あけみ
2018-12-04 21:14:49
6456文字
Public SPN(小説)
 

【C/D】そして廻る天の旅路①

時系列S4。だらだらと続きながらS11迄の二人を書く予定。今の所まだブロマンス。

「やあ、ディーン」

 幼い赤子を抱きかかえる4歳の子どもは、降ってきた言葉にゆっくりと顔を上げる。
 カスティエルは首を傾げ近付いた。どんなに時間を遡ろうと、ディーンの魂を知っている己はすぐに彼だと分かった。だが、ここは既に黄色い目の悪魔によって母メアリーを亡くし家を焼かれ家族3人が路頭に迷い父ジョンは復讐に執念を燃やし始めた時間だ。モーテル住まいを始めてまだ日が浅い。部屋にはディーンと赤子のサムしかいない。ジョンは二人を置いてどこかへ出かけたようだったが、そんなに遠くには行っていない。子ども二人を残して留守を頼むにはまだ心もとないはずだ。きっとすぐに帰ってくるだろう。
 ディーンはというと大きな瞳をさらに丸めジッと動かずにいる。恐怖を感じているからなのか、それともこちらを警戒し抱える弟を守っているのか。どちらにせよ、カスティエルの姿が見えているのは事実だ。姿を現すつもりはなかったが声をかけずにはいられなかった。だから、彼には見えないかたちで名を呼んだ。
「あなたはだれ?」
 姿は見えないはずなのに幼い4歳のディーンは、はっきりと見えているかのようだった。ディーン、と呼んだ声に反応を示す。ジミーを器にしているカスティエルの握りしめた拳がじくりと痛む。徐々に鼓動が騒ぎ始める。緊張しているのかもしれない。過去に干渉するのは認められていない紛れもなく重罪だ。だが、これ以上の罪を重ねるのは今更だと、もう一人の自分が答える。
 カスティエルは膝を付き、ディーンの目線にあわせた。
「私は天使だ」
「てんし? ……マムがいってた、ぼくを見守ってくれる天使?」
「そうだ」
 幼い彼にあの時と同じように翼を広げ影を映し出す。部屋いっぱいに広がるカスティエルの翼の影に、ディーンは何度も目を瞬きさせた。やがて、部屋の扉が開きジョンが帰ってくる。カスティエルは翼を仕舞った。
「ディーン?」
 ジョンは大きな袋を持ったまま部屋に入るとキッチンのテーブルに置いた。ディーンの名を呼んだジョンは、振り向かないディーンに対して眉根を寄せる。ジョンには見えないがカスティエルを見つめたままディーンは動かずにいた。
「どうした? ディーン……
 しゃがみ込んだジョンはディーンの正面へ顔を向けると肩を抱いた。
「ダッド、天使がいる。天使がぼくらを守ってくれるよ」
……ディーン」
 ショック状態から自身を守るための空想の世界にいると判断したのだろう。ジョンは苦痛に顔を歪め強くディーンを抱きしめる。父親の現実に引き戻そうとする抱擁の中、ディーンの視線はカスティエルに向けられていた。
 カスティエルは静かに頷く。
「ああ、君のそばにいよう」
 ディーンは目を細めて微笑んだ。


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