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憂依
2024-02-17 22:35:43
4674文字
Public
供養シリーズ
供養②:かつて、俺を殺した男(緑間さんとモブの話)
書きかけのネタ供養シリーズ。マジでこんな話書いてたの全く覚えてなかったわ。
多分これ緑間さんが会社員やってるので書きかけの火緑のシリーズの関連だと思うんだけど、自信はないからCPはないのかもしれない。
それくらい書いたことを覚えていない。おぼえてないからどういうオチにしようと思ったのかも覚えてない。
かきかけなので途中抜けてるセリフやシーンがあるけどご愛敬。
1
2
就職氷河期。ブラック企業。
そんな言葉が世間を騒がせて久しかった頃に比べてましになったとはいえ、俺の就職活動は難航を極めた。
大学時代、実家暮らしで親の金を使い生活を送っていたのでアルバイト経験がなく、奉仕活動やらインターンシップといった目立った活動をすることもなく、他人に褒められるような長所などかけらも存在するはずもなかった最底辺に位置するオタク半ひきこもり野郎であった俺。
履歴書やエントリーシートと悪戦苦闘すること数か月、書類で切られ一次面接すら通らない。
周りや研究室の知り合いが内定をもらっただの教員免許を取っただの公務員試験に受かっただのと聞くたびに焦りながらも内定を得られず、夏になる頃には大学のキャリアセンターや研究室の教授に催促される日々。
そんな俺がこんな有名企業に就職できたのは夢ではないのかと、今でも信じられないくらいだ。
俺がこの春から就職することになったのは、誰しも一度は名前を聞いたことがあるであろう会社である。
夏が過ぎるころには手あたりしだいにエントリーしまくっていた中、半ば書類で切られるだろうと思っていたのにあれよあれよと審査を通過し、最終面接にまで到達し、会社から採用通知が届いた瞬間には思わず我が目を疑ったものだ。
それは両親も同じであり、いつまでたっても内定の一つも出ない俺にあきれ返り罵倒の数々を口にしていたのが一転、小躍りしながら態度を急変させたのには笑わずにはいられなかった。
まあ、しかし。
その苦難の就活も無事終わり、切って返すようにヒーヒー言いながら卒論を終わらせて無事卒業することが出来た俺はこうして入社式を迎えようとしている。
仕事や職場の対人関係に関して不安がないといえば嘘である。なにせ、学生時代は半ひきニートでありコミュ障であった俺だ。
不安がないというより、社会人としての自分に不安しかないといってもいい。
それでも、これから始まる自分の新生活に不安と共に期待を抱いていた俺は。
「
…………
は?」
入社式に集まり、自分と同じく新入社員であろう集団の中にその男の姿を見つけてしまった。
「まさ、か」
ありえない。
いくら何でも、そんな偶然あるはずがない。
確かに、この企業は大手で、新入社員も比例して多いだろう。
だが、何百万とある日本企業の中で、同じ会社に入る確率がどれくらいだと思っている?
ましてや、向こうは中学時代ですでにあれほどの実力を持っていた相手だ。
こんな社会人にならずとも、プロリーグのチームや実業団など引く手数多だろう。
この会社にはあの競技の実業団チームなどなかったはずだ。
だから、あいつがこんなところにいるはずがない。
だけど。
新入社員の中、頭一つ飛び出すほどの長身に、メガネをかけた整った容姿の男。
かつて出会った時の面影を残すその顔立ちに、苦い記憶が急速にリフレインされていく。
もう、8年も昔の話。
かつて、こんな俺でも輝かしい日々があった。
部活に没頭し、仲間と共に戦い、勝利に笑い敗北に泣き、青春という汗を流していた中学の3年間。
中堅どころながらも仲間たちと共に切磋琢磨し、3年目の夏、中学最後の大会で俺達は学校初となる全国大会出場を果たした。
その全国大会で、俺は、俺を始めとする多くの選手達は、現実を突きつけられることとなる。
この世には、越えられない壁が存在するのだと。
その壁の名を、「キセキの世代」といった。
* * * * * * *
その日のことは、多分一生忘れない。
一か月に渡る社員研修が終わり、俺達はそのまま新人歓迎の飲み会へと繰り出していた。
オレが配属された部署は割と気さくな先輩が多く、コミュ障な俺相手でも親切に仕事を教えてくれた。
まあそれが新人研修というものなのだろうが、同期の中にはあれが優しいとかお前バカじゃねえの?とも言われたりした。おかしい。
正直軍隊のような厳しいものを想像していた俺には優しかったのだが、彼にはそうではなかったのだろう。
仕事はそれなりにきつかったが、これが社会人というものだと思って耐える。
世の中にはオレよりブラックな環境で働いている人が大勢いるのだ。文句などいえるはずがないし、一歩間違えれば俺もそうなっていたかもしれないのだから。
そして、開催された飲み会である。
大広間を貸し切って某食べ放題の居酒屋で行われた飲み会は盛り上がっていた。
酒の席では無礼講、とまではいかないが、席を移動して新人に絡んでくる先輩方や、それまであまりしゃべったことのなかった部長が酔って奥さんを愚痴を履いたりだとかしているのを見ていると、自然とこちらも楽しくなってくる。
のだが。
「あーっ、これで綺麗な女の子が酌でもしてくれればなあ」
そんな風に漏らしたのは、俺の隣に座っている同期だ。
彼の視線は俺らが座る机とは別の机のある一点に注がれている。
座席は基本的に新入社員がまず固められ、先輩達は各々好きなところに座るという感じだった。
しかし、飲み会も進んでくると場所を移動する人も多く、最初と同じ場所に座っている、というものの方が少なくなっている。
そして、その男は飲み会が始まった時は同期の女子に囲まれ、今は女性先輩社員に引きずられ場所を移動し、麗しい方々に囲まれ質問攻めにあっていた。
部署内の女性たちの注目を一身に浴び、綺麗どころをはべらせていることに対する妬みの視線を一身に受けているその男こそ、憎き緑間真太郎である。
神様は、きっとおれのことが嫌いなんだろう。
そうじゃなければ、こんなことがあり得ない。
入社式は会社全体で行われたため各地の支社の新入社員も集まっていたそうなのだが、そんな中で各支社の様々な部署に分かれる新入社員の中で、なぜ、よりにもよって俺はあの男と同じ部署に配属されてしまったのだろうか。意味が分からない。
その時、俺の中で何かがキレた。
酒が入っていたせいかもしれないし、緑間に対する苛立ちが頂点に達していたのかもしれない。
キセキと対戦したこともない癖にキセキを語る先輩社員に腹が立ったのかもしれないし、何も知らない癖にキセキを褒め称える女達に我慢がならなかったのかもしれない。
「っけんなよ
……
」
突然の音に、それまで騒がしかった場が一瞬静まり返る。
俺の周りにいた同僚達も先輩達も、何事かと俺を見つめていた。
「何、寝ぼけたこと抜かしてんだよ。てめえ
……
!!」
だが、そんなものが目に入らないほど、オレは間違いなくブチギレていた。
席を立って緑間の傍まで歩く。掘りごたつの和室では立っていると背の高い緑間といえでも視線が下だ。
それを無理やり襟首をつかんで立ち上がらせる。
緑間の巨体を運動から離れて久しいオレが持ち上げられるのかと思ったが、火事場の馬鹿力か怒りによるものか。
完全にではないが中腰になった緑間に、俺は溜まりに溜まっていたものをぶちまけた。
「『』
……
!? よりにもよっててめえがそれをいうのかよ!! てめえら「キセキの世代」のせいで、何人、いや、どれだけの人間がバスケを奪われたと思ってんだ!!」
それは、あの日言えなかった言葉。
あのひから、ずっと胸の内側に巣食っていた言葉。
「さすが天才さまは言うことが違うな!! そりゃあそうだ、てめえらは天辺で高みだけ目指してて、足元でくだばってる俺たち凡人のことなんて見向きもしねえ!」
馬鹿げている、と思った。
ふざけている、と思った。
意味が分からなかった。
理解が及ばなかった。
もしこの世に本当に神がいるのだというのなら、なんて理不尽で、なんて不平等なのだと思った。
油断も慢心もなかった。
全国大会に進めたことすら奇跡に近いものだったのだ。俺達は全中開催まで必死に練習に励み、技術に磨きをかけ、県の代表として恥じないように努力してきた。
なのに、どうしてあんなことになってしまったのだろう。
広がり続けていく点差。
追いつけない背中。
掴めないボール。
ただ、圧倒的なまでの強さ。
俺達の努力をあざ笑うかのように、掠りもしないほどの暴力的実力差。
「それを悪いこととは言わねえよ! 他人のことなんて気にしてる余裕なんてないのはこっちだってそうさ。でもなあ、でも!! やっていいことと悪いことってもんがあるだろうがよ!」
それだけなら、いい。
それだけならよかったのだ。
だって、あれは全国大会だ。俺達よりはるかに強い敵がいることもあるだろう。手も足も出ないで終わることもあるだろう。
たとえそんなことになったとしても、最後まであきらめずに食らいついていこうと、俺達は誓った。
けれど。
『よっしゃ、20点目!』
『ちょっと峰ちんー、一人で決めすぎー』
『くっそー、これじゃまた青峰っちの勝ちになっちゃうじゃないっスか!』
そいつらは、まるで俺達が見えていないかのように試合を進めていた。
俺達には目もくれずに、ただ自分達だけしか見ていない。
見ているだけでわかる。
こいつらは、試合に勝つことなんてどうでもいいのだ。
勝つことが決まりきっているから、誰が一番点数をとれるかで競い合って、自分達で楽しんでいたのだ。
ふざけるな。
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな。
「ふざけんなっ!! 自分達の自己満足のために俺たちを足蹴にしたてめえら「キセキの世代」が、
気がつけば、腕が出ていた。
緑間の端正な顔が吹き飛ばされて、女子社員が悲鳴を上げる。
しかし、頭に血が上った俺はそんなもの聞こえない。
脳裏を占めるのは、あの絶望に覆われた最後の試合の慟哭だけ。
「俺からバスケを奪っておいて、俺の人生めちゃめちゃにしておいて、
視界が歪む。涙があふれて止まらない。嗚咽でうまく喋れていないかもしれない。
それでも、叫ばずにはいられなかった。
「」
俺の、俺のあの三年間は、俺の苦労と努力は、お前らを楽しませるためにしてきたんじゃない。
ボロ負けしてしまうのはいい。
蹂躙されるのはいい。
弱者が強者に踏みつぶされるのも淘汰されるのもまだ許せる。
だけど、これは違うだろう。
俺達は、俺は、こんな気持ちを味わうために、バスケを続けてきたんじゃないのに
―――――――
!!
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