柔らかな、こそばゆいような感じがして目が覚める。まだ薄暗い寝室に二人分の掛け布団の膨らみ。自分よりも朝の早いアカネが体をすり寄せてきたのだと知って、ブラックはその背中に手を回した。
「……あったかい」
裸のまま眠ってしまったせいか少し冷えているアカネの肩を抱くと、小さな囁きが耳に届いた。ささやかな息づかいが静かな部屋に響いて、この時間をいっそう満足なものに感じさせる。
「悪魔には体温って無いかと思ってた」
不思議そうに言われて思わず笑った。あまりにもいとけないような口ぶりだった。
「抱きしめた時に冷たいと嫌じゃないですか?」
「コントロールできるの」
「ええ、まあ」
不意にアカネの頬が桃色に染まる。歳より子供めいていた表情が、急に女の子らしくなったのを興味深く眺めていると、言おうか言うまいかと迷った気配の後でこんな言葉を吹き込まれた。
「……じゃあ、今のこの体温は、アタシを抱くための温度なんだね」
びっくりさせられる。それはそうだし、白状したのも自分なのだが。
「そう言うアナタの体温は、調節機能もないくせになぜオレちゃんにぴったりなんです?」
鼓動が落ち着かなくなるのを誤魔化すように、意地の悪い声で問いかける。すぐに朱を通り越して真っ赤になった顔が肩に突っ伏してきた。効果は充分だったようで、アカネは小さく震えたまま顔を上げずにいる。
二人分の体温があるのだから寒いわけではないだろう。
「もう一度寝ましょう、まだ夜明け前ですよ」
「眠れないよぉ…」
「寝てくれないとオレちゃん困るんですけどね」
心拍数と共に上がろうとする体の奥からの熱を押し留め、どうにか体温を適切に保つ。その温もりを肌に宿して、もう一度相手を包み込んだ。
心なしか先刻までより高いアカネの温度は、それでもやはり心地よく腕の中に収まるのだった。
2023/04/11
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