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豆炭々炬燵
6347文字
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訳アリ心霊マンション
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【カミ東】暑さ対策は万全ですか
【訳アリ心霊マンション👻🏢】の【カミキリ様×東雲薫・カミ東🔪🍮】に滾ったがための書きなぐった代物。
わしゃ人外×人間が大好物なんじゃ。
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【夜の部】
日が暮れるにつれ凶暴だった暑さが大人しくなり、日が沈んだあとは扇風機が無くても部屋に吹き込む風だけでまあまあ過ごせるくらいの気温になっていた。
扇風機が齎す風とは違う自然の風はとても心地よく、連日寝苦しい夜が続いていたため久方ぶりにたっぷり眠るべく東雲、ツヅミ共々早々と床に就いたのだった。
不規則に吹き込む風が閉じたカーテンを靡かせ、窓辺に吊るされた風鈴が小さく鳴った。
穏やかな寝息をたてるツヅミと、東雲が時折するいびきが暗い室内に横たわる穏やかな静寂は得体の知れない予感めいたものへと徐々にすり替わる。
寝ながら腹をボリボリとだらしなくかいていた手が止まると同時に東雲の沈んでいた意識が浮上した。
瞼を開ければそこは見慣れた天井。ベランダ側から差し込む微かな月明かりと部屋の暗さからまだ夜なのだと伝えてくる。
未だ覚醒しきれない頭のまま、ゆっくり体を起こし大きな欠伸を一つした。
呆然と壁を見ていた東雲は何故この時間帯に起きたのか。寝ぼけた頭では特に疑問すら抱かず、もうひと眠りする前に水でも飲もうと重い腰を上げた時だった。
「───、
……
。──、─
……
」
「(あ、そっか。玄関に用があるんだった)」
東雲の先程まで水を飲もうと思っていた思考が、玄関に行かなくてはという思考にすり替わる。
ベッドから降り、すぐ隣で敷布団を敷いて寝ているツヅミを踏まぬよう足を下ろした。
おかしな違和感は寝ぼけた頭では掬い上げることすら叶わない。薄目を開けたまま歩くたびに上半身が左右に揺れる。
一歩また一歩。玄関までの距離が縮まるにつれ、東雲の耳に不明瞭だった音が聞き取れるようになった。
やおらベランダ側から差し込んでいた月明りが雲に隠され室内を黒く染めあげる。
暗闇の中、感覚を頼りに一歩また一歩歩いていく。
「
……
ヤ、さ
…
。おお──、ン」
東雲が自分のことを呼んでいる声だと理解した途端、呼ぶ声に合わせ玄関扉を静かに叩く音が増えた。
トン
…
、トン
…
、トン
…
東雲の足音を塗りつぶす声、そして玄関扉を叩く音が不気味に響き渡る。
手を伸ばせば玄関の鍵を開錠できる距離まで来た東雲の気配を察したのか、玄関扉一枚隔てた向こう側にいるモノが話しかけてきた。
「コ コ 開 け て」
まるで耳元で囁かれたかのような声色。
だが、東雲は眠たい眼を擦りながら玄関の鍵を開錠しドアノブを押し玄関扉を開けた。
廊下側の照明がピン、ピピンと音を立て不規則に明滅する。
頭の隅で蛍光灯を替えねばと考えつつ、ぼんやりと意識を真夜中の訪問者に向けた。不規則に明滅をくり返す照明の下、月明りのない夜空より深い宵闇色の瞳がじぃっと東雲を見上げていた。
東雲の思考が真夜中の来訪者の正体を理解したその時、四階廊下の全ての照明が静かに息絶えた。
「──カミキリさん?」
月明りさえ差し込まない暗い廊下、カミキリの輪郭だけ薄っすら浮かび上がっているように見える感覚の違和感に東雲は気付かない気付けない。
「どうした~? 水道のトラブルとか?」
気付く気など毛頭なかった。
寝ぼけた頭を何とか起こそうとする東雲にカミキリが口を開いた。
「今夜暑いト思って」
「暑い
…
、暑いっちゃあ、暑いかな~
…
」
「部屋ニ入れて欲シイ」
「ん? ああ、どうぞー」
何用で来たのか、如何して真夜中なのか。普通の人であれば浮かぶ疑問を東雲は欠伸と一緒に噛み殺した。
「お邪魔しマす」
東雲宅の敷居を跨ぎ後ろ手で玄関扉を施錠するカミキリの視線は東雲の背中から一切反らされる事は無かった。
「あ~、お茶お茶
……
」
絶え間なく出る欠伸。
働かない頭で来客用に麦茶を用意しようとする東雲のTシャツをくいっとカミキリが掴んだ。
そして、先程まで寝ていたであろう寝室を指さした。
「夜遅い、寝ヨウ」
「お茶、大丈夫
……
?」
「うン平気」
分かったと、また欠伸交じりに返事をする東雲の後をカミキリがついていく。
寝室に付けば起きる気配などない夢の中真っただ中のツヅミが穏やかな寝息を立てていた。横になれば一瞬で寝そうな東雲が自分が寝ていたベッドを指さす。
「はい、んじゃ私はあっちで寝るから
…
くわぁ
……
」
とことん寝ぼけている頭は客人カミキリをベッドで寝かせ、東雲自身はリビングのソファで寝るという指示を出した。が、またまたカミキリが東雲のTシャツを掴むことで東雲をその場に留まらせた。
「一緒ニ寝たい」
東雲の寝ぼけ眼がゆっくり瞬きをする。
「ん~
…
? 狭くなるけどいいの
…
?」
「いイ」
「そ
…
、分かっ
……
」
東雲は眠さの限界に達していた。カミキリの言葉を聞くなり、自身のベッドの右側に寄るように倒れ込んだ。
カミキリはくしゃりと丸まっていたタオルケットを拾い上げて自分と東雲のお腹に掛けながら横になった。
すると、隣にカミキリが来たからか涼しい感覚に東雲の顔がにへりと緩む。
奇しくも東雲と向き合う形で横になったカミキリは自身の腕をゆっくり東雲の背に回し、殆ど無かった二人の隙間を自ら埋めた。
「
………
」
この距離の近さは二度目か、否以前の時より顔が近い、と。カミキリは東雲の肩口に頭を寄せ胸中呟いた。
お世辞にも静かとは言い難い東雲の寝息を聞きながらカミキリは目を閉じる。正直冷却材代わりは遺憾であったものの、東雲の存在を間近で感じられる距離の近さは決して嫌ではなかった。
「おヤすみ」
カミキリの声に応えたのかは定かでないが、東雲の左手がポンポンと優しくカミキリの背を叩く。
雲に隠れていた月が顔を覗かせ、柔らかな月明りが東雲とカミキリの穏やかな寝顔を撫ぜ照らしていった。
「──ひゅ!? か、神斬り様!!?」
翌日、朝食を作るため早起きしたツヅミは何故かカミキリと一緒に寝ている東雲の姿を見て大いに困惑したという。
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