あけみ
2020-02-07 20:58:07
7998文字
Public SPN(小説)
 

【C/D】君から受け取ったものは今でも僕の生きる術②

S9のC/Dで、2014キャスが入れ替わりにこっちに来てしまう話。

 翌日、別の世界から来たカスティエルを元の世界に戻すためディーンとサム、カスティエルはバンカーにある資料を漁っていた。テーブルには賢人が集めた様々な歴史書からまじないの本、悪魔の紋章から天使の本、使えそうな資料を出し揃えた。おかげで本の山ができている。ディーンとサムはテーブルを挟んで向かい合うように座り、カスティエルは少し離れたテーブルの上に資料を広げまじまじと魅入っていた。一冊一冊に目を通しながら、異次元の扉を開くような一文がないか確かめるのは途方もない作業だった。部屋に引き籠り悪魔の石版の解読をしているケビンにもその筋のものが書かれていないか調べろと、言ったものの良い返事はない。
 そして、ディーンはそろそろ飽きてきた。さきほど思いついた提案をサムに早々と却下されたことがまだ尾を引いていた。以前、ディーンとサムの祖父ヘンリー・ウィンチェスターがやってきた方法でカスティエルを戻せば良いのではないかと言ったのだ。だが、サムは「あれは同じ時系列の世界じゃないと使えない」と頭を抱えた。ディーンは首を傾げサムの言葉の意味合いが理解できずにいたが、ここにいるカスティエルは別の世界軸から来たカスティエルで、タイムスリップで元の時間へ戻すまじないでは恐らく効力はないと言う。
「カスティエルがいた世界では、僕はルシファーの器になっているんだ。もうこっちとは世界軸が違う。つまり、パラレルワールド、別アースみたいなもので」
「はぁ……やけに詳しいな。オタクめ」
 ディーンの呆れた言葉にサムは少しムッとする。そんなサムの顔を見やってディーンはニヤリと笑んだ。弟の少し拗ねたような表情を見ると無償にホッとする。試練で受けたダメージがまだ残っているサムの体を案じているからこそだ。ふと、視線を背けカスティエルの方へと見やった。先程からだんまりで本を広げ一心不乱に読みふけっている。
「そっちはどうだ? キャス」
 声をかければ、カスティエルは弾かれたように顔を上げた。まるで夢から覚めたような表情に、ディーンは訝しんだ。
「おい、こっちにきてまでジャンキーか?」
「え? いや、大丈夫だ。今は素面だよ」
 ヘラッと笑うカスティエルに溜息をつく。彼のズボンのポケットに興奮剤のカプセルケースが入っているのを知っているからだ。ただ、先ほどの言葉通りこちらの世界に来てからドラッグを止めているのは本当のようだった。
「ここにある資料はどれも素晴らしいよ。元の世界に戻ったら使えそうだ……あーでも、やっぱり無理だ。材料がもう手に入らないなぁ」
 カスティエルはページをめくりながら呟いた。そのページに目を向けると、悪魔の痕跡を追うまじないや探し物を見つけるまじないの項目だった。ディーンは途端に眉を寄せる。あの世界のディーンが必死に探し回っていた物が脳裏に過った。コルトだ。彼らはまだ見つけられていないのだ。
「元の世界に戻る方法が見つかったら、まじないの本をいくつか持って行けば良いよ」
 サムは静かにそう言葉を零したが、カスティエルは目を細め微笑んでから首を振る。
「ありがとう。けど、さっきも言ったように材料が手に入らないんだ。僕らの世界では物資が不足していてね。それに、僕がまじないなんかしだしたらリーダーにますます嫌味を言われちゃうよ」
 はははっ、と笑うカスティエルにディーンはあちら側にいる自身のことを思い出す。ジャンキーなセックスの教祖がまじないにハマれば、確かに己は良い顔をしない。
 納得するディーンとカスティエルの話しぶりに、サムは興味が湧いたのか「ねぇ、そっちの世界のディーンってどんな感じなの?」と問う。ディーンは広げていた本を閉じてフン、と息を吐いた。
「冷徹で最低な野郎だ」
 そう言って棚にあった酒瓶を取り出しグラスに注ぐ。隣にいたカスティエルも目配せさせ、アルコールをせがんだ。二つのグラスに酒を注ぎ一つをカスティエルに渡した。
「君にとっては最低でも僕にはどの世界でもディーンに変わりないよ。確かに感情を全て箱に押し詰めて蓋をしたけど、今の君と対して違いはない」
 受け取った酒に気を良くしていっきに口に含んだカスティエルはニッコリ微笑みながらディーンを見つめる。
「はぁ!? それは俺の本質は冷徹で最低な野郎って言いたいのか?」
「違う、違う。なんでそう捉えるのかなぁ。そういうところなんだよ」
 空になったグラスをテーブルに置きカスティエルは頬杖をついてディーンを見つめた。
「俺としては、お前の変貌ぶりの方が戸惑うし変わりすぎなんだよ!」
 もう一杯、とグラスをディーンに押しだすカスティエルに側でサムも信じられないものを見ているかのような表情になる。
「確かに。キャス、大丈夫かな?」
 今朝、キッチンで出くわしたカスティエルを見たサムは、普段の雰囲気の違いに違和感を覚えながらも彼がバンカーに戻って来たことに素直に喜び同時にホッとしたと言葉を漏らしていた。後で事情を聞いたサムは、ショックを隠し切れず落ち着かない口振りで何度も状況を確認したのだ。このカスティエルが元いた世界はサムがルシファーの器になることを承諾した世界だったからだ。これが単純なタイムスリップならば話はまだ簡単だ。もうこちら側からの時系列と外れてしまった全く別物の世界のことは、神の力を借りなければどうしようもない。更にディーンとサムが頭を悩ましたのは、こちらの世界にいたカスティエルが向こう側の世界に入れ替わりで行ってしまったこと。
「僕は大丈夫だよ?」
 先程のサムの言葉に返事をしたカスティエルに、ディーンはキッと睨んだ。
「お前のことじゃねぇよ!」
 このカスティエルを元の世界に返すこともそうだが、こちら側のカスティエルを呼び戻すことの方が難しそうだ。
 しかし、カスティエルは楽観的だった。
「たぶん、大丈夫だよ。リーダーが面倒を見てくれてる。僕が人間になりたての頃、わりと優しかったし」
 カスティエルはニヤリと笑んでディーンを見た。サムもまた同じように顔を向けて「へぇ、」と意味深に微笑んだ。二人の視線に耐えられなくて顔を背けたディーンは、それでも向こう側に行ってしまったカスティエルのことを心配していた。己はクローツが蔓延している世界を目の辺りにしている。側にいるのがあの世界の自分だったとしても、カスティエルは恩寵を全て奪われて人間になってまだ日が浅い。
「あっち側のことは心配いらない。異次元の扉を開くにしたって、あっち側ではどうにもできない。まじないも呪文も材料もこっちの方が知識は豊富だし手っ取り早い。リーダーも気付いてこの件は僕らに任せてるだろう」
 不安を募らせるディーンの表情を見たカスティエルは、にやついた笑みを消し諭すように真面目に言い放った。
……随分と、向こうの俺を信頼してるんだな」
「そりゃあ、そうさ。ずっと君のそばにいたからね」
 カスティエルは微笑んだ。それはいつものヘラヘラした笑いではなく、大切な者を想う微笑だった。彼のそんな表情を見ると、ディーンは苦渋に顔を顰める。彼らの世界が最後どうなるのか知っているからだ。コルトを必死に探しているようだが、コルトではルシファーは殺せないしカスティエルは罠と分かっている戦地に送り込まれ待ち構えていたクローツの群れに襲われる。そして、彼が信頼しているという向こう側のディーンはサムの姿を借りたルシファーに首を折られて死ぬのだ。
「ディーン?」
 突然黙り込んだディーンにサムが声をかける。顔を上げ怪訝に眉を寄せるサムを見てホッとする。ここはまだあの世界と比べれば救われた世界だ。天使と悪魔のゴタゴタが続いているが、それでもまだ希望がある。ディーンはカスティエルに視線を向けたがすぐに背を向けた。
 己はザカリアに彼がいた2014年の世界に飛ばされたのは、まだやり直せる筋書があったからだ。悲惨な世界を見て、間違いの元を正し方向転換できた。だったら、ここに来たカスティエルは何を見て元の世界に帰るのだろう。もう既に本筋とは違う世界を歩んでいるとしたら――ディーンは顔を上げ、カスティエルを見つめる。
「サムの言うことも一理ある。向こうで使えそうなまじないがあるなら、材料ごと持って行けよ」
 真摯なディーンの瞳にカスティエルはフッと笑んだがすぐに視線を伏せた。
「いまさらどうしたって現状は好転しないさ。コルト探しには使えそうだけど」
「コルトなんて無意味だ」
 きっぱりと言い切ったディーンにサムが目を見張る。
「ディーン!」
「なんだよ、本当のことだ。もう、こっちの時系列とは外れてるんだろ。なら、向こうの筋を変えても互いの世界に影響はないはずだ」
 向こう側のディーンが必死に探しているコルトは、ルシファーには無意味だ。そう言い放った後、ディーンは眉を寄せて首を振る。コルトがルシファーを殺す武器だとしても、己は引き金を引くだろうか。コルトを手に全てを終わらせると言い放ったディーンを、己は見ている。サムの姿をしたルシファーを前に引き金を引いたかどうかは分からないが、ディーンはそれでも引き金は引けなかっただろうと思う。
「そんなの関係ないよ」
 カスティエルは口元に笑みを浮かべた。
「僕もリーダーも本気でルシファーを倒す気はない。いや、リーダーは……君はけじめを付けるためにコルトを探してるみたいだけど。別にコルトに拘っているわけじゃない。なんでも良い。大天使を殺せる剣でもなんでも。彼なりの頑な想いがある。分かるだろ?」
 「ディーン」と、カスティエルは囁いた。だから、救いなんていらない。とカスティエルは言葉にしなかったが、眼差しがそう語っていた。
「だけど、キャス、」
 サムが立ち上がりそばに寄ろうとしたが、カスティエルが片手を上げそれを静止させる。
「やめてくれ。頼む」
 口元に張り付けていた笑みは消え、青い瞳に一瞬だが怒気にも似た微かな感情をチラつかせる。サムはピタリと足を止めた。
「ここに来てから思い知らされる。穏やかな日があって、そこに君たちがごく普通の狩りをして、調べものをして、何気ない会話を交わす」
 ディーンとサムは互いに顔を見合わせた。そんな二人の仕草にカスティエルは目を細め遠くを見つめるように笑った。
「こことは違う道筋を選んだのは僕だ。リーダーはずっと自分を責めていたけど、あのエンドゲームは僕が引き当てたんだよ」
 カスティエルは苦痛に歪めた表情で思いのたけを絞り出す。ディーンとサムは彼が何を指して断言しているのか分からず黙る。口を挟める雰囲気ではなかった。
 ジッと佇む二人を見て、カスティエルは自嘲気味に笑んだ。そうして、ゆっくりとディーンに視線を向ける。眩しそうに見つめながら。
「僕は君の隣に居座ってずっと酔いしれていた。君を独占するのが居心地良かった。ディーンが運転するインパラの助手席に座って、狩りを手伝って、その頃はまだ恩寵はあったから充分に役に立てたよ。天使がすべき事柄もあったが、ディーンといる方が満ち足りた」
 言葉を切るカスティエルは、今度はそっとサムに顔を向ける。金縛りにあったようにサムは動けずにいた。カスティエルの告白には、感情を覚えたての子どもが必死にもがき、せがんで溺れながらもしがみ付く嵐のような情緒があったからだ。
「本当は君たち兄弟の仲を取り持つべきだった。まだ恩寵があった頃、サムのところに飛んで行ってディーンと無理やりにでも引き合わせるべきだった」
 カスティエルは視線を伏せる。激しい感情の渦は途端に萎れ、焦燥と悲哀に表情を変えた。
「サムがいない世界なんてディーンには無意味だ。私は思い上がりも甚だしく愚かだった。だからもう、救おうとするな。私は戻るべきところへ行きこの罪を抱えたままリーダーのために朽ち果てる」
 サムが「キャス、」と声をかけようと近寄るのをディーンは止めた。今、何かサムが言葉にすればカスティエルは二度とこちらに顔を向けない。ディーンは歩みを進めた。顔を伏せるカスティエルに言い放つ。
「自惚れるな。お前ひとりがあの結末を引き寄せたと思ってるのか。お前も俺もサムも選んだ結果だ。それに、大方俺の選択ミスだ。今、お前がいるこの世界を見れば明らかだろ」
 ディーンが終末の世界から戻った時、サムと離れるべきではないと瞬時に判断した。だからすぐに連絡を取ったのだ。きっとあそこが分岐点だ。ディーンの行動ひとつで道筋が変わった。だから、カスティエルが後悔を嘆く必要はない。己の行動ひとつでまだ運命が変われるのなら、カスティエルがここに来た理由が繋がる。元の世界に戻った時、彼の意志が変わったならまだ足掻く力添えを与えられる。
 カスティエルがふと、顔を上げた。
……この話しは何度も君としたけど、いつも同じ結論で君が締めくくる」
 零すカスティエルは先程より落ち着いた表情になった。
「なら、もうごちゃごちゃと考えるなよ」
 ディーンは軽くカスティエルの肩を叩く。カスティエルが微笑んだのが見えたがわざと視線を外す。その仕草が照れ隠しだと知っている彼はにやけた笑みを浮かべたまま。いつまでもにやつくカスティエルに何か言ってやろうと顔を向けたが、言葉を発するより先にサムが神妙な顔つきで遮る。
「キャスがここに来たのは偶然とは思えない」
 そう言って、ラップトップを開いていつの間に調べたのかここ最近の行方不明者のニュース記事を見せた。いくつかあるが、どれもここ数週間に起きている。ディーンは記事をよく読もうとサムのラップトップを受け取りスクロールしていく。気になることはもう一つ、行方不明者が多発した場所はカスティエルが現れたモーテル付近で起きていることだ。だが、ディーンは記事を読み進めていくうちに事件の解決に締めくくられた内容に眉を寄せる。
「行方不明者だった奴らは数日後に戻ってる」
 ディーンはサムを見やった。無事に戻ったなら問題ないと、言いたかったがサムは違ったようだ。
「戻って来た人たちは皆、口を揃えてこう言ってるんだ『世界の終末を見た』」
 ディーンはハッとするように目を見張る。カスティエルは何か言い淀むように口元を押えている。
「そこら一帯で何らかの扉が開いている?」
 ボソリと呟いたカスティエルに、サムは頷いた。
「何の扉だ? 誰が開いたんだ?」
 ディーンが言うとサムもカスティエルも首を振る。現場を調べ、一時的に行方不明になっていた者に話を聞くべきだな、とディーンはラップトップをサムに返した。それと同時に、部屋に引き籠っていたケビンが目元に隈を張り付けたままノソノソと入ってきた。手には悪魔の石版を抱えている様子からか、徹夜で解読にふけっていたようだ。
「おい、少しは寝ろよ」
 ディーンは声をかけると、ケビンはムスッとしながらこちらを睨んだ。石版の解読を急かしたのはそっちだろ、と言いたげで口を噤むしかない。
……さっきの話、興味深いことに悪魔の石版にも似たようなことが書いてあった」
 テーブルに石版を置き、文字をなぞりながらケビンが言う。
「悪魔たちは別の扉を開けようとしていたみたいだ」
 ケビンの言葉にディーンが目を細める。
「なら、悪魔が別次元の扉を開けたってことか? 何のために?」
「違うよ。悪魔にそんな力はない。開けさせようとしたんだ」
 ケビンは顔を上げた。
「次元の扉を開ける奴がいるのか?」
 ディーンの疑問にケビンは「分からない」と答える。石版にはそこまで記されていない。
「なら、扉を開ける者を調べよう。似たような伝承を資料で辿れば」
 サムが言うように正当な順序を辿れば行きつくだろうが、それでは時間がかかる。ディーンは手っ取り早く悪魔に聞こうと意を決す。
「ディーン……あいつは信用できない」
 サムが顔を歪めた。隣にいたカスティエルは興味深げに見つめる。
「ここに悪魔を呼び出すのか?」
 カスティエルも不可解だというような顔つきでディーンを見やった。
「違う。ここにもう捕えている。奴に聞く」
……信用できるのか?」
「いや、全く。だが、そこらへんの悪魔よりは物知りだ。奴なら必ず何か知っている」
 ディーンはそう言って促すようにクラウリーを捕えている牢獄部屋へ向かう。カスティエルは後に続き、背後のサムとケビンは不安そうに溜息をついた。
 埃っぽい資料の棚がズラリと並び内側に開く棚をスライドしていけば、床には大きな悪魔封じと椅子に座ったまま頑丈に鎖で繋がれたクラウリーが退屈そうにしていた。ディーン、カスティエル、サム、ケビンと勢ぞろいした面々を見つめ、クラウリーは興味が惹かれたのかニヤリと笑んだ。「おやおや、お揃いで」と、鼻歌を口ずさむように零したそれにディーンは辟易とし、こちらの用件を言おうとしたが側にいたカスティエルが大股でクラウリーに近付き悪魔の顔を拳で殴ったのが先だった。
「キャス!?」
 椅子に座ったままのクラウリーがカスティエルの拳によろけると今度は胸倉を掴みあげ再び腕を振るうカスティエルの行動にディーンが駆け寄る。カスティエルをクラウリーから引き剥がし「落ち着け! どうした!」と声をあげた。怒りなど微塵に見せないドラッグ漬けの笑みで感情が読み取れない彼から迸る怒気が伝わり、ディーンはカスティエルの顔を覗きこんだ。
「クラウリー……僕らを騙しディーンを唆した悪魔。あいつのせいで僕は足を折られ一ヶ月の間、ディーンから離された」
 彼の世界で何があったかは分からないが、カスティエルの怒りにディーンは驚き慌てて押し戻した。
「落ち着け、ここにいる奴と混合するな」
「だが、本質は同じだ。ディーン……こいつは信用できない」
 カスティエルはどうにか怒りを押し止めディーンを見つめる。そんな二人の様子を眺めていたクラウリーは口から血に混じった唾を吐くと、クッと喉を震わせた。
「お前、どうした? いつものカスティエルじゃないな?」
 また頭がイカレたか? と揶揄った。ディーンは黙れとクラウリーを睨む。サムが一歩前に出て代わりにクラウリーと対峙する。
「次元の扉を開ける者の話がしたい」
 サムの言葉にピクリとクラウリーが眉を動かしたが、すぐに興味を失ったように視線を外す。
「なぜ俺に聞く」
「昔、悪魔たちが必死に開けようとしていたから」
 今度はケビンが言葉を連ねる。
「それを聞いてどうする? 眉唾な話だ」
 クラウリーはフン、と鼻で笑う。だが、言葉を推し測るようなサムとケビンを見つめるうちにクラウリーが目を光らせた。その視線がカスティエルへ移った時、何か違和感を覚えるような素振りを見せる。足元から徐々に上へと視線を辿り観察するようにカスティエルを見つめた。
……まさか、お前か。こっちのカスティエルじゃないな」
 実に興味深い、と小さく呟くクラウリーにディーンが前へ踏み出る。
「次元の扉を開ける奴を知っているのか」
 ディーンの物言いにクラウリーは笑った。
「さっきも言ったが噂でしか聞いていない。だが、そのカスティエルが別の次元から来たというのなら」
 本物かもな、とカスティエルをじっくり見つめながらクラウリーが言った。
「だとしても、俺様が貴様らに教えて何の得が?」
 取引でなければ話には乗らない。
「詳しい話を教えたら自由にしてやる」
 ディーンがきっぱりと言い放つと、隣にいたカスティエルが驚きに目を丸めた。


君から受け取ったものは今でも僕の生きる術③・④



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