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ナガレ
2021-09-03 21:05:08
4984文字
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暴風雨/ビタースイート(ぶぜまつ)
嵐の夜に始まるぶぜまつの話。雰囲気SSなので雰囲気を感じ取ってもらえれば。
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松井と寝た。
一度目はなし崩し、二度目は意志を持って。はっきり確かめたわけではないけれど、合意の上だ。そうじゃなかったら困る。
あの日俺達を襲った突然の雷鳴と激しい雨。夕立なんてかわいらしいものでなかったあれは、集中豪雨と言うらしい。戦場以外であんなにも雨に濡れたのは初めてだった。雨宿りをしていた珈琲屋から、松井が見つけた風雨を凌げる場所までの短い距離。雨の中を走ったのは、そのわずかな時間でしかなかったのに。
文字通り嵐の夜だった。早々に当日中の帰還を諦めて宿を探す方向にしたから助かったものの、行くあてが無かったらどうなっていたことか。そう思うと少しぞっとする。
暴風雨から逃げられた事に安堵し、止みそうにない雨にげんなりしながら、カーテンを開けて窓の外を見ていた。大きな雨粒が窓を打つ様が矢嵐のように見えた。
外が一際強く光ったと思ったとほぼ同時に部屋の電気が消えて、雷鳴が轟く。突然の大きな音に驚いた松井がぎゅっと布団の端を握っていた。大丈夫かと聞くと、少し間を置いてからで大丈夫だと返ってきた。
カーテンを閉めようかと立ち上がりかけた時に、二度目の雷が落ちた。そこから先は鳴り止まない雷音と打ちつける雨音の中に消えた。
それからしばらくして、再び現世への遠征を命じられた。今回も同行者は松井のみと聞かされ、いつかの暴風雨の夜が頭を過ぎる。軽く頭を振って思考の外に追いやると、松井と共に現世に降り立った。
主のお遣いはあっさりと終わった。予定が早く終わったら好きにしていいと言われていたので、好きにさせてもらう事にした。街中をぶらぶらと歩いて、あれこれ見て回った。現世は好きだ。しかし人間が多い。
人混みに酔った松井に疲れの色が見えてきたので、夕飯でも食べてから帰ろうかと近くの店に入った。現世でよく見るファミレスだった。
各々食べたいものを選び、それだけでは足りないので一品料理も頼んだ。本丸の食事は和洋折衷だがこういう洋食を食べる機会は案外少ない。箸ではなくてスプーンやフォークを使う食事は久し振りだった。
「松井が嫌じゃなけりゃ、この後行きたい店があるんだけど」
「いいよ。付き合う」
こういう酒場もあるんだと、現世事情に詳しい愛酒刀が教えてくれた店。自分一振りで行くには少々敷居が高くて躊躇していたが、松井となら。
松井を連れて足を踏み入れたのは、バーと呼ばれる類の店だった。店の中には数組の客。光量を落とした間接照明が淡く光り、音楽が静かに流れている。松井は物珍しそうに店の中を見回していた。
店員に隅に近い並びの席を案内された。好きなものを頼めと言うと、松井は品書きに目を通したがすぐに戻してしまった。こういう店に来た事はないし、こんなハイカラな酒は飲んだ事がないからどれがいいのかわからないだという。それは俺も同じだ。なので、まずは何かおすすめを教えてくれと聞いてみた。
グラスを片手に最近の出来事を互いに話す。知っている事もあれば、知らない事もあった。本丸はいつも賑やかだから、こんなにも静かにゆっくりと時間が流れていくのは、本当に久しぶりだった。気づけば壁の時計は結構な時間を示していて、二杯目のグラスも空になっていた。
できればもう少し居たい。しかしこの辺りで店を出ないと本日中の帰還が難しくなる。そろそろ帰ろうかと言いかけたところで、松井が品書きに手を掛けた。思わずその手を上から押さえ、ちらと松井を見やる。ほんの一瞬息を飲んだ松井が、そっと品書きから手を離した。
そのまま会計をして店を出ると、道の端に寄った。主に連絡をしている隣で松井は調べものを始めた。端的に帰りが明日になる事を告げて通信を切ると、松井がここが空いていると言って電子端末の画面を見せてきた。すぐ近くにある、手頃な価格の宿。一晩過ごせるなら別にどこでもよかった。
通りを一本中に入った所にひっそりと佇む建物。受付は前と同じく薄暗くて無人だった。鍵を受け取ると館内を移動して部屋を探し、中に入る。入った部屋は広く、清潔で適温。内装に差異はあれど、おおよそはあの時と同じような質素な部屋だった。
今夜は空を裂くような稲光も、破裂するようなおどろおどろしい雷鳴も、窓を割る勢いで叩きつける雨粒も無い。ぼんやりと止まない雨を見る事も、室内の肌寒さに二の腕を擦る事も、突然の雷音に身を竦める事も無かった。
布団に包まる松井とその隣に寝転がる俺。お互い無言だった。空調の音だけが響く室内。どこかの部屋の扉が閉まる音が聞こえた。おそらくそれが引き金で、引きずり込まれて覆い被さった。ほろ苦くて甘い、チョコレートリキュールの味がした。
朝、体内時計でいつもの時間に目を覚ました。カーテンはきっちりと閉じていたが、外が明るい事は何となくわかった。あの夜はお互い背を向けて寝ていた。でも今朝は違う。向き合って一つの布団を分け合っていた。目と鼻の先には松井の顔。退室の時間にはまだ早いから、もう少し寝かせておいてやることにした。
しかし松井にも体内時計があるのか、少しすると目を覚ました。寝起きの松井はぼんやりとしていたが、俺の姿に気づくと目を丸くした。思わずくすりと笑ってしまう。松井に睨まれた。
「
……
どっかで朝飯食ってから帰るか」
その言葉に松井が頷いた。顔を洗って着替え、精算を済ませて部屋を出る。松井が今回は僕が払うと主張したので、半分だけ受け取っておいた。
この時間から開いている店はなかなか見つからなくて、少し歩いてようやく開いている店を見つけた。店の名前と品書きの文字には見覚えがある。この店
…
という松井の小さな呟きで気がついた。
ここはあの日雨宿りに入った珈琲屋と同じ名前の店だった。
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アダルティなぶぜまつに挑戦してみた結果。
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