みたむら
2024-02-07 22:38:12
13706文字
Public FF16
 
406434

FF16の世界へ旅をする話:プロローグ編

タイトル通りな話。
FF16の世界を小さい頃にプレイしたことがあるという設定の、今からちょっと先の近未来からFF16の世界にトリップする話です。
完全自己満足だけど、後悔はしていない。(単純に異世界トリップものと取ってもらったらOK)

2024.03.31のインテイベントで頒布予定(あくまで予定)のディオン夢本に入る前のプロローグ部分を2024.02.09エアブーイベントにて公開です。
同人誌の方は、プロローグ出してるのにも関わらず突然最終回的な感じのお話になってます。(ED迎えたけど元の世界に帰れないどうしよう!?みたいな感じな話)
一応、同人誌に入る前に、夢主がどうやってFF16の世界に来たのか的な感じの内容になってます。
オンライン版はこれからちょこちょこと更新していく予定です。シリーズ的な感じで。

※オンライン版は名前変換出来るようになってます。名前変換しなければデフォルト名で読めると思います。
※同人誌版はネームレスの予定。(これはオンラインとオフラインのいいとこ取りをとった試験的な部分もあり)
オンライン版は設定した名前を呼んでくれますが、同人誌版は夢主視点で展開していく(一部除く)ので名前で呼ばれることはない。(お前とかあなたとかで呼ばれる)
あと、オンライン版と同人誌版の体裁はそれぞれに合わせてやってます。
オンライン版読んで本も購入予定の方はエアブー展示用か、後日解放予定の書店でのサンプル公開等でご確認の上、購入の検討のほどよろしくお願いします。

エアブーの方もよろしくお願いします。エアブー240209(2/9~2/15まで)
Straight Days – オンライン同人誌即売会|#エアブー https://air-boo.jp/447674/#front #CCO240209

☆後日、概要は普段の作品概要のように簡易的な説明のみに戻します。ご了承ください。


プロローグ 4/4


森を抜けて、少し灰色の荒地を歩いて行くとシドの隠れ家に着く。
灰色の荒地を歩いている中、人の気配もなかったのに隠れ家という場所に着く途端に、人の気配と賑やかな声がきこえてきた。
そのシドの隠れ家は、ゲーム通りの構図だった。

(これが、本当の〝シドの隠れ家〟なの……

天井を見ると、屋根までの距離が長い。
そのためか、灰色の世界からは小さく見えていた隠れ家が、中に入れば大きく見えていた。
トルガルは、隠れ家に着くも入り口付近にいるお婆さんのところへトコトコと歩いて行った。
「やぁ、無事に帰ってきたね」とお婆さんがこれでもかというくらいトルガルの頭をぐしゃぐしゃに撫でる。
トルガルは困惑しつつも、それを受け入れるのだった。
あのお婆さんは確か、カローンお婆さんだ。主に、アイテムの商売人をしている。
あとは、トルガルの世話係。クライヴと再会するまではトルガルの面倒は彼女が見ている、と聞いたことがある。
だから、たまにトルガルを交えた会話をクライヴとしているのを見たことがある。

「アイツはカローン。回復薬とか、購買のことは全て彼女に任せている」
「はぁ……
「シド。やっと帰ってきたのかい」
「ああ、ただいま婆さん」
……で、その子は?」
「ああ、この犬が助けた子だ。身元が分からないっていうんで、まずは汚れた服の洗濯と、軽く食事をさせようとな」
「身元が分からない?どういうことだい」
「それが俺にも分からん。何か訳ありのようでな……彼女はカスミという。よろしくしてやってくれ」
「あ、あの……カスミといいます。よろしくお願いします」
「ああ。私はカローンだ。よろしく……どうしたらそんな泥臭い格好になるんだい?」
「えっと、森の中にいたらゴブリンに襲われそうになって。危ないところをワンちゃんに助けてもらったんです」
「なるほど、ベアラーでもないのか。人間が軽々と森の中に入っちゃいけないよ」
「はい。今回ので思い知りました」

カローンは少し怖い存在だ。優しいお婆さんなのだが、何せ言動が厳しいのだ。
うまくやっていけるか少し不安だ。
彼女は少し満足したのか、私にはもう興味を示さず、トルガルへ骨を上げていた。
シドは「また始まったな」と言って、私を連れて部屋を案内する。

「部屋はここを使ったらいい。服はさっき借りてきたこれを。脱いだ服は部屋の外にいる女性に渡してくれればやってくれるはずだ。その後は、しばらく部屋で休むといい」
「ありがとうございます」
「お腹は空いてるか?さっきもらったコレでよければ食べてくれ。ちゃんとした食事はあとで持ってこさせる」

そう言って、シドは服と通りすがりにもらった果物を一つ私の手にさしだした。
その果物はどう見ても林檎なのだが、この世界では〝林檎〟ではなかった。
この世界では、とてもじゃないが私の生活している世界とは真逆の世界。
その林檎を作るのにも一苦労で、差別も普通に存在する、ピラミッド社会だ。
ただ、例外なのはこのシドの隠れ家だ。

シドの隠れ家は、そんな格差社会に疲れた、逃げてきた者たちが集まった集落だ。
普通の人間から、奴隷と化しているベアラー、今はシドしかいないがドミナント。
様々な苦痛の社会に嫌になって逃げてきたのだ。
ここでは生まれや身分など一切関係ない。みんなで手を取り合って生活をしていくのだ。
だから、シドは私にも手を差し伸べてくれたのだろう。
シドの夢は「どんな人でも人らしく生きて死ぬことができる場所を作る」ことだから。

「ありがとうございます」
「俺は、部屋にいるから何かあれば訪ねてきてくれ。場所は誰かに聞いてくれれば答えてくれる」
「はい」

シドはそう言って、部屋から出て行った。
慌ただしいなと思うが、彼は彼なりに忙しい身なのだろう。
それでも、私のために世話してくれたことに感謝する。
動きづらい汚れた服を脱いで、新しい服へ着替える。
私は元々ズボンで生活するのだが、シドが借りてきたものはワンピースだった。
ワンピースなんて何年ぶりだろう、なんて思いながら緊張が解けたようにベッドに倒れ込んだ。
走ってばかりだったから疲れた。
私は、自然と目を閉じて意識を手放した。

* * * *



コンコン、という音が聞こえて私はハッと目を覚ました。
誰かがやってきたのだろう。私は慌てて扉を開ける。
料理人の人らしい。手には一人分の食事をお盆の上に乗せている。
シドに頼まれて食事をもってきたんだけど、という男性。私は即座に思い出し、慌てて彼から食事を受け取る。

「わざわざ持って来てもらってありがとうございます。すいません、自分で取りに行こうと思ってたのに、疲れたせいで寝てたみたいで……
「いやいや、別にいいですよ。ゴブリンに襲われたって聞いたけど怪我とか大丈夫か?」
「あっ……

服のことばかり気にしてたけど、怪我のことすっかり忘れてた。
だが、睡眠を取ったおかげか体の疲労くらいで済んだようだ。
特に痛いところはないので、医者は必要ないかもしれない。

「大丈夫です。それじゃあ、いただきますね」
「おう。食べ終わったら部屋の外に置いといて。あとで取りに行くから」
「いえいえ、さすがにそれは。ここのことまだ分かってないので、返しに行きながら把握しますね」
「へぇ」
「?」

男性は、少し考え込んで私を見つめる。
何かおかしいことを言っただろうか?

「いや、珍しい子だなって思って。ここに集まってる人間は人生に疲れた者が集まってる。だから、初めのうちは何も動きたくないって駄々をこねるんだが……箱入り娘ってシドから聞いたけど、自分で動こうとするなんて珍しいな。その姿勢、嫌いじゃない」
「ど、どうも……ありがとうございま、す?」

よく分からないが、褒められたらしい。
私の世界では、自分のことは自分で動くことが常だ。それが普通なので、この世界にとってはそれが〝異常〟に見える世界なんだろう。
なるほど、確かにここは〝異世界〟だ。
この世界は、私にとって常識でも、この世界にとっては〝非常識〟なのだ。
これも肝に免じておかなければ。
男性が部屋を出て行くと、私は出来たての食事を早速口にする。

「ん~! 美味しい!」

まるで砂漠の中でずっと彷徨っていて、やっと食事にありつける!みたいな状況の人みたいな感想だ。
でもそれくらい、シチューが美味しかった。
ゴブリンに襲われていた時、生きるか死ぬかしか考えてなかったから、空腹なのを今更ながら認識したようだ。
お腹の中が少しずつ満腹へ満たしていく。
この世界に来て初めて、生きている気がした。


食事を終えて、部屋を出る。
食器を調理場のところへ返却すると、少し探索した。

カローンお婆さんのところにはトルガルが少し寝息を立てている。
鍛冶場のブラックソーンお爺さんのところにも声をかけてみた。
今はまだ警戒心が強いようだが、自己紹介くらいはできただけよしとしよう。
そして、いつか武器を持つように――なる時がくればお世話になるかもしれない。

医務室にはタルヤさんがいた。
軽く挨拶だけしたが、シドから事情を聞いているのか怪我はないかと心配してくれた。
大丈夫だというものの、包帯など一人分を私に渡してくれた。
何かあれば使ってくれという。
私はお礼を言って薬や包帯を受け取って医務室を出て行く。

植物園や語り部など、一通り歩き回る。
ゲーム上ではそんなに大きくないと思っていたが、実際は結構な広さだ。
広いからこそ、多くの難民を受け入れているのだろう。

私は、シドの部屋へ向かう。
シドは、机の前でペンを走らせていた。
彼は私の姿を見るなり、こっちだと言わんばかりに軽く手を上げた。

「少し、顔色がよくなったな」
「え?」
「森の中にいた時のカスミは、服ももちろんだが顔色もよくなかったからな」
「え、嘘」
「嘘じゃない。寝不足もあったんじゃないか?」

そう言ってシドは私に近づいて、くいっと顔を上げられる。
私よりも全然身長が高いシドに、私はただされるがままだ。
足が少しつま先で立ってる感じだ。
シドは私の顔を満足するまで見ると、何度か頷くと手を解く。

「確かに、あの後ぐっすり眠ってたみたいで」
「そうだろうな。料理長から話は聞いた。中々面白い人間だと」
「ああ。何も知らないままだといけないと思ってお盆を返すついでにここを回ってただけですよ。軽く挨拶もしてきました」

さっきの男性との会話のことだろう。
私の行動は、この世界では異常すぎるようでシドの耳にも届いていたようだ。

「すごい施設ですね。ここまでくるのに結構な時間がかかったのでは?」
「そうだな。ここまでくるのに随分とかかってしまった――そうだ、そろそろお嬢さんのことを教えてくれないか?」
「私のこと?」
「そうだ。食事も服も睡眠も取らせた。なら、自分なりの状況整理はできると思うが?」

それもそうだ。私も現状を把握したいと思っていた矢先の眠気だ。
ここで頭のいいシドが傍にいれば何か分かるかもしれない。

「お金もない、帰るところもない。カスミはどっから来たんだ?」
……これは誰にも言わないでほしいんですけど。私、別の世界から来たんです」
――またまた、冗談を」
「冗談じゃないんです。料理長さんが言っていたでしょう?私の行動は異常だったと。シドさんたちにとって異常でも、私の住んでいる世界ではそれが常識なんですよ。自分のことは自分でやる、自分の身は自分で守ることは」
……ほう。もう少し聞かせてくれ」

そう言って、シドはカップを二人分持って一つを私に渡してくる。
ワインは飲めるか?と聞いてくるので私は酒は飲めないと断る。
すると、シドは水でいいか?と聞いてくるので頷いた。

「お金はないわけじゃない。ただ、この世界の通貨は一切持っていない。帰るところがないっていうのは本当にそう。私はこの世界の人間じゃないから」
「まるで、自らこの世界に入ってきたかのように聞こえるが」
「そう。私はこの世界に行きたくて来た。あと、とある実験のために」
「実験?」
「異世界同士の開通。それが実現できれば、困っている世界を助けられる」
「じゃあ、この世界にはカスミのような異世界の人間がうじゃうじゃいるっていうのか?」
「いや、多分私一人だけだと思う。その実験の大元は、あくまでその世界の国と国を繋げる技術のテストでしかない。それを、私は一歩先の実験にしたの」

本来なら私は、行きたい国を望むべきだった。例えばアメリカとか、アフリカとか。
そこでどれだけ最短時間で行けるかどうかをあのゲートで実験しているのだ。
招待されたとき、私は聞いたのだ。
『外国以外の世界でもいいのか』と。
その担当の人は、確実に出来る保証はないが、実験材料として申し分ない。むしろ貴女がやってくれるのならやってみよう、と。私はそれに賭けたのだ。

ゲームの、人間の手で作られた世界に飛ぶことができるかと。

それは前代未聞だ。だから、ゲートをくぐる前に止められたのだ。
命の保証はない。失敗して帰って来られなくなるかもしれない。死ぬかもしれない。
それでも、行けるのなら行ってみたかったのだ。
この、『FINAL FANTASY16』の世界に。

「すまない。頭がついていけない。国と国を繋げるっていうのは?」
「地図を、貸してもらえますか?」
「ああ」

シドさんは、そう言って机の上に差し出す。
ちょうど、地図を見て何かをメモしているところだったらしい。
地図はヴァリスゼアの世界を大きく記されている。
もちろん、例の『マザークリスタル』も載っている。

「私たちがいるところ、例えばこの国に行きたいとする。今、どういう行き方ですか?」
「そりゃあ、徒歩とか馬やチョコボか、船だな」
「それを、一瞬で行けるとしたら?」
……そんなことが可能なのか?」
「それを可能にするための実験をしてるんですよ、私の世界では」
「で、カスミが言ってた別の実験とは?」
……そうですね、例えるなら」

私はそう言って、今度は外を見る。
隠れ家は遺跡で作られている。そのため外を見ることはできない。
だが、森の中では晴れていた。ということは、太陽は存在している。
ならば――

「この世界には、夜――月は存在していますか?」
「そ、そりゃあもちろん」
「私がしている実験っていうのは、私がこの世界の人間として、その月に行けるかどうかの実験をしてるということです」
……こりゃあたまげた」

シドさんは、驚きを隠せず額に手を伸ばす。
それもそうだろう。この世界は宇宙がどうとかの話は正直気にしていないだろう。
そんな彼らにとってはスケールがかけ離れている。
そんなことを気にするほど、生活は豊かではない。今を生きることで精一杯なのだ。

「もっとお前さんの世界について知りたい。お前さんの世界は……戦争とかあるのか?」
「昔はありましたよ。歪曲されたものですけど」
「歪曲?」
「ある黒幕のせいで、世界中を巻き添えにした戦いとかあったんですよ。本来は人間同士が戦う理由はない。それを、黒幕が利益のためだけに世界中を騙して戦争へと仕向けた」

私がそう言うと、シドさんはぐっと押し黙った。
彼も元々はウォールードの兵士だったはずだ。だから、戦のことや国境についてなどは嫌ほど知っているのではないか。
国のリーダーが裏切ったり、騙されたり、巻き込まれたり。

「俺も、そういう世界を終わらせたいと思って今の活動を続けている。薄々気づいていると思うが、全身ズタボロな人間がいるだろう?おそらく、お前さんは知らないだろうが言っておく。ああいう人間を『ベアラー』と言って、人間の奴隷として扱われる存在だ」
「ベアラー」
「頬に黒い印があるだろ?それが見分けるところだ。この世界は、魔法を使える。普通の人間は魔法は使えないが、ベアラーは使えるんだ。人間は魔法が使えないから、魔法が使えるベアラーを奴隷として扱っている。もしくは、このクリスタルを使って魔法を発動させている」

そう言って、机の真ん中に綺麗に輝くクリスタルを目線で伝える。
それにつられて私も、クリスタルを見つめる。
クリスタルは実物を見るのは初めてだ。とても綺麗な結晶だ。

「俺はただ人間とベアラーってだけで何が違うんだと思うんだ。同じ世界の住民なのは変わらない。一緒に手を取り合って生きることが大事だと、俺は思う」
「分かりますよ。私の世界もそういった人種差別で争いごとに持っていこうとした輩はごまんといましたよ。宗教とかもね」
……どこの世界も変わらないんだな」
「そうみたいですね。でも、大丈夫ですよ」
「?」
「きっと、貴方の夢は叶いますよ。誰もが手を取り合って生きていく未来」

実際、ゲームでその様を見届けた。立派な、二代目シドが成し遂げたよ。
これはさすがに言えないので、心の中に留めておくけど。
話が広がる一方だったが、夜も遅くなってきたのでお開きとなった。
シドも私の話に満足したらしく、「また聞かせてくれ」と笑っていた。
そして、シドから「しばらくここに居座るといい」と言ってくれた。
丁重に断ろうと思ったが、この世界の行き方については分からない。
知識はあっても、それはあくまで〝クライヴ〟という人物の視点での物語だ。
実生活はどうかというとゲーム中はそこまで描写されていない。
私は、シドの隠れ家でしばらく厄介になることにした。
そうすれば、クライヴとジルに会えるだろうと思ったからだ。


「プロローグ」 完