フリーゲーム「灰色庭園」 の二次創作集
エマルフがヨザ虐して自業自得になる話
・エマルフ→ヨザファイア
・ヨザファイア×フローズ前提
・ヨザファイアが脅されたりエマルフが酷い目にあったり猫が暴れたりポエミが頬を膨らませたりする
_________
手折るばかりが能でした
現実逃避。とうひ。とうふ。
思い浮かぶ、ありふれた日常。学校のチャイムが鳴って初めて宿題を忘れたことに気付く、そんな時によくやること。
逃避。とうふ。ああ麻婆豆腐食べたい。
灰色村のみんな
…………
あたしことヨザファイアは今、
────────捕まっています。
「ふざけんなーーーーー!!! 出せええええここから出せええええええ」
ゴッガンゴッガンゴッガンゴッガン。
錆びて汚れた手枷は見た目の割に頑丈だ。いくら壁に打ち付けても外れてくれやしない。壁のずいぶん上のほうから鎖が垂れているもんだから、いっそまとめて引き千切るべく、あたしはさっきからひたすらヘドバンを繰り返しているのだった。
あたしは鯉
……まな板の上でばたつく鯉
……。芋虫のほうがいいかもしんない。ロベリィちゃんにあやかって。
そうだよロベリィちゃんだよ。というかみんなのことだけど。
「フローーーズちゃぁーーーーん! マカロナちゃぁーーーーん! ロベリィちゃぁーーーーん! そんでもってもっかいフローーーーーズちゃぁあああああん! 元気ぃいいいいいいい!?!!!!! お返事してよおおおおおおおおお」
ちょっと深呼吸して耳を澄ます。返事はない。あたしの声が虚しく反響して遠ざかる。
ついでに酸素も足りなくなってきた。ヘドバン&絶叫コンボはあまりにもロックすぎた。うぇっぷ。
牢の中はあたし一人。そしてこの牢で目覚めてから延々叫びまくっているというのに、お返事どころか、あたしにうるさいとツッコミを入れてくれる相手もいないのだった。
静かである。寂しいのである。不安が募りに募るのである。
──みんな大丈夫かな。
──ド変態クソ野郎どもに変なことされてないかな。
みんなを思えば思うほど、胸の内でぶわああと消化できない塊が込み上げてくる。叫ばずにはいられなくてうっかり火の粉も飛び出す。でも、消化不良の塊は全然燃え尽きてくれない。
だって怖いよ。怖いですよ。悔しいけどさ。
「ぶええ
……ぶええん
……」
めそっとしてみる。変わらず返事はない。
だからこそ泣く前に、あたしのほうから行くしかない。わかっちゃいるしその気もあるんだけど。
「おのれ
……おのれ鉄枷
……鉄かなこれ? 固い謎物質め
……」
やっぱり話は振り出しに戻ってしまう。手枷がついてるとどうにもならない。かれこれ何十回もこうして繰り返し。
何がしんどいってこれ、仮に服の裾がすんごいことになろうが帽子がどっか飛んでいこうが、自分では直せないのがしんどい。
床にぽつんと落ちている帽子を見つめる。
手が駄目なら足でどうにかならんかと壁昇りをしようとしたのが運の尽きだった。もとい、考えなしだった。
日々を共にしてきたあたしの戦友。うっかり被ったまま寝ちゃって時々枕代わりになっているあたしの戦友。
足で手繰り寄せたらなんとか
……? でも被り直すのはさすがに無理そう。
手さえ! 解放されていれば! それをいうならここから今すぐ出たいけど!
そんな内なる声に答えるように、キィ、と耳障りな音が鳴った。
「いやー、キミもたいがい元気ッスよねぇ」
さあ救世主ですよと言わんばかりに、サイテーな面構えの元凶野郎がおでましだ。
「
………………」
さすがにまあ、一応として、口は閉じた。なんだおまえーってやいのやいの言ってやりたい気持ちはいっぱいだ。けど、それを今この場でやるわけにいかないのは、ぼんやりとであっても肌で感じてる、つもりだ。
……今、あたしは一人だから。
向けられるのは相変わらずの胡散臭いニヤケ面。けれどもサングラス越しの目の色は果たしてどうなっているのやら。
「ありゃ、静かになっちった。いいんスよ、言いたいことあるならご自由にぃ?」
「性格ワッル」
「悪魔ッスからねえ」
ゲラゲラゲラ。とりあえずあたしはまだ奴のお気に召してはいるらしい。憎らしいことに!
「ん? というか、キミ
……」
グラサン男はふと言葉を切った。顔の向けられた先にはあたしの大事な赤帽子。触んなばか、という前に、奴の手は軽々と帽子を拾ってしまう。
「へぇ。ふぅん? ほ~~~お」
奴の視線は手元の帽子とあたしの頭をいったりきたり。
人様をじろじろ見ちゃいけないんだぞ。どっかの厳しいセンセーに怒られてしまえ。
「見物料はリンゴ百五十個ね」
「多っ。いやいやしかし、なるほどねえ」
なるほどなるほど、と、長い溜めの繰り返し。思わずぐっと下唇を噛み締める。
分かってるよ、分かってるさ。ご立派な角をしてご自慢気にリングまでつけてるカッコつけ野郎の言いたいことなんて、分かりやすすぎる。だからなおさら腹立つんだ。
「回りくどいめんどくさい言いたいことあんならはっきり言え! かかってこいオラー!」
「ハハ、ッひゃはは!」
ああもうムカツク笑い声! あたしも負けじとゴッガンゴッガン、手枷を威嚇代わりに振り鳴らす。もちろんまったく通じない。どころかあたしの抵抗を楽しんでいるようで、相手は趣味の悪い面構えをさらに意地悪く歪ませた。あたしの角から目を離さないまんま。
見られて死ぬわけじゃない、けどケロッと平気なわけでもない。コイツはそこをきっとよく分かってるからやっている。
そしてこの顔は、来る。
予想して、ぎゅっと腹に力を込める。
「片角なんて良いセンスしてるッスね、欠損ちゃん?」
…………息を、吐く。
大したことない。察しがついちゃうくらいダサくてありふれててカッコ悪いセリフだ。
…………負けない。
「クソダサグラサン男ほどじゃないですー」
そんで、ここでどうせ追撃が───来ると思いきや意外にも、相手は顔を逸らしてしまった。
なんだなんだ? 眉間のシワはもうクレバスだ。
さっきとはまた調子の違う、かみ殺すみたいな笑い声が聞こえる。
「あーヤッベ、けっこうマジで可愛い」
「あ゛???」
ボディブローですらない、予想外れの言葉だった。
ばっかじゃねえのという台詞が顔に貼り付いていたのか、相手は改めてまじまじとこちらをガン見してくる。見世物じゃないぞこのやろー。だから見物料を。リンゴを。おなかすいた。
おなかすいたって、思ってるのに。
「
…………ククッ」
麻婆豆腐食べたいとか、何を考えていようが、奴はおかまいなしに近づいてくる。
────飛び飛びになっていく思考は、現実逃避の証だ。
つまりあたしは今、身体の根っこで感じ取っていた。
何を?
不吉。不穏。いやな感じ。そういうの。考える前に、あっヤバイなと悟っちゃう、そういうの。
引きずり出される似た思い出。
空から堕ちてる間の、あの気持ち。
真っ赤に大きな手が、伸びてくる。
もう一本の、これしか残ってない、あたしの角へ。
「やっ」
あたしの身体はぐいとしなって、反射みたく必死に逃げた。繋がれてるくせに勝手に。先っぽが触れかけただけなのに。弱点だって、言ってるようなもんなのに。
「嫌? 嫌か~。嫌ならもっとやってあげたくなるッスね?」
「あ、ああああ悪趣味野郎! ゲス! クズ!」
「あ~可愛い、キミほんと可愛いなあ」
奴の顔はどんどん下卑た笑顔に変わっていく。いっそ顔面崩壊してしまえ。そんな願いもまあやっぱり届かない、知ってる知ってた。でも嫌なもんは嫌で、抵抗するのに、全然効かない。
「いっ、ぃうう、うおおおおおおお」
嫌と言ったら相手が調子づいてしまうから堪えた。けれど、やっぱり嫌々オーラは溜めきれなくて謎の呻きが込み上げた。
嫌と言ってもダメで嫌と言わないのも無理ってこれなんかもう色々と!
────パニックになるあたしの頭に、コンコンとノックが一つ。
違う、頭じゃない、あたしの角だ。角から頭の中へ、コンコンコンと振動が通じていく。バカでかいかぎ爪が、器用なことにささやかに、何度も、何度も何度も何度もあたしの角を小突く。
さあよく覚えておこう?
これがあたしの角の最後の感覚かもしれない?
グラサン越しでも何故かわかってしまう、やわらかく笑む瞳。
「これ無くなっちゃったら、嫌?」
囁きかけられたのは、とびっきりの、鳥肌立つくらい気持ち悪い猫撫で声だった。
「
……っぁあ、
………………」
ぞわぞわぞわぞわっ、と悪寒が背筋から。逃げたい。逃げたい。もうリンゴとかなんだか茶化す余裕ないくらいに逃げたい。
だってコイツ絶対容赦なくやる! バキって、あたしの唯一の!
「あっ、ああ、」
「んー?」
「あんぎゃーーーーーす!!!!!!」
「痛ってぇ!?」
噛み付いた。耳、は届かなかったので髪の毛をぶちぶち。千切った分はペッ、と吐き出す。変に舌で残ってる感じがして気持ち悪い。
「ハゲたらどうしてくれるんスか!」
「せせら笑ってやるわ!!」
ぜーはーぜーはー。あたし、肩で息しちゃってる。ただこれだけのことで。
でも負けるもんか。負けるもんかこんな奴に!
「ハァ
……ほんとキミってばお転婆ッスね」
「元気百倍が取り柄ですが!?」
「ヒャハハ!」
グラサン野郎は横髪を軽く払ってから、仕切り直して一笑い。こっちも距離が離れたから、震える吐息で深呼吸。今度近寄ってきたら金的でもかましてやる。
案の定、奴はやっぱりニタニタ笑いで距離を詰めてくる。焦らすように、ゆっくりと、イカツイ異形の手を見せつけながら。
「確かに元気ッスよね、足も声も震えてんのにカワイ
………………ん?」
「へ?」
急に、止まった。
奴の言葉だけじゃない。歩みも、まばたきも、何もかも。小馬鹿にする余裕すらないくらい、奴の表情が冷めた。あたしを視界に入れながら、横目で外に意識を向けているのがわかる。ピリピリした空気がこちらにまで通じて肌が粟立つ。
何、と訊くにも訊いた瞬間に喉を、潰されてしまいそうだ。呼吸音までもが、限界まで小さく絞られる。
何が、ここに。
緊張の糸が、
ピンと、
張りつめて、
そして警戒の隙間を縫って息を吸うその瞬間に爆音が轟いた。
「ヒッ、」
「なんっ、エグゥッ!?」
幸い、潰れた声を上げたのはあたしじゃない。一瞬、板状のものが吹っ飛んできて
……。槍?が突っ込んできたのは見えた。でももう煙で前が見えない。あとなんか頭、頭になんか降ってきてる。小さな欠片? 今のは爆発? 何?
声がする。
「「おじゃましまーす」」
「なんスかあんた、ラッ、がぁ、アガガガガががああああああ!?」
もうもうと立ち込める煙の中で響いたのは、軽やかな女の子の声だった。続いてグラサン野郎の悲鳴、ダンダンダンダンと強く何かを踏みしめる音。
「あっ殺しちゃいそう」「殺しちゃだめ?」「遊び相手じゃないもの」「力量がね」「弱弱だから」「致し方なしね」
よく似た声だけど響きは二つ。女の子は二人いるみたいだった。
そして言ってる内容からして多分、終わったんだろう、蛮行が。
彼女達が動きを止めたおかげか、煙はだんだんと引いていく。
まず見えたのは、猫の耳。ぴこぴこ動いて示し合わせたように、ふっとこちらへ向いた。真っ赤に輝く四つ分の瞳。同時に動く薄い唇。
「「だれ?」」
「
…………よ、ヨザファイアちゃんでーす
……」
「へえ」「初めまして」
「はじめましてこんにちは
……」
意外にも反応は普通だった。お話ししつつ、白い耳の子は手を舌でてちてち、黒い耳の子は背中をのびのび。うーん、一仕事した感。さっきの爆音と、固い固い鉄扉に乗ってさえいなければ、ほのぼのとした景色かもしれない。ぶち抜かれた扉から通り抜ける風も、囚われの身には久々だった。
「繋がれてるのね」「趣味?」「これの仲間?」「カノジョ?」
猫耳さんズは器用に耳を下向けて、これ、と足元を指す。二人がぶち抜いたであろう扉の下敷きになっている何か。なんか半分くらい肉色をしている、たぶんグラサン野郎がそこにいた。
「ノッ、ノー」
「のー?」「彼女じゃないの?」
「あたしには心に決めたフローズちゃんという子がいるのでコイツはちょっと、いやフローズちゃんがいなくてもちょっと
…………。
あっそうだせっかくだから助けてもらえると嬉しいな!?」
「「おーけー」」
「ひょえっ
……」
返事が早いか動きが早いか、二人はダンッ、とグラサン野郎を踏みしめて一足飛びでこちらに飛び掛かってきた。猛スピードで来られるとビビる。着地点はあたしじゃないとわかってても。思わず一瞬目を瞑った隙に、はや二人はあたしの手枷を掴んでいた。正確には手枷から伸びる鎖を。
「千切れないわ」「力加減がね」「難しいわよね」「ねえ腕ごといっていい?」
「ダメだよ!?!?」
「じゃあ壁ごと」「よっこいせ」
待ってのまの字もない!
こめかみ近くを黒白の槍が瞬く間に薙ぎ払って、後ろからスウと熱風が吹きこんだ。知らない世界の風だ。でもそれを吸い込む暇すらなく、あたしの両腕は釣られて後ろの風穴へ、続いて体ごと開いた空間へダイブ、
「しちゃだめじゃん!!!」
「おお」「ふんばるね」「「ふぁいと」」
「うおおおおおバランス感覚ぅうううううう」
鎖付きだけど一応は自由になった両腕で、残った壁をがしっと掴む。今すぐ瓦礫になっちゃいそうなそれを投げ捨てる態勢で、逆向きに反動付けて床へダイブ。
生き延びた。生き延びた!! 鼻潰れても気にしない、背中から堕ちるより何百倍もマシ!
可憐凶暴な猫猫さんズはいつのまにか槍を仕舞って、これまたグラサン野郎の上に戻っていた。お気に入りの定位置らしく、それぞれおくつろぎ。おかげで奴が再生する暇はないみたいだから助かるけれども。
「あ゛っそうだ、フローズちゃんだよ! ねえ猫さん、フローズちゃん知りませんか!?」
あたしはガバリと顔だけ上げて、床をずりずりしながら部屋の中央へ近寄る。まだちょっと腰が抜けているもので、ほふく前進だ。
猫さん達はふたりできょとんと顔を見合わせて、全くおんなじタイミングで首を傾げる。
「「誰?」」
「ええとええと、金髪碧眼クールびゅーちーな天使の子!」
「いたような」「いなかったような」「目つきがきつくて」「二つ結び?」「ピンクの子じゃなかった?」「泣いてた気もする」「色々いたわね」「通りすがりに」
「オッケイなんかみんなっぽい! ありがとう!」
痛めた鼻をすりすりして、ようやく立ち上がる。気合だって入るってもんだ、お友達パワーだもん。ズレた眼鏡もかちゃり。割れなくてよかった、強い子だ。
続いて第二の戦友、赤帽子を拾って被る。グラサン野郎に奪われたままだったから心配だったけど、凶行の前に手放されたのか変な血も液もついていなかった。セーフ。
待ってろフローズちゃん!
────と駆けだすその前に。
「ところであなた達いったい、
……えっ!?」
猫さん達にも色々訊いてみようと思ったけど、音もなくふたりともいなくなっていた。
……な、なんなんだー。
気になるけどわかんないことはしょうがない。扉の抜けた廊下へ出る。さっきの爆音が嘘みたいに静かだ。左右確認、敵無し悪魔無し天使無し。いざ出陣と来たところで、ふいに擦れた声が耳に届く。
「ぐ
……テメェ
……ら」
外れた鉄扉の下から、声がした。
うごうご。半分肉色の塊がなめくじに似たスピードで動いていた。たまったもんじゃない! なんなら一発食らわしてトドメを刺したいくらいだけど、一応「無茶」とかいう言葉もあたしの辞書にはあるもんで、ググッと堪える。この異常な回復力じゃ、すぐ力を取り戻すはずだから。
ああーでも言いたい、何か言ってやりたい、心で負けたまんまになりたくない。嫌もクズもバカもタコもしじみも、何一つピンとこなくてでも一言!
悩む暇すらもったいないから、ぱっと思い浮かんだ一つを投げ捨てる!
「好きなら優しくしろ、バーーーーカ!!」
そうだよ言ってピンと来た。
あたしはフローズちゃんが大好きだから、守りたいんだ待っててね!
半肉塊のことなんて放って、あたしはようやく彼女の元へ飛び出したのだった。
◇◇◇
ポエミはとってもつまんない。
あー、つまんないつまんないつまんない!!
せっかく捕まえた遊び道具はエマルフのせいで逃げたらしくて、頭がお花畑な村も焼きまわって、歯ごたえのある獲物はもうあんまり残ってない。だからポエミはとってもつまんない!
「あーあ、ピィピィ鳴くちょうどいい玩具はいないのかしら」
「
………………」
花畑にエマルフと二人。蹂躙相手はどこにもいない。そこそこくたびれたからって休憩するつもりだったけど、これが想像以上につまんなかった。
「せっかく助けてあげた悪魔は無反応だし!」
「
…………あ、すんません聞いてなかったッス」
「もう!」
エマルフはずっとこんな感じ。助ける前の、串焼き鳥な感じに嬲られて半分解体されてた状態よりはマシだけど。それでもさっきからぼーっとしてるし破壊活動も全然参加してこない。
エマルフってば、ミンチから二足歩行に戻るまでの間に悪魔としてのプライドってもんを落っことしちゃったのかしら。
今もエマルフは静かに、揺れる花を眺めている。いっそ目覚めのコーヒーがてら、前線で暴れ回ってきてもらうほうがいいのかもしれない。
そう思った矢先、エマルフがふっと声を上げた。
「
……ポエミサン」
「なによぅ」
「やっぱ女の子って花もらうのが一番嬉しいもんなんスかねえ」
「ポエミは生きのいい虫けらのほうが好きよ?」
沈黙。ジト目。ひと睨みを返したら逸らされた。続いてため息いっこ。
「
…………俺らの世界で花って咲くと思います?」
「咲くわけないじゃない、バカなの?」
「ッスよねー」
ポエミ達の世界を思い浮かべる。熱風とマグマと焼石まみれの炎熱世界。
比べてこの黒白世界はとっても柔らかい。風は優しくて生き物たちは呑気に空を飛べて、撃ち落されることすら考えてない。だからとっても、刺激的。
だってポエミがフゥって息を吹きかけるだけで、色んなものが焼け焦げていく。こんなに楽しいこと他にある?
だからポエミはわかんない。エマルフが何をダラダラ腑抜けてるのか。
揺れる花を眺めては、踏みも千切りもせずにただ何かを噛み殺しているエマルフは、なんだかとってもとってもとってもカッコ悪い。
「エーマールフー」
「はい?」
「死ぬ?」
「
……………………」
「うふふ」
ポエミは別になんでもいいの。焼き殺せるならお花だろうが天使だろうが悪魔だろうが、エマルフだろうが。
「はーぁ」
エマルフはぶんぶんと首を横に振って、やっと背筋を伸ばした。そしておもむろに花畑へ手を伸ばす。血の色をした巨大な爪。エマルフご自慢、暴力の証。
エマルフはすぅううううっと大きく息を吸って、勢いよく腕を振るった。
「アホくせぇ!」
色とりどりの花弁が、吹き飛んでいく。こんな景色はけっこうキレイ。ポエミはこういうのが好き。炎があればもっと好き。
「ムラムラは解消できた?」
「ポエミサン、女の子がそんなワードは言っちゃだめッスよ」
「やだーエマルフキモーイ」
「ええぇぇ
……ひっでぇなあ」
きゃらきゃら、ゲラゲラ。軽く笑って目を合わせて、やっと元通りになったのが伝わる。ああ気持ち悪くてつまんなくてたまんなかった!
「じゃっ、早く行きましょ。そろそろ村も焼けてるわ」
「そっすねー。そんであとはもう手あたり次第に、」
「燃やしてころそ!」
「そりゃあいい!」
柔らかな空気をたっぷり吸いこんで、一息で燃やせるように整える。花は愛でるんじゃなくて千切るものって、乙女の占いもそう言ってるもの。
だからポエミ達は生き生きと、破壊の旅へ飛び発つのでした。
めでたしめでたし!
~END~