八上
2024-01-21 19:39:04
1354文字
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【TW6】玖寂あれこれ




幼い頃から非合法組織にて英才教育を受けていた。母親に売られたのだ。父親は知らない。
感覚を研ぎ澄まし、感性を削り取り、徹底的に調教された完成品。組織の商品であり手足。それが存在価値だった。
生きること自体が労働だったが、その分仕事ならいくらでも出来た。殺し、色仕掛け、強奪、破壊工作。何かを嫌だと思う感情は、他と一緒に麻痺しきって壊死していた。
代償に自我を喪ったが、それがどんなに過酷なことかも、もう彼には分からなかった。
万能で癖が無いが故に没個性。常に誰かを模倣し、語る言葉全てが偽りでかたち作られた、人格面ですら自己を証明できない灰色の男。
17で組織に使い捨てにされるまで、己に何の疑問も持つことはなかった。
組織での名前は七条・忍。――忍。己を虐待していた母親が、暴力以外で唯一彼に与えたもの。

――七条・忍は愛することも愛されることも知らなかった。では八上・玖寂は?
家族の愛も恋人との愛も知らないままで生きられるだろうか?
己の欠落を自覚した、虚無でできているはずの男が愛を知ってしまった時、一体どうなるだろうか?