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鹿
2023-12-31 19:45:49
5755文字
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ぐだイベが気になりすぎて書いたSSもどきの日記
ぐだぐだ直前生放送をやる日のおはガチャがテセウス(初引き)だったという話。
1
2
扉を開いて目に飛び込んできた光景はとにかく金、金。ミダス王が関わっているのかと思うほど金塗れの部屋。そしてその輝きすら塗り潰さんほどに、一室に押し込めるには多すぎるサーヴァントの姿。
「とにかく茶々としてはもういい加減殿下に来てもらわないと困るわけ! もう盛りに盛った黄金率系スキル引っ提げてきて、茶々の水着霊基獲得の支援してほしいし! え、自分でQP貯めろ? この茶々にそんなしみったれた事させるとか、豊臣の恥殿下の恥なんですけどー!」
「姉上の姪とはいえ聞き捨てならない発言ですね! サルだかなんだか知りませんが、姉上を差し置いて天下人とか言ってる不届者、例えマスターが許してもこの僕が召喚を許しませんよ⁉︎」
「いやいや信勝殿、ここは一つ召喚した上で『わからせる』も一興というものでは? ふふふ、利休パンチも唸りをあげております」
まだ十代の少年少女の姿をしたサーヴァント達が何やら喧々諤々の議論を交わし、その背後には巨大な禍々しい雰囲気の巨大な手だけが浮かんでいる。事情を知らぬ者でも一目見て相当な怨念を溜め込んだものと知れる手がシャドーボクシングに勤しんでいても、この部屋ではそれもまた日常風景のひとつでしかないらしく、誰も気に留めてはいない。
「まーサルのやつ、ここで来んかったらもう機会無いんじゃないかって感じじゃしの。なんか太閤伝? 発売日? 合わせだとかさっき
電波
メタ
受信したし」
「いやいや、その
電波
太閤伝
は私も受け取りましたが、出ているのは豊臣とかいう成り上がり者だけではありませんからね。合わせてと言うのなら、この長尾景虎に星一つ追加した新霊基登場でも良いでしょう!」
「何の話するんじゃ? 厠の話?」
「黙りなさい! 二〇一九年最も多くの聖杯を捧げられたとの
噂
メタ
もある軍神が、いつまでも星四つで燻っているはずがないでしょう。越後二〇〇万の民もそうだそうだと言っています! 晴信がさっさとこちらにも顔出せばいいんですよ!」
煽り合う凛々しい顔つきの女性達は、おそらく片方は先ほどマスターも話していた織田信長に、もう片方は同時代の有力領主長尾景虎。彼女らの話の中に出てきている人物もまたそうなのだろう。
「私たち新選組としてはやはり局長の登場、もしくは一番隊と三番隊の隊長が揃ってることですし二番隊隊長を期待したいところですよね!」
「いや永倉はいいよ」
「もーなんなんですか斎藤さんのその頑なな態度、嫌がるなら理由くらい教えてくださいよ」
色素の薄い美少女、察するに「幕末組」の主要サーヴァント沖田総司はそばにいた胡乱な目つきのコートの男性の肩をバシバシと叩いている。
「もちろん近藤局長も可能性はあると思うけど、局長は局長でも芹沢さんが来ることだってあるかもしれないよね。カルデアとは縁を結んでることだし
……
まあ私と違って、地獄から脱走なんてしないかもしれないけれど」
「フン、あれだけ啖呵切っておいてノコノコ顔出しやがったら、俺が叩っ斬ってやる」
おそらく同じ新選組のメンバーであろう男性が二人、強面のしかめ面とたおやかな笑顔を並べている。しかし会話の内容から察するに、どうやらマスターの言っていた「地獄から帰ってきた男」はたおやかな方であるらしい。冥界からの帰還経験者たるテセウスから見ても少々意外だった。
「卑弥呼さん
……
もしも芹沢さんが来る時、クコチヒコと共同霊基だったりしたら、私どんな顔したらいいんでしょうか? 可能性無いとは言い切れなくて
……
二度ほど合体してますし」
「受け入れるしかないわ壱与。古来より邪馬台国と新選組には密接な関わりがあるのですから
……
」
「クコチヒコは狗奴国の人間なんですが
……
」
そして彼女らは邪馬台国の女王であるようだが、いよいよテセウスにはまるで理解の及ばない領域の話をはじめている。最早呆然と見ているしかなかった。
「ちゅーかドピコ人斬りサークルのくせに最近数増やしすぎなんじゃ貴様ら! わしだってここに家臣四人もおらんぞ⁉︎」
「ええー、ノッブんとこはノッブが三人もいるんだから、それで我慢してくださいよ」
「その数え方だとお前ら既に七人おるじゃろーが! 同好会から部活動へ昇格狙っとんのか⁉︎ええい、いい加減ミッチーでも権六でも丹羽ちゃんでもええから来い! というかミッチー! 万が一この大河イヤーのタイミングで竹千代が来でもしたら、『あいつ自分の大河の時何やってた?』って笑いもんじゃぞ⁉︎」
「はあああ⁉︎今タヌキジジイの話したああああ⁉︎」
「ああっ! ノッブが
電波
メタ
マシマシのこと言ったせいで茶々さんがアヴェりかけてるじゃないですか! なんとかなだめてください!」
「ええー。いやまあ、どうせ大河ネタなんて『わしの白兎
……
』ってマスターに言う場面があるくらいじゃって多分。もしくはやたらデカい清洲城の背景が描き下ろされるとか」
「だから多いんですよ
電波
メタ
が! 茶々さん落ち着いてください。配布から星増やしてアヴェンジャー化なんて、ノッブとただ被りですよ!」
「はっ確かに
……
やっぱり目指すべきは水着よね。あっでも奏章? とかあるし、むしろこれからアヴェンジャーの時代来る可能性あったりする? ねーマスターは茶々の心機一転の霊基、クラス何が良いと思うー?」
一応マスターが来ていたことに気づいていたのかとか、そんな着替え感覚で別霊基になるものなのかとか、色々と気になることはあったが、怒涛のような会話の流れにテセウスはマスターを見守るばかりである。マスターは長年彼らと付き合いがあるだけあって落ち着いていた。
「うーんそうだなあ。ぐだぐだサーヴァントは確かにクラス偏りがちだけど、他人や流行を気にする必要はないんじゃないかな?」
「ほう? つまり私の星五霊基は晴信との被りなど気にせずライダーを選択するのもあり、と」
「割り込んでくんなや軍神!」
「景虎さんセイバーやアーチャーでも適正ありそうだし迷うよねー。まあでも個人的にはクラスもそうだけど、どんな宝具だったりスキルかとかも気にな
…………
」
不意に、マスターの動きが止まる。
「スキル
……
強化
…………
素材
……
」
そして今度は身体がぶるぶると震え出した。
「あああ
――――
!! 狂気の残滓が足りない気がするぅ
――
ー!!」
突如として叫び出したマスターに、テセウスは必死で呼びかける。
「急にどうしたんだマスター⁉︎」
「私のマスター経験が告げている! スキル強化で狂気の残滓二一六個要求する人がいる!」
「じゃあきっと今回の実装は星五バーサーカー松蔭先生だな!」
「いやぁ
――――
ー!! まだ百個くらいしか集まってないのにぃ
――
ー!!」
「どっから湧いて出やがった長州モンが!」
「なに顔出して一年も経ってねえくせに実装されようとしてんだ! うちの総長だって二年弱かけて地獄から脱出してんだぞ! お前んとこの先生バトルキャラも出てねえだろ!」
「そんな
つまらん理屈
大人の事情
は僕の知ったことじゃないな!」
急に狂を発したマスター、それに慣れ切った様子で受け流しているぐだぐだサーヴァント達の様子は、数々の修羅場をくぐったテセウスをも困惑させた。
「あー新人の方ですか? マスターは慢性的な素材不足恐怖症でして
……
」
「不意にこういう発作起こすのよね、まあ慣れるしかないし」
「銅素材は! 二五二個無ければ! ゼロと同じ!!」
「過酷な旅路にすっかり心が荒んじまったんだ
……
世界を救うなんてことを背負わされて
……
」
「いや銅素材三種三桁要求男(アペンドスキル除く)が言うなや」
「この症状出てる時に銅素材三種三桁要求男(アペンドスキル除く)がそばにいたらトラウマが掘り起こされるでしょう! 土方さんと向こう行っててください!」
「いやだって
……
金銀銅って種類あって銅が一番集めるの大変とは思わねえじゃん
……
ねえ副長?」
「罠だろ。むしろ気を遣ったつもりだったってこないだ来た狙撃手も言ってたぞ」
今日来たばかりのテセウスにはカルデアの懐事情などまるでわからない。それでも狂乱状態にある年若いマスターを、見過ごすことは英雄としてすべきではないと考えた。
「マスター、どうか気を確かに
……
! 辛いことがあるのなら僕も協力するよ、だから
……
!」
肩を掴んで真っ直ぐに人類最後のマスターの目を見つめて言う。その目はまさしく、正しきを成す英雄のそれであった。
英雄からの真摯な声を聞いたマスターは、肩に置かれた手にそっと自分の手を重ねる。
「テセウスも一緒に英雄の証集めようね!!」
だがその手を驚くほど強い力で握り返したマスターの目は、素材に飢えた獣のそれであった。
「なんじゃお前、さては英雄の証三桁食う系男子か?」
「神代の
希臘
ギリシャ
の方なんですっけ? あの辺も多いですよね~英雄の証三桁食う系男子」
「そんなカテゴリーもあるの⁈」
「逝かないで嵐ノッブ
――
ー! 沢庵茶もう一〇〇杯
――
ー!」
いよいよマスターの発言は混沌を極めていた。どうか導いてくれと祈っても、
知恵の女神
アテネー
も匙を投げるであろう。
「まーぶっちゃけイベントの予測なんかしても当たった試し無いですしね~。事前説明なんて、マスターが意味不明なことを言い始めた時の心構えをしろって話ですよ」
「毎年のように医療班にマスター連れて駆け込むやつがおるんじゃよな、是非もないネ!」
目に痛い黄金の部屋には、混沌を飲み込み笑う者どもの笑い声が響くばかりであった。
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