【海】


ずっしりと重いカバンを持って月祈つきは帰路につく。カバンの中には食材や飲み物、日用品が入っている。今までは毎日何かしら求めて出かけていたが、その間家でひとり留守番をする姉が気掛かりで仕方なかった。
姉の真白ましろは非常に大人しくて悪さ一つすることは無いが、ふらりと家からいなくなってしまうことが多々ある。大抵近くを散歩しているだけで、何か事件に巻き込まれたりはしていない。しかし真白はいつもぼんやりしていてどこか危なっかしいため、心配なことに変わりない。
だから今日は必要なものを一度にまとめて揃えることにしたのだ。時間はいつもよりかかってしまったが、これだけ持って帰れば一週間は出かける必要が無いだろう。
家で待っているであろう姉を思い浮かべながら、月祈は歩く足を早めた。



「ただいま帰りました。……姉様?」

玄関に入ってすぐに違和感に気づく。真白の靴が無いのだ。また近くへ散歩に行ったのだろうか。
けれど何故か嫌な予感がした。急き立てるような胸騒ぎに月祈は荷物を置いて家を飛び出す。
真白は誰もいない静かな場所を好む。花浅葱はなあさぎエリアはどこも静かだが、この辺りで特に静かな場所といえばあそこしかない。
この嫌な予感が杞憂でありますように。そう願いながら月祈は全速力で走り出した。