死者のストンプ(現代版アレンジ)リプレイ@野菜卓



おまけ
ディエゴの呪文習得

 赤夢市がいかに瀬戸内海気候に属する温暖な地域とはいえ、十二月もなれば十二分で寒い。
 とはいえ、その寒気はアメリカ生まれのディエゴを家に引き篭もらせるほどのものではなく、彼は赤夢城公園の落ち葉を踏みしめながら歩いていた。
 赤夢城公園は赤夢市民の憩いの場でありため地元民の散歩やランニングなどの運動場所の定番であり、また有名な武将のゆかりの地でもあるため観光客も多く、そもそも周囲はオフィス街でもある為休憩にやってくるサラリーマンも見受けられ、平日の昼間といえど賑わいを感じさせる場所になっている。
 その中で目当ての人間を見つけるのは、ひょっとしてなかなかに骨が折れるのでは? やはり弟子の月岡凪を連れて案内させるべきだったのでは?
 などと思いながら進み続けると、ディエゴはようやく目的の人物を探しあて、ニヤリと口角を上げてその人物に近寄った。
「よぉ、おっさん。ボナートファミリー壊滅の立役者として巷で噂のヒーローのこの俺、ディエゴ・吏部豆がわざわざ会いに来てやったぜ」
 それまで茣蓙の上に腰を下ろし、目を瞑りながら般若心経を唱えていた旅の修行僧・行哲は、ディエゴに話しかけられてゆっくりと目蓋を開けた。
「拙僧に何用かな?」
「あのトランペット奏者のおっさん相手に俺の弟子月岡が唱えた呪文、お前が教えたそうじゃねぇか。治療の腕はイマイチだが、そっちはやるじゃねぇか、おっさん。今一番ホットなヒーローなこの俺に、教えておいても損はないぜ?」
……左様か。見たところ、確かに御仁は数奇な運命を辿る様に見受けられる。覚えておいても損はなかろう。伝授いたそう」
 ディエゴの顔立ちとその眼差しをじっくりと見つめた後、行哲は茣蓙から腰を上げた。
「言の葉には魂が宿る。この発音をしかと覚えられよ。【オン・アミリタ・テイ・ゼイ・カラ・ウン】」

魅了を破るを覚えよう take1!

[メイン] ディエゴ : 1d100<=38 Cthulhu : (1D100<=38) > 48 > 失敗

 呪文の習得でおいて、失敗が起こった場合、当然悪いのは教わる側である。
 少なくとも行哲は月岡への伝授を成功している以上、これは覆らない事実である。
 だが、ディエゴこれを己の否だと認めるはずがなかった。
……、おっさん、さては覚えるのが下手だな?」
……未だ修行の身ゆえ」
「全く、しっかりしてくれよな、おっさん。ほれ、もう一回頼むぜ」

魅了を破るを覚えよう take2!

[メイン] ディエゴ : 1d100<=38 Cthulhu : (1D100<=38) > 68 > 失敗

「っか〜〜〜! 全然できる気がしねぇ。おっさん、教える気あんのか?」
 この時、行哲はこのディエゴという人間にはこの手の物事への才覚がないことを痛感し始めたが、ものの一時間もしない付き合いでそれを指摘しても受け入れるはずがないことまで理解していた。
 なんでも釈迦が最初に説法をした相手は動物たちだったという。
 それに比べて、同じ言葉が通じる人間相手に挫折して、放り投げたいなど思ってしまっては我が身を仏門の恥と断じざるを得ない。
 道のりがどれほど遠かろうが、諦めてはならぬものがあるのだ。

[メイン] ディエゴ : 1d100<=38 Cthulhu : (1D100<=38) > 23 > 失敗

「【オン・アミリタ・テイ・ゼイ・カラ・ウン】おっ、この発音だな!? さすが俺、天才。ふっ、自分の才能が恐ろしいぜ。それじゃあ、あばよ、おっさん」
 そう言って果てのない自己肯定力を見せつけた男は、そのまま行哲の前を去っていった。
 あの男に比べたら、嵐とて静かだろう。
「ふっ、こんなにも、心を乱すとは。やはりまだまだ修行不足だな。折角赤夢市に来たのだ。久しぶりに父上に顔を見せてしごいていただくか……
 行哲は茣蓙を巻いて脇に持ちあげ、三経寺の方へと足を向けた。