【可惜夜廻】参

『「すみません、よくわかりません。」』現行未通過×
※夜廻パロ




気が付けば、獣はソウゲツの前から去っている。震える手でバラバラにされたカンジの亡骸に触れるが、少しの温度も感じない。喉が裂け血を吐くほどに叫んだソウゲツは、虚ろな瞳から涙を溢れさせながらカンジの名を呼ぶ。返事はない。そうしてようやく、その正体を掴む。


……にん、ぎょう?」


そのカンジから、血も内臓は出ていない。変わりのように散らばるのは、木片と紙片。先程まで見慣れた愛しい金髪だった筈なのに、今はただの木偶人形でしかなくなっている。
ついに自分の頭がおかしくなったのかと混乱していれば、視界でキラリと何かが光るのが見える。顔を動かせば、窓の向こうで流星が群れをなして落ちている。流れ星を見てしまったと焦る前に、声が頭に響く。


『なぁなぁソージ! ここ、めっちゃ綺麗に星見えるやろ!』


唐突に、忘れていた記憶が蘇っている。いや、これは大切で取るに足りない思い出の一つである。多くの過去に埋もれ、いつしか深くに埋まっていただけの、ソウゲツの一等大事な宝物。


『知っとる? 町の外やと、流れ星は願い事を叶えてくれるんやって!』


子供の頃、ソウゲツとカンジは秘密の場所を共有していた。流れ星を災いとする町では忌まれる天体観測、それを行える山奥の崖。木々が邪魔をせず、寝転べば一面の星空が楽しめるとっておきの禁足地。


『やからさ! 今のうちに願い事考えこうや!』


────ああ、自分はあの時、どんな願い事を口にしたんだったか。