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豆炭々炬燵
5851文字
Public
パリピ孔明
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【赤KABE】ご勘弁ください
はじめて書きましたがシチュ的に果たしてこれであっているでしょうか…?お題箱リクエスト。
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「(すっげー高そうなお店、しかも完全個室
…
!)」
赤兎馬さんの行きつけの店らしいシックな色合いで統一された店内はシンプルな作りながらも端々から品の良さが漂う。
テーブルの真ん中に鎮座している金網ですら、上から注ぐ照明に眩く照らし出されている。
「好きなの頼め」
「ウ、ウス」
テーブルに置かれていたこれまた黒一色に塗られ実にお高いですと云わんばかりのメニュー表の表紙を捲る。
店に入る前にチラっと見た店名の雰囲気から焼き肉系だとは思っていた。その予想は当たりメニュー表にはどこどこ産の肉やら、和牛などの文字が踊り狂う。のは、まだ良かった。問題はその値段だった。
「(たっっっっか
……
!?)」
普段行く食べ放題の焼き肉店の何十倍だ? どのページを捲っても可愛くない値段の高さに冷や汗が出る。どれもこれも一流品ゆえの高さ。今の俺の手持ちはいくらだ
…
? 流石に財布をこの場で出すことは出来ず、記憶の引き出しを手あたり次第開けてようやく一品決めることが出来た。
「
…
この、キムチ盛り合わせで」
震える指先でテーブルに置いたメニュー表を指さす。
とてもじゃないが肉なんて頼めない。そもそも、このキムチもかなりいいお値段しやがる。こわい、このお店こわい。
向かい側に座る赤兎馬さんは無言のまま手に持っているメニュー表に視線を落とす。
「俺が適当に見繕って構わないな」
「ウス」
もうそれしか言えなかった。
呼んでもいないのに注文を聞きに来た店員にメニュー表を見ながら注文する赤兎馬さんに大人の余裕を感じられずにはいられない。俺も、一応、酒飲める年、なんだけど
…
なぁ
……
。
「
……
べ、おい、KABE」
「はい!?」
知らずボーっとしていたみたいで、俺は赤兎馬さんの声にまた上擦った声で返事をしていた。
「飲み物は何にするんだ」
「えっと、じゃあ
…
グラスビールで」
「かしこまりました」
店員さんの声までなんか高級感溢れていて俺はただただこの店の雰囲気に吞まれていた。
「俺はウーロン茶で頼む」
「赤兎馬さんアルコール飲まないんすか」
吞まれついでに緊張感まで消えたのか、素朴な疑問は口からあっという間に飛び出していった。
「このあと車乗るからな。アルコールは無しだ」
赤兎馬さん今、車乗るって言った? いや、それよりも赤兎馬さんがアルコール飲まないのに俺が飲んじゃ駄目でしょ精神で同じウーロン茶に頼みなおした。
「かしこまりました。ウーロン茶ふたつですね」
恭しくお辞儀をして個室から出ていく店員の姿を目で追っていたら間髪入れずに飲み物とお通し、そして俺がさっき言ったキムチ盛り合わせを持って戻ってきた。いくらなんでも速すぎるでしょ。心の中で突っ込んでいれば赤兎馬さんがお通しを食べ始めたので、俺も慌ててテーブルにセットされていた箸を持った。
恐々一口サイズを掴み口の中に放り込む。舌先から脳天を貫く美味さに感嘆の声が出た。
「うっま!」
お通しでこの美味さなら、このキムチの盛り合わせは如何なってしまうんだ!?
美味さに感動していると向かい側から声が掛かった。
「これからもっと美味いもんが来るから覚悟しろよKABE
…
」
ウーロン茶を飲みながら不敵に笑う赤兎馬さんにゴクリと喉が鳴る。もっと美味いものが来る? これ以上に?
肉こわい、肉おいしい。脳内がまだ来てもいない、食べてもいない美味さにてんてこ舞いだった。
「くそったれな事は美味いもん食って忘れろ」
「別にくそったれな事なんてないっすよ~」
「
……
ならいい」
お通しを食べる赤兎馬さんの言葉が何処か引っ掛かる。そうくそったれな事なんて何一つ起こってはいな──。
突如先程の嫌な記憶がフラッシュバックする。あの厭らしくて不快な感覚が、もう触られていない筈なのにあの手の感触が体を弄る。
あれだけ騒がしかった頭が一気に覚め、知らず震える自分の体を抱きしめるように腕を掴んだ。
「おっかしいな
…
、なんか急に
…
」
後になってから怖くなるなんて思ってもいなかった。もしかしたら無意識の内に忘れようとしていたのかもしれない。
「すまない」
赤兎馬さんに何か気にしないで下さいと言いたくても声が出なかった。
「失礼します」
店員が注文されたものを持ってきた。皿に綺麗に盛られた肉たちがテーブルの上をどんどん占領していく。
それを赤兎馬さんはトングで挟み、熱せられた金網の上へと置いていった。鼻を擽る肉の焼ける匂いは足元から這い上がってくる恐怖心を薄めてくれる。
「食え、今日は俺の奢りだ」
「
…
ウス」
鼻を啜り自分もとトングを掴もうとしたら制止された。絶妙な焼き加減で焼かれた肉がどんどん俺の皿に盛られ、悪いなと思いつつも焼けた肉を頬張った途端、先程の嫌な記憶はおろか悪いなって思っていた気持ちですら秒で吹き飛ぶことになった。
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