一コマをいただき、そこからお話を書く遊びにお付き合いくださいましたはなる先生(@6_hanaru_6)に許可をいただき、おまとめしました!5枚もあります!嬉しい!やった!
誠にありがとうございます!
◇ユウリちゃんとマサルくんの一コマより書かせていただきました!
マサルは、私の世界で一番のお兄ちゃん。
誰よりもマサルが一番、自慢して回っちゃうくらい大好きな、優しくて強くて格好いいお兄ちゃん。
いつだって味方でいてくれて、いつだって隣にいてくれる。
楽しくて大きな声で笑ったりする時も一緒、怒ってめちゃくちゃな声で喚く時も一緒、悲しくて押し殺す声で泣く時も一緒、嬉しくて華やぐ声に喝采をあげる時も一緒。
双子の少しだけ早く産まれた兄に、私はべったりでお母さんは少し困っていた。
けれど、マサルが許してくれたから私はその一番近くを離れなかった。
だからそう、これから先何があったって私の一番はマサルだけだって思っていたの。
マサルよりも私の中を占めるものなんて、絶対にないって思ってた。
だけど、世界っていうのはちっぽけな私には想像がつかないくらい、簡単にこぽんっと転覆しちゃう。
だから、私はこんなにも落ち込んで逃げ込んでしまった。
「ゆーりぃ、いい加減にしたら?」
「やだ、まだ、くっついてる」
「はいはい、あぁゴンベ今日はユウリのゴリランダーが表にいるよ、うん遊んでおいで」
久しぶりの帰省、チャンピオンという立場になってから怒涛の日々を過ごしていた。
ジムチャレンジを乗り越えて、チャンピオンへの挑戦権をかけたリーグを突破し、そうして最後、王座についたガラルの頂点を打ち破った。
私がここまで駆け抜けて来れたのは、何も一人の力じゃない。
私の大好きな相棒たち、自慢の兄の応援、そして、そうして、そう、私がここまで走って来れたのは。
黄金の瞳、決して折れることのない真っ直ぐな心、私の太陽になったあの笑顔。
頭を埋めた私の天辺に座り込んだ男の子に、けれど、しょんぼり眉が下がった。
気がついたら、私は彼に、ホップに勇気つけられてきた。
どんどん先を走って、弱さも噛み締め乗り越える強さを教えてくれた。
大好きな、大親友であり、ライバルだ。
今の私の宝物、それはマサルとホップだ。
だけど、そんなホップと、私は。
うぅうっ、呻いて私はマサルのお腹に顔をぐりぐり擦り付けた。
帰宅すると同時、実家のリビングに駆け込んだ。
ソファに腰掛けたマサルを見つけてそのお腹にダイブ、ぎゅむりとくっつき顔を埋めていた。
そんな私をマサルは仕方がないなと受け止めて、するりするりと髪をすいて整える。
だからその手に甘えた。
そうして、ぼそりと呟くのだ。
「ホップと、喧嘩した」
ぐすんと鼻を鳴らしてぎゅぅうぅと力を込めれば、マサルは何も言わずにぽんぽん頭を撫でてくれた。
なんてことはない、ちょっとした喧嘩だと人は言うだろう。
だけど、私はホップと喧嘩をしたのなんて初めてでどうしたらいいのかわからない。
いつも、二人ともコートを降りればただの大親友で、なんだって話したしなんだって笑い合えた。
なのに、私がそんなホップに酷いことを言ってしまった。
ぐずりぐずりと内側をぐずつかせ、私はマサルにしがみつく。
頭の中を巡った記憶は、とっても苦い味がした。
チーゴみたいに、いがいがとした苦いものでできていた。
キャンプをしたかったのだ。
ここのところ、家にも帰れずホテル生活で朝から晩までたくさんの人に会ってはチャンピオンの顔を見せ続ける。
知らない人と代わる代わるにお話をして、相棒たちとは遊んでもやれずフラストレーションが溜まるばかり。
限界を迎えてぐしょぐしょになったところで、ダンデさんがどうにかこうにか一日だけ休みを取ってきてくれた。
疲れたよな、こう言う時はライバルとバトルでもして発散してくるといい。
そんな言葉に私はうきうき浮かれてしまったのだ。
だから私はホップをキャンプに誘った。
バトルはできなくても、お話しするくらいはしたい。
意気揚々と電話をかけた先、ホップは困ったように私を断った。
「ようやくレポート終わったんだ、今日は疲れてるから明日にしようぜ」
そんな一言に、がんっと傷つく私はいやなやつだ。
わかってる、疲れた体でキャンプなんて危ないからやっちゃダメ、わかってる、ホップはちゃんと明日を約束してくれていた、いやじゃなくて、体調が整ってないと私を困らせちゃうかもしれないから、だから次の約束を出した、わかってたのに、でも私のお休みは今日しかないとなんだか悲しくなってしまった。
瞬間、ぶわりと涙がぼろぼろ溢れて、思わず言ってしまった。
「ホップはもう、私と遊んでくれないんだ」
恨みがましいむくれた声がきっかけで、何を言い合ったかはわからなくなってしまったが電話口に言い合いになってしまった。
あんなに人に対してたくさん強い感情を向けたことがない。
寂しくて、寂しくて、寂しくて、そればっかりに言葉を重ねていた。
ホップも俺だって遊びたい、って言ってくれてた。
なのに私は。
電話を無理矢理切って、私はすぐさまハロンに飛んだ。
そして、現在、甘えに甘えることを許してくれるマサルにしがみついていた。
よしよしと私を撫でてくれるマサルの手に眉をググッと寄せあげる。
顔を持ち上げ見せた顰めた顔に、マサルはふっはと吹き出す。
解すようにぐにぐに親指が当てられる眉間に、私は少しだけ強張る表情筋を解いていった。
「ユウリは、自分が悪いってわかってるんだね」
「うん、ホップは、悪くないの」
いつだってホップは、私の手を引く。
ユウリは仕方ないな、なんて兄貴分ぶって前を歩いてくれる。
頼もしくて、格好いいしっかり者の男の子。
そんなホップに私は酷いことを言った。
チャンピオンに続く道を、ホップは一緒に駆け抜けてくれた。
私の天辺の大好きに、マサルと一緒にいてくれるホップ。
そんな大好きなホップと、喧嘩をしてしまった。
なんだかこんな自分が恥ずかしくなってきゅっと唇を引き結ぶ。
じわりと色づいたほっぺたに、マサルはくすくす控えめに笑う。
それからふにりと頬を包んだ片手は、双子なのに私よりも大きかった。
「喧嘩したの初めてでびっくりしたんだよね、でも、謝りたいだろ?」
「
……うん」
「可愛い僕の妹、君はちゃんと謝れるよ」
マサルの言葉は魔法みたい。
ふわふわとろりと優しく心を撫でてくれる。
瞬きにもすんっともう一度、マサルのお腹に顔を埋めた。
さらさらと撫でられる髪に、うとりと目尻を下げていた。
ぱたりと玄関から音がする。
お母さんお庭の手入れに出たのかな。
思いながら、すりとマサルのお腹に頬を擦り寄せた。
「ほら、ホップも仲直りしたいよね」
「え」
唐突な名前に、ぱっと顔を持ち上げた。
それから慌てて振り返る。
その先では、スマホロトムを周りに浮かべたホップがいる。
どこかバツが悪そうに、けれどもしっかりこちらに歩み寄る。
まさか。
ぱっと見回した先、天井付近に少し申し訳なさそうな顔をした、マサルのスマホロトムがいた。
じわじわ、じわじわ、這い寄る熱がある。
まさか、ずっと、私が来てからずっと、通話してたとか。
きっとそうなのだろう。
マサルのスマホロトムはすぃんとこちらにやってくると、通話終了の画面を見せたのだった。
次にはぼふんっと音を立てるようにして赤面した。
わなわな震えた私の背後、ホップが呼ぶ声がする。
情けない泣き言をいっぱい聞かれちゃった。
どうしよう、呆れられる。
ちゃんと謝ろうと思ったのに、頭が真っ白になってしまった。
真っ赤になって動けない私、ホップは両膝をついて目線を合わせる。
私と同じくらい、赤いほっぺたが目にふわりと入り込む。
だけど目元は疲れていて、申し訳なさにぐぐっと目の奥が熱くなる。
ホップの手が伸びる。
ぽふりと私の頭を撫でた掌は、マサルより、少しだけ大きかった。
「ユウリはちょっと、マサルに甘え過ぎだぞ」
「あ、ぁえ」
「いや、ちがう、そうじゃなくて、だな」
「ほ、っぷ」
辿々しく呼んだ先、頭をがしがし掻いたホップは唸る。
それから、瞬きにきゅうっと寄せあげられた眉があった。
ふにゃふにゃと弱り切った顔つきで、私を見つめるから思わず口が動き出す。
優しいマサル、ありがとう。
私に勇気をくれたのだと、マサルから離れてホップに向き直った。
「ひどいこと、言ってごめんね」
だから、仲直りしてほしい。
うじゅりと歪んだ目元に、ホップは慌てる。
それから大きく頷いて、私の肩を優しく撫でた。
「俺も、ごめんな」
空気がふわふわ緩んだ気がした。
二人とも自然とほっとした息を漏らした。
何を考えるでもなく同時に両手を広げて、同時にお互いに抱きついた。
ぎゅむぎゅむ、きつく背中に回した手で温度を分け合う。
安心して、とってもあったかくて、二人小さく笑ってしまう。
よかった、ホップと仲直りできた。
へへっと笑い合いゆったり離れて、ソファのマサルに二人で目をやった。
マサルは何でもできてしまう。
私たちを簡単に引き寄せてくれる。
格好いい、世界で一番のお兄ちゃん。
仰ぎ見た先で、けれど、マサルはふにゃりとら眉を垂れ下げて頬を掻いていた。
少し困ったような顔つきに、目を見開いた。
マサルは、はぁあぁと肺にある空気、全部出しちゃうんじゃないかってくらい大きく息を吐き出して、ソファを降りた。
それからへなへな私たちの間にへたりこむ。
伸びてくる手は、私とホップの肩に回って引き寄せる。
ぽすんっとホップと一緒にマサルにもたれれば、よかったぁとふやけた声が落ちていた。
「僕、勝手なことしちゃってたら、どうしようかと」
少しだけ震えていた手に、驚いた。
ふにゃふにゃ垂れるマサルの眦は、ちょっぴり可愛い。
マサルは思い切りはいいのに、後から及び腰になる。
よかったぁとまた声をあげて私たちにくっつくマサルは、さっきまでの格好いいお兄ちゃんから傾いている。
ホップは大好き、だけど、マサルはやっぱり生まれた時から大好きで堪らない。
くふりと笑う。
ホップも小さく笑うから、マサルはきょとんと目を丸くする。
そんな姿にまた胸をきゅうきゅうさせて、私はそのまま両手を伸ばして飛びついた。
わっと驚きながらも、受け止めてくれるマサルのほっぺたに私はむにりと自分のほっぺたをくっつけた。
「何だよ」
「んふふ」
私たちを一番に大事にしてくれる兄。
そんなマサルが大好きでいっぱいの気持ちは溢れて止まらない。
私が泣きつけばいつだって、マサルは最後までそばにいてくれる。
私が笑えるようになるまで、そっと寄り添い近くを許してくれる。
そんな私たちの大好きに、自然と溶け込んだホップにだってマサルは気持ちを寄り添わせる。
そうして最後、みんなで笑えるとマサルも嬉しそうだから、なんだかとってもおかしいの。
私の世界で一番のお兄ちゃん、格好良くて賢くて思いやりに溢れてて、それでもって可愛いんだから無敵なんじゃないかと思う。
私はふにゃふにゃ眦をさげてしまいながら声を弾ませる。
「かわいい妹からかわいい兄様へ!」
この体中にある大好きを目一杯に伝えたい。
うにうにほっぺた同士を寄せる私に、僕じゃないだろと呆れるマサルがいる。
ホップはそんな私たちにむずむず体を揺らして、最後、両手を広げたのだった。
「お前らってほんとに、二人揃って可愛いぞ!」
「わわっホップ!待って」
「うぷっ!ふふっあはは!ホップ重たいよ!」
そうして上からがばっと私たちを丸ごと抱きしめようとする腕がある。
ごろりんどっしん、三人分の体幹が一気に崩れればもみくちゃに全員で床に転げ回ってきゃらきゃら笑う。
戯れ合う私たちに、すごい音したわよとお母さんが飛んでくるまであと少し。
そんな誰も知らないカウントダウンが進む、賑やかな休息日のことだった。
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