【カミ東】夜が更ける前に

しっかり両想いな🔪🍮のお話。今更だけどがっつり付き合っている前提で進んでいますご注意ください。
それぞれ別パターンで二つほど。


楽しい時間は何故こうも早く過ぎ去ってしまうのか。各々好きに過ごす心地よく穏やかな空気が満ちる部屋。
カミキリは東雲の伸ばされた太腿に頭を乗せ仰向けに寝たまま文庫本を読み、東雲は適当に付けたテレビ番組を何となく眺めていた。テレビから流れるニュース番組は地域ごとに明日の天気をキャスターが喋り、意識を下に向ければ一定の感覚で文庫本のページを捲り紙が擦れる音がする。
不意に視線を壁に掛けられた時計に向けた。短針が指し示す数字に「あー」と間の抜けた声が漏れ、殆ど惰性で流していたテレビの電源を落とした。東雲の気配にカミキリが文庫本の影から目元を覗かせる。
「カミキリさん明日仕事っしょ?もう寝ないと」
「・・・」
明確に顰め文庫本で顔を隠すカミキリに東雲は肩を竦めた。
寝坊はしないだろうけど、寝不足は良くない。そう東雲が語り掛けてもカミキリはイヤイヤと首を横に振うばかり。
「まだ寝たくナい」
この心地よく穏やかな空気を手放すにはあまりにも名残惜しく、まだ浸っていたいとカミキリが駄々を捏ねる。寝てしまえばまた次の週末まで、この空気の中で過ごせなくなる寂しさは東雲も重々承知していた。それでも東雲は顔を文庫本で隠したままのカミキリを起こし向かい合う形で座らせた。
「ほら、行くよ」
不承不承。これっぽっちも納得していないカミキリが文庫本に栞を挟みちゃぶ台に乗せたのを確認してから東雲はカミキリの体を抱き上げ既に敷かれている布団へと歩を進める。
未だに寝ないと抗議するカミキリごと布団の中に潜り込む。体は向き合っているが、顔を胸元に埋めているカミキリに東雲は彼の背中を優しくトントンと叩き擦る。
すると、やおら顔を上げてきたので東雲が柔和に微笑み、まるで寝物語でも語る様な穏やかな声色で囁いた。
「目、閉じるだけでいいから」
云われカミキリの大きな瞳が瞼裏に隠れる。素直に目を閉じる神様の背中を東雲は優しく撫で擦り続け、相手から漂い始める眠気と必死に戦っている気配によしよしと頷き、東雲もまた目を閉じた。
暗闇の中、手を動かすのを止めず胸の中から穏やかな寝息が聞こえるまで東雲は緩く解けていく意識を保ち続けた。