、今晩のおいたを見逃してもらうべくオミニスの前にトライフルを置く。やはり持つべきものは誠の友。察した親友はうまくやれよ、と耳打ちしてから手を着けていた。

あれから、身の入らない魔法薬学と魔法史をいなして、味も朧なまま夕食を終え、開いた本は大して進まないままただ時間が来るのを待っていた。月明かりは冴え冴えとホグワーツの城内を照らしている。冬に向かっていく風は、今の僕に丁度いい冷たさで頬を撫ぜていく。そろそろ消灯時刻も近い。何を思って医務室とも繋がっている時計塔の上だなんて危なっかしいところを選んだのかは分からないが、余程監督生やら癒者の目を掻い潜るには自信があるらしい。そんな知り合いは生憎一人しかいないが。
木造の階段の機嫌を取りながら進むのか、と思っていたが、案外と機構の立てる規則正しい音が良いノイズになってくれる。来慣れているのだろうか、と苛立ちかけたがすぐに思い直す。およそどんな依頼も断らず、昼夜あちこちに出没する彼女以上にホグワーツ城に詳しい人はいないと言っても過言ではないのだ、張り合うだけ馬鹿らしい。

「レイブンクローの割に、イタズラが過ぎるんじゃないか」
「知恵があるって言ってよ。誰から送られたか、わからなかったでしょ?」
「まあね。確かに手は込んでた」

少しでも驚かせようと目眩まし術をかけたまま登り切った先、月明かりを透かすステンドグラス調の文字盤越しに照らされる彼女に目を奪われて、思わず誤魔化すような軽口を掛ければさも日常のように応えてくる。どこか超然として見えた表情も、にっと笑ってみせたいつもの彼女の中に溶けて消えていった。

「ここに、怪しい薬があるんだけど」
「おいおい、まさか来なかったら本当に飲ませる気だったのか?」
「え?そうだよ」
「物騒だな……。それで中身は?」
「怪しい薬」
「それじゃ答えになってないだろ」
「言ったら面白くないじゃん」

きゅ、と硝子瓶の擦れる音がして甘い香りが漂う。濃い紺の瓶だから気付かなかったが、ホグズミード通いなら有名なこの匂いは。一息に呷ろうとする彼女を止めたくて、咄嗟に手ごと掴む。伝わる温度は冬を迎える前の夜に不釣り合いで、今の僕らに似合いの熱を持っていた。

「念の為聞いておくが、中身は分かってるか?」
「私はね」
「残念だが僕も知ってる。だから君に飲ませる気なんてないし僕も飲まない。……来なかったら、僕に飲ませる気だったんだよな」

どんどんと頬を赤く染めていく君が可愛くて仕方ない。今すぐにでも抱き締めたい。だけど、まずは君の口から、君の声で聞かせて欲しい。

「なあ、これを呷ってどうするつもりだった?教えてくれよ」
「え、あ、えっと」
「こんなもののせいにしなくたっていいだろ。ほら」

結局、僕がもらった正体不明の奇妙な果し状はとんだラブレターだったというわけだ。