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ひろっぷ
2022-05-15 00:36:53
3395文字
Public
第五 ハス探
かみさま、どうかおねがい
※生贄パロディ。ハス探。
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「
…
いっ
……
つ
…
」
今日も激痛で目を覚ます。寝たわけじゃない。
気絶していただけだ。気絶したままそのまま睡眠に入り、そして朝を迎える。そんな日課だった。
そう、僕は差別を受けている。
それが始まったのは僕の家が火事で燃えて、両親が亡くなってしまった頃からだ。
火事で僕の顔左側に大きな火傷跡ができて、それからは化け物と罵られて人としては扱われなくなった。
同じ年頃の子達には殴られ、年上に口答えしようものなら物が飛ぶ。
アレをしろコレをしろと言う割にお金も食料もくれず、初めこそ泣いていたけど今や涙も引っ込んでしまった。
両親がいた頃とは雲泥の差な扱いだな。くそったれ。
そんな不遇な状況が覆ったのは、こんな辺鄙な村に一つの存在が来訪してからだった。
この村には昔から言い伝えがあり、少し離れた所に大きな城がありとある存在が暮らしているのだという。
村は潰されない代わりに毎年供物を捧げるという約束を交わしたそうで、しかしここ数十年とこの村から貢ぐ事はなかったという。
数十年待つのも大概だと思うけど、そこでようやっと痺れを切らしてやって来たようだ。
『供物が無いのはなにゆえか』
どこから声を発しているのか。まぁそんな事はどうでもよくて。危機感の無かったこの村人達は異形のひとを一目見るや足が竦んで動けずにいた。
僕も遠目で驚いたけど、あの輪の中に入る気はない。
けれどそんな僕をあの異形のひとは許してくれなくて。
(
……
あ)
『
…………
』
目が、あってしまった。僕は二つの目だけど、あのひとは沢山の目をこちらに向けていた。
『あれを』
その声に我を取り戻した人達は、あのひとの視線の先にいた僕を捉える。
「!?ヒッ
……
!」
あのひとの無数の目より何倍も怖い、生きた人間の目が僕に迫ってくる。手が捥がれるのかというぐらいに数人に掴まれ引きずられていき、あの異形のひとの前に差し出された。
どうぞこれを、とか何言ってるんだこの人達。
供物って言ってたから、かみさま、なんだろうか。
そのかみさまは手を一振りすると、地面から触手を生やして僕を掴む。まじまじと見られるものの、不思議と僕はこの村の人達ほどの怖さは感じられなかった。
何故だろう。
『ふむ
…
。よかろう』
村人達がホッとした気配を感じる。
安堵している村人を見て僕も安心した。
あぁ、僕は死ぬのだろうか。やっと、死ねるのだろうか。もうこの地獄に耐えなくてもいいのだろうかと。
ここから出ようと思った事もあった。けれど出られた所でこの見目だ。どこへ行っても雑な扱いしか受けられない。そう諦めてここで暮らしていくしかなかった。
だったら捧げられて楽になった方がマシだろう。
『しかし数年、否
…
数十年と供物がなかった事への罰はあらねばな。して、子よ』
「
……
え、僕、ですか?」
先のない供物、抵抗する気も口答えする気も更々無かった僕に尋ねてきたかみさまの声に驚く。
僕の問いにかみさまは肯定する気配を見せて、村人達を見遣りながら続きを応えていく。
それはまさに"神の所業"といわせるもので。
『見ていたぞ、お前の運命を。お前は我の物となった故、この者達をどうするか決める事ができる。
…
如何様にもだ』
「
…………
」
それが聞こえるや否や、村人達は僕に向かって謝罪の言葉や土下座までしてきた。今更なにをしているんだろう。許す許さないの問題じゃないんだ。いつもいつも手の平を返して接してきて。人として扱わなくて。
僕の判断を待つつもりなのだろう。触手から解放され、神に委ねるか彼らを許すのか。
決まっていた。そんなものは。
だって火事が起きたのも、そのせいで両親が死んだのもこの村人達がやった事だからだ。
かみさまの袖を掴んで、噛み締めるように呟いた。
両親の顔を思い出して泣きそうになるのを堪えながら、僕はかみさまにお願いする。
「消して。誰一人として生かさないで
…
!」
両親以外にした最初で最後の願いかもしれない。
それを聞いた村人は逃げ出し、かみさまは腹の底から笑い声を村中に響かせる。
『フ、ハハハハ!よかろう。その願い、確かに聞き届けた!』
蹂躙される村人の悲鳴を聞きながら、ボロボロのままの僕はまた気絶するように眠りにつく。
意識が遠のく中、かみさまが僕を抱えてくれる感覚があった。
あぁ、今度はよく眠れそうだ。
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