一コマをいただき、そこからお話を書く遊びにお付き合いくださいましたはなる先生(@6_hanaru_6)に許可をいただき、おまとめしました!5枚もあります!嬉しい!やった!
誠にありがとうございます!
◇キバナさんの笑ったお顔の一コマより書かせていただきました!
思えば、キバナが自然体で笑った顔一つ、俺は見たことがなかった。
キミと俺が会う場所は、決まってコート上ただ一つ。
そうとなれば、常にキミは獰猛な竜となって俺に牙を剥いた。
荒れ狂う激しい気性で獲物を食い破る。
俺にとってはそれが普通だったし、彼は元来好戦的な部分が大きいのだろうと思っていた。
しかして、俺の認識は間違っていたという。
唖然として、口元にカレーを運ぶ手が止まった。
「キバナさんって、ほにゃほにゃしてるよね、穏やかっていうかさ」
もっと怖いと思ってたなんて、笑ったソニアに俺は唖然としてスプーンを止めてしまう。
キバナが、ほにゃほにゃしていて穏やか、俺の知っているキバナと違う人だろうか。
休暇にブラッシーの研究所まで足を運んだ先、丁度昼食にカレーを用意したソニアがいた。
にこにこ席につけば、彼女は盛大なため息と共に、大盛りにする?と尋ねてくれる。
俺は大いに頷いて、満足にありがとうとお礼を口にした。
ソニアは呆れながらも一緒に席につき、最近のホップの様子だったり、研究の進捗だったりを聞かせてもらった。
その延長で語られた言葉に俺は驚いてしまう。
ソニアは固まる俺に首を傾げながら、カレーを掬って口に運ぶのだった。
「宝物庫の見学させてもらった時とか、朗らかで、ずっとにこにこお話ししてくれたの」
どうやら、俺の知るキバナで間違い無かったらしい。
へぇと小さく頷き、スプーンをまた動かし始める。
にこにこ、するのか。
キバナは俺には見せないのに、ソニアには見せたのか。
なんだか、もやりとした。
だって、俺の方がずっと長くキバナと向き合ってきた。
チャンピオンとして君臨した十年間、俺の前から一度も退かなかった男はキバナだけだ。
毎年、あの天辺のコートには、キミがいた。
なのに、俺が知らないキバナがソニアに知られている。
不満だ、俺には好戦的な牙を剥いた姿しか見せてくれない。
俺を仕留めようとする荒々しさだけでキミはできていた。
うぐりとスプーンを噛むと、ソニアがお行儀悪いよと目を眇める。
ソニアの叱りの気配に小さく肩を竦めながら、ぱたりと瞬きをした。
それからふと、あっと気がつく。
考えてみたら俺、キバナと普通に喋ったことないな。
ショッキングなことに、俺はキバナと出会って十年近くになるが自然体の彼と話したことがない。
仕事柄、メディア撮影などはあるが、そこでは控え室も違うし、試合終わりのインタビューに関していえば一緒に受けることもない。
俺は、コート上のキバナしか知らない。
これはすごく勿体無いことではないのだろうか。
今更なことに、がんっと衝撃を受けてまた動きが止まる。
ソニアはそんな俺の様子に眉を顰めて、溜息混じりにかぶりをふった。
「なぁに、変な顔」
「いや、うん、うぅん」
もやもやした胸を抱えてずぷぅとカレーにスプーンを差し込んだ。
そのまま項垂れる俺に、ソニアはぱちぱち瞬いてにまぁとする。
それからとんっとんっとテーブルを指先で叩いて俺の意識を吊る。
ぱちっと向かう視線に、ソニアはにんまりとして上目を向かせていた。
自然、俺は危機回避に視線をずらす悪手に出てしまった。
「羨ましいんだ」
「
…別に、そんなんじゃないぜ」
「うっふふ、嘘だね。ダンデくん」
逃した視線に指摘が入る。
苦い顔で目を瞑って完全な逃げに出れば、ソニアはきゃらきゃら笑って俺を呼ぶ。
だから、渋々に瞼を持ち上げれば、その先で楽しそうに眦を下げたソニアに出会う。
俺は降参に顎を引く。
そんな仕草にソニアは目を細めた。
「今はもう、チャンピオンじゃないわけじゃん?」
「死体蹴りとは酷いな」
「しーらなぁい、まっ個人的にはイメージ戦略とかもう必要ないって思うのよね」
そういうつもりで、普段話をしていなかったわけではない。
単純に、俺は試合だけしていてくれれば満足だっただけだ。
あの場所以外の、キバナはいないと、知らないでいただけだ。
知ってしまえば見たくなる、あるとわかれば欲しくなる、そういうタチで俺はできている。
むぐりと口元をまごつかせる俺に、ソニアはゆるゆる微笑んで見せたのだった。
「羨ましいって思うなら、それはダンデくんがキバナさんと仲良くしたいってだけの話でしょ」
素直になればいいのだと、優しく促す声に、俺は顔をくしゃりと潰してしまうのだった。
◇◇◇
目の前の彼は変な顔をする。
思っていた通りの反応に俺は少し恥ずかしくなってきた。
目を見開いて、薄く開いた口はそのまま固まるキバナ。
やはり唐突すぎたのだ、もう少し手順を踏んで提案すればよかった。
後悔に手を組んでそこに額を押し付けた。
バトルタワー執務室、キバナは次期のジム予算について相談に来ていた。
ある程度の目処がつき、前年踏襲の流れで話はまとまった。
ここ最近、委員長としての業務の中でキバナと二人きりで話す機会も多い。
けれど大抵、事務的なやり取りのみで終わる。
いつものこと、だけれど、俺はいつも通りではなかった。
笑った顔が、見たいと思った。
俺が知らない、キバナの顔を見たいと思った。
そうして少しずつ仲良くなって、ソニアが見たという、朗らかなキバナを俺も知りたかった。
資料をまとめて席を立つキバナに、俺は前のめりになる。
この後は、特に会議もないし退勤するだけ、きっとキバナも直帰だろう。
今だと、ついさっきまでの俺は思っていたのだ。
だから、勢い込んで大きな声にも呼び止めた。
「キバナ、この後食事に行こう」
しかし、それは間違いだったと気がついた。
現状がそう語っている。
俺の突然の誘いにキバナからの返答はない。
当たり前だ、これまでプライベートに一切踏み込んでこなかった男が突如食事に誘ってきた、しかも勝手に直帰だろうと思っていたが、もしかしたら事務処理が残っていたかもしれない。
ならば、これは困る話だろう。
じわじわと後悔に苛まれ、俺は組んだ手に押し付けた顔をあげられないでいた。
しおしお小さくなっていく俺に、キバナの方からふはっと噴き出す音がする。
笑った、のだろうか。
その様が見たくて、慌てて面を上げる。
しかして、キバナは既にいつも通りに落ち着いた容貌でこちらを見ていた。
笑ってくれていない。
それが残念で、しょぼっと垂れる眉がある。
キバナはそんな俺に眦をぴくりと跳ねさせながらも、唇をきゅっと引き結ぶ。
ぶるっと一瞬揺れた肩を、見逃さない。
彼の内側の揺れをみたのだが、それがなんなのかわからない。
キバナは思案に顎を撫でる。
沈黙が続いて、そわりとした心地になった。
不器用に喉を鳴らした俺に、キバナはそうっと視線を流し込んで目を細めたのだった。
「それは、委員長命令の会合か何か?」
「ちっ違う!俺はただ、キミとっぁぐ!」
がったんと大きな音を立てて立ち上がる。
勢いがつきすぎて、膝を思い切りテーブルに打ちつけた。
あまりの痛みに悶絶して、テーブルに手をついて前のめりになる。
痛い、こんなに慌てたのは、ホップが歩き始めの頃ウールーの群れに落ちた時以来だ。
あぁ、あの時は俺を追いかけてきたホップがもふんっと真っ白な彼らの中に落ちて本当に肝が冷えた。
遠く思い出す、可愛い弟が引き起こした事件に意識を飛ばして痛みをやり過ごす。
ぎゅっと目を瞑って堪える痛みに、ぶふっとまた噴き出す音がした。
また、笑ったろうか。
ぱっと顔を持ち上げる。
その先では、すんっとした顔でスマホロトムを呼びつけるキバナがいた。
「んじゃ、プライベートな飲みの誘いってことでオッケー?」
「あっあぁ、そうだが、その嫌なら」
「店、こっちで予約していいよな」
俺の言葉をばさっと遮ったキバナは短くスマホロトムに指示を出す。
ぱちりぱちりと瞬きに固まる俺に、キバナは口角を持ち上げた。
あぁ、俺が知らない顔。
柔らかな口元に、伸びる目尻をぽかんと見つめていた。
キバナはどこか機嫌よく、立てた指をくるくる回したのだった。
「ほら、行くぞ。あと十秒で決めないなら行かない」
「っ!行く!行くぜ!」
ばたばた落ち着かない仕草に準備を始めた俺に、キバナは頷く。
その長い足でドアの前まで行ってしまうから、余計に焦る。
鞄に荷物を詰め込んで、俺もキバナの隣に急いで駆け寄る。
キバナはそんな俺を見下ろすと、口元を大きな掌で覆いそっと顔を背ける。
何か、気に障ったろうか。
眉を寄せて呼ぶ俺に、キバナは軽く手を振ってなんでもないと短く切り上げる。
そうして先にドアを開き、恭しく頭を下げて片手で俺を促した。
「さ、どうぞ我らが委員長」
「
……今日はそういうのは、やめてくれ」
「お気に召さない?」
ちょっぴり意地悪な虹彩を煌めかせ、にやりと笑う顔は俺がよく見る種類のそれだ。
不満が滲む。
そうじゃない。
俺が見たいのは、このいつもの俺を煽る笑みではない。
俺が出れば、キバナは静かにドアを閉めた。
二人出た廊下には、スタッフはいなかった。
しんと静まり返る場所で、二人向き合った。
ちょんっと唇が尖る。
子供みたいな仕草に、剥れてしまうのは恥ずかしいばかりだが、じと目をやめられなかった。
俺は鈍く頷き、キバナのパーカーの紐をくんっと引っ張った。
少し傾き近づく顔に、キバナが目を張って固まった。
それをよしとして、俺は小さく強請る。
「今日は、ダンデとして、扱ってくれ」
元チャンピオンでも、リーグ委員長でも、バトルタワーオーナーでもない、ダンデとして扱われたい。
そうしたら、キミは俺にも穏やかな部分も見せてくれるんじゃないかと思ったのだ。
横目で覗き込んでくるキバナの切長な瞳、そのスカイブルーは驚きに満ちていた。
また、見れた。
俺の知らなかったキバナ。
試合の場、追い詰めて追い詰めて彼の予想をひっくり返してやった先、驚愕に張り詰める見開かれた目は幾度となく引き出してきた。
けれど、こんな気の抜けた驚きを、キミが見せることはなかった。
だから、それが見えるのは嬉しかった。
なるほど、俺はソニアの言う通り、こうやってキバナと距離を縮めたいらしい。
素直になればいい、そんな助言を思い出し俺はもう一度頷く。
素直な気持ちを見せれば、彼も無碍にはしないだろう。
くんっともう一度引っ張って俺は重ねて強請る。
「キバナと、ダンデとして、話がしたい」
じっと見つめる俺に、キバナはぐんっと唇を捻り曲げた。
眉をきつく寄せ上げる様相に、嫌がられたのかと不安に手が緩んだ。
キバナはそんな俺にぬっと手を伸ばして、そのまま頭をぐわしっと引っ掴む。
力づくにわしわし撫でくりまわされた。
強制的に俯かされて、びっくりしてしまう。
一頻りわしゃわしゃ撫で回されて、彼は手が本当に大きいのだなと感心する。
それから、人に頭を撫でられると言うのは、むず痒いと知る。
むうと噛み締めて、ふやけた口元が出来上がる。
むず痒い、けれど、気持ちいい。
ふはっと笑う俺に、キバナは手を止めて深く息を吐き出した。
くしゃくしゃになった髪を手櫛で整えるキバナの丁寧さがおかしくて肩を揺らして笑ってしまえば、唸り声が聞こえた。
ぱたりぱたりと瞬きに上目を覗かせれば、その先でキバナはじんわり頬を色づかせていた。
キバナはふいっと顔を背けて、俺の背中を柔く叩いた。
促されていると理解して、その背中を追えばキバナは俺が追いつけるように歩幅を狭める。
隣に並んで見上げた顔は、ちょっとだけ照れているように見えたのだった。
「お前、突然どうしたの」
突然、そうだな確かにここ最近になってからキミと仲良くなりたい自分を知った。
けれど、本当は俺の心の根っこではいつだってキバナの近くを望んでいたと思うのだ。
だから、こんなにあっさり行動に移れたのだと思う。
素直に、今日の俺は、素直になる。
呪文のように頭の中で繰り返し、俺は自分の心に従った。
「突然じゃない」
「へぇ、そう」
「結構前から、俺は、キミと仲良く、したかった、だけで」
なんだか、改めて言葉にするのは照れ臭い。
むずむずまごまご、どんどん言葉尻が掠れていく。
余計に羞恥が膨らんで、徐々に俯きもごりと唇を結んだ。
じんじん耳が熱を持って少し痛い。
くぅっと呻いて、顔を上げられない。
キバナは、何も言ってくれない。
だから、ちょっと悔しさに眦を釣り上げて熱を持った顔をそのまま持ち上げる。
キバナは俺から大いに顔を逸らしてぶるぶる肩を震わせていた。
どうしたのだろうか。
じぃっと見やる俺に、キバナはゆったり顔を向ける。
「あ」
間が抜ける、声を落としてしまう。
キバナは笑っていた。
くしゅりとその目元に柔い皺がよる。
眉を寄せてできあがる眉間の溝は、やけにふやけて出来上がる。
八重歯が見えるくらい大きく開いた口は、けれど、いつものように獲物を食い破らんとは作られない。
わはっと喜色にも色濃く破顔した無防備な姿がそこにある。
キバナは笑っていた。
俺の前で笑っていた。
お互い歩みが、ぱたりと止まっていた。
「
…オレさま、がまんのげんかい」
俺に向けてくれた笑みが網膜を抜けて脳まで届く。
一瞬、息の仕方を忘れた。
とくっとくっと緩やかに脈拍が早さを増した。
おっかしいの、なんて続けて肩を揺らしてキバナは笑うから、何故だかほわりと左胸が熱を孕む。
なんだ、これは。
ばくんばくんと音が大きくなっていく。
戸惑いに、助けを求めてキバナを見てしまう。
けれど、見れば見ただけ脈拍が不恰好に変わっていく。
どうしたらいい、俺が見たいものが見えただけなのに、どうしてこうなる。
あわりと唇を慄かせる俺に、キバナはにんまりして顔を傾けた。
「ダンデ、ずっとオレさまと仲良くしたかったんだ」
「え、あぁ、そう、あぁ、そうだ、ぜ」
頷けばいいだけなのに、それがうまくできない。
がたがたぎこちなく頷けば、キバナはふぅんと上機嫌に頷いてふにゃりと笑う。
キバナが手を持ち上げる。
伸びてくる指先を、目で追いかける。
キバナに頰を指先で辿られる。
じんっと撫でられた場所が熱を持ち、どんどん肌の色が変えられる。
すりと目尻を撫でられて、そこにある温度にふわふわしてしまう。
「お前、案外かわいいよね」
ふやけた双眸は、今、俺だけを見つめている。
キバナの指が肌から離れた瞬間、熱の境界がはっきりする。
どっごん、ドゴームの爆音波が体の内側で破裂したような気がした。
実際には、そんなことが起きてたら俺は死んでいるが、正直、死にそうなくらい体の熱がおさまらない。
一気に流れ込む熱さに目を白黒回してしまう。
おかしい、これは予想外だ、やっぱり今日はやめるべきだろうか。
じりと後退する俺に、キバナは慣れた手管に腕を回す。
逃げ場を奪うようにして、腰に回った腕にぎょっとした。
なんだ、俺はただ、自分の知らないキバナを知れればと思っただけで、こんな、なんだ、こんなのは知らないままでもよくて、いやだけど、たくさん教えてもらえるなら、いいのかもしれなくて。
頭の中は混乱状態に巻き上げられる。
ひくりと体を揺らして戸惑ったままでいれば、キバナはふふっと柔い声を転がした。
「顔、真っ赤」
「な、んでだろう、な」
「フフッそーね、なんでだろ」
自分で自分がわからない。
だけれど、キバナはわかっているようだった。
なのに、はぐらかされてしまって俺は眉を寄せあげる。
どっどっと重たい内臓の音を体の奥で聞きながら、落ち着かない心地でキバナを見上げる。
キバナはにまぁと目尻を引き伸ばすと、ぱっと俺の体を離れさせる。
それからぱすっと軽く俺の頭を撫でると先をいく。
撫でられた箇所を片手で抑えて、ぐむっと下唇を軽く噛む。
るんるん浮かれた調子に歩き出したキバナに、俺は首を傾げることしかできない。
俺としては喜ばしい限りだが、彼にとってのメリットはそこまで大きなものだろうか。
足を止めたままでいる俺に、肩越し振り返ったキバナは、先ほどから見せてくれるようになったふにゃふにゃした笑みでこちらを見やる。
きっと、まだ慣れないからだろう。
その穏やか笑みに俺の心臓は跳ね回って止まらない。
早く慣れなければ。
ぎゅむっと服の上から、左胸を押さえて深呼吸する。
キバナはにこにこ、朗らかにも笑ってみせた。
「とりあえず、お食事しながらゆっくり話してみない?」
にこぉと重ねて笑みを向けるキバナにどぎまぎしてしまう。
俺は一つ頷くと待ちの姿勢でいるキバナに続く。
落ち着かないものは落ち着かないが、こんなにも簡単に柔い部分を見せてくれるのなら、もっと早く言えばよかった。
思いながら、追いついた先キバナは軽やかな足取りに俺を促した。
一緒に歩き出し、ぽっぽっと熱を浮かべた頰を手の甲でごしりと擦った。
ちらと覗いた先、キバナは弛んだ頰のまま横目を流し込んできたのだった。
「オレさまも、ダンデと仲良くなりたかったんだよね」
にっぱりと優しく告げる声音に、オレの内側でぶわりと花が咲き誇った。
嬉しい、本当にそうならとても嬉しい。
そうか、キバナも俺と、なるほど、俺たちはずっとなんて勿体無いことを。
ぱっと顔を輝かせた俺に、キバナは眉を垂れ下げた。
そうして、エレベータの前まで行くと下ボタンを押して、小さく呟く。
「脈なしじゃ、なさそうだよなぁ」
その言葉の意味は、後で聞いたら教えてくれるだろうか。
話題の一つとして覚えておこうと決めた。
さてこれから何を話そう、たくさん、それこそ語り尽くせないほどに、キバナとは楽しいことを話せる気がする。
そんな楽しみに、心臓の煩さは気にならなくなっていく。
ふふっと笑みを浮かべて、俺はキバナを見上げる。
ぱちりと目が合う。
キバナもにこりと返してくれる。
そんな小さなやりとりが俺を浮かれさせた。
今夜に続くこれからに期待でいっぱいな俺は、くふりと声を立てていたのだった。