【凶星を穿つ】6

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※MHパロ1nd.


矢を構えたまま、バルファルクの翼撃を滑り込んで躱す。そのまま至近距離で矢を放つが、渾身ではない攻撃は鱗に弾かれた。小さく舌打ちをして、アサヒは体制を整えようとする。が、その前に龍気の爆撃が降り注いだ。


「が、ぁっ……!!」


身体を無理に捻って致命傷は避けたが、アサヒの左足が文字通り焼け付く激痛に襲われる。武具のおかげで爛れるまでには至らないが、それでも痛みは確実にハンターの体力を削っていった。


「モモ!!」

「来るな!! ソウゲツに集中しろ!!」


アサヒは飛び出そうとするカンジを声だけで止め、バルファルクの連続翼撃を後ろに飛び退くことで凌ぐ。カンジはその迫力に息を呑み、バルファルクの意識を動かさないようにソウゲツの治療を急いだ。回復薬の蓋に針で穴を開け僅かに染み込ませた布で、ソウゲツの流れ続ける血を抑える。木の枝を骨折した脚に合わせ、包帯を巻き付け固定した。


「(これでいいのか? また逃げるのか?)」


カンジは頭の中で、自問自答がぐるぐると繰り返される。目の前の光景が、古い射影機のようにブレた。
それは、あの忌々しい恐怖の記憶。海に飛び込んだ否、共にキャラバンに乗っていたハンターに海へ逃された過去。冷たい水に沈む恐怖より、その水が赤く染まっていることが恐ろしい。あの暴虐を尽くした悍ましいモンスターから逃げたように、また自分は誰かを見捨てるのか。また誰かに助けられ、自分だけが生き延びるのか。そしてまた、それを繰り返して生きていくのか。


「そんなこと、できるわけないやろっっ!!!!」


ほとんど無意識にカンジは絶叫する。ハンマーを担ぎ、ソウゲツを優しく素早く横たわらせて立ち上がった。アサヒとバルファルクが振り向くより前に、カンジは驚異的な速度でハンマーを古龍の頭に叩きつける。爆裂にも似た打撃で、彗星は強制的に意識を断たれてグラついた。


「カン、ジ!?」

「揃いも揃って皆オレのこと守りよって!! だったらオレにも考えがあるんやからな!! どいつもこいつもよー聞けよ!!」


足の痛みで竦んでいたアサヒの前に、カンジは堂々と立つ。背中をアサヒに向けて、ハンマーを騎士のように掲げた。硬直すしたバルファルクに、脚を引きずるアサヒに、意識の無いソウゲツに、そして自分自身にカンジは宣言する。


「皆がオレを守るなら、オレは皆を守る!! 皆がオレに寄越した愛を、倍にして寄越したる!!
来い凶星!! オマエの厄災なんか、オレが跳ね返したるわ!!」


明らかな宣戦布告に、言葉は理解できないが意味は理解したバルファルクが咆えた。スタンから立ち直ってすぐ、ハンマーを構えたカンジを噛みちぎろうと牙を剥く。




「────よくぞ叫んだ!!!!」




斬舞。そうとしか例えようのない剣の乱撃が、突如バルファルクの側面を襲った。噛みつかれることを予測していたカンジは、あまりにも突然過ぎる銀髪の乱入者に呆然とする。バルファルクは派手に倒れ、起き上がるより先にまた別の乱入者が大剣を振り下ろした。茶髪の男は大剣を回し、何度も薙ぎ払う。銀髪の男も双剣を回し、大剣のスキを埋めるように踊った。

ぽん。誰かが労るように、カンジの背中を叩く。この優しさを、頼もしさを、カンジは知っていた。男はカンジを通り過ぎ、膝をついていたアサヒに手を伸ばす。一度大きく笑って、アサヒはその手を握り立った。男はふらつくアサヒを支え、カンジの側に寄る。


「ふふ、やっぱり来てくれたね」

「ああ。信じてくれてありがとう、アサヒ。
ヒーローは遅れても、必ずやってくるからな!」


……ヒロはこの場においては、二人にとって何よりも『ヒーロー』だった。