【凶星を穿つ】2

一ページ目必読
※MHパロ1nd.


『オオアラシ』対策隊、本部。山を削って竜骨と鉱物で作られた、観測所や研究所の役割も果たしている高く広い建築物。そのほぼ中央にある広場に今、多くのハンターが集まっている。『オオアラシ』対策調査団にギルドから選抜された、上位ハンターたちだ。G級ハンターも招集されたが、この村にG級ハンターは二人しかいない。それほどまでにG級ハンターとは希少であり、異質な存在なのだった。


「やぁ、カンジ。ソウゲツとは仲直りできた?」


頬を膨らませているカンジは、歩み寄るアサヒを見てホッと息を吐く。気を張り詰めていたのだろうことが容易に察せて、アサヒはそのわかりやすさに心配の念を抱いた。が、指摘しても本人にはどうにもできないので黙っておく。


……アレから会うてない」

「あーソウゲツも同じ部隊に入る通知は受け取ってるよね」

……うん」

「多少は気まずいだろうけど、気を抜いちゃいけないよ。先陣してる偵察部隊が帰ったら、ボクらも狩場に出るんだから」


落ち着かせる目的で、アサヒはカンジの隣に立ちしばらく雑談した。周囲は珍しいG級ハンターに視線をやっているが、声をかけることはない。G級ハンターとは憧れの的であるのと同時に、畏怖される存在でもあるからだ。


「カンジ」

「!」


立ち話も途切れ始めた頃に、二人の背後から声が投げられる。振り返ったそこには二人の予想通り、ソウゲツが立っていた。


「ソウゲツ。その、こないだは悪かったわ。カッとなって、変なこと言うてもーた」

……いや、オレも冷静じゃなかった。この件が終わったら、また話をしよう」


おや、とアサヒは意外そうに目を丸くする。カンジの意志を尊重しつつ自分の意志を通そうとするのは、彼にしては珍しいことだ。ヒロとの対話で何かを得たのだろうかと、アサヒは関心する。


…………なぁ、ソウゲツ。オレ


カンジが何かを口にようとした、その時。遠くでざわめきが起きていることに、アサヒは気付く。


「急患だ!! 医務室までの道を広げろ!!」


血気迫る声が、広場に響いた。何事かとその場の全員が見れば、明らかに瀕死のハンター二人を担いだヒロが立っている。


「ヒーロー!?」「ヒロ!」「……!」
 

ヒロはぜいぜいと息を切らせて、担いだ二人を医務室に運ぼうとしていた。しかしヒロ本人も限界が近いのだろうか、一歩踏み出して崩れ落ちかける。それを側にいたハンターが支え、他ハンターは医務室から道具を取りに出た。担がれた二人の内片方は、悪夢にうなされた子供のようにうわ言を繰り返している。


「うぅ……彗星が赤い彗星が、突然……ゲホゲホッ!」

「バカ、今は喋るな! 生きることだけ考えろ! こっちは片腕がぶっ飛ばされてて意識もほぼ無い状態だ、早く医者と錬金術師を!」

「担架持ってきました! 患者はこちらで運びますので、報告を優先してください!」

分かった、二人を頼む!」


一気に騒がしくなった広場の間を、担架に乗せられた二人のハンターが通り過ぎる。見送る暇もなく、ヒロは近場のギルド受付に向かった。


「対策部隊リーダーは今どこに」


彼は何とか歩けてはいるものの、明らかに重傷である。右腕はだらりと下がったまま動かないし、顔の右半分は血と剥がれた皮で無惨なことになっていた。それでも眼は光を失わず、決して揺らがぬ意志を持っている。


「リーダーは奥の会議場で

「ここにいる」


案内しようとした受付の後ろから、対策部隊の長を務めている男が現れた。男はヒロの怪我に一瞬苦しげな顔をしたが、すぐに冷静さを取り戻し威厳あるリーダーに戻る。


「報告を」

「東の山二つ超えた先の古代林。ジンオウガ通常個体との交戦中に、古龍に襲撃されました。ジンオウガは撤退、偵察部隊と支援に来たハンターで対応しましたが壊滅し……偵察部隊のハンターが二人、捕食されました。古龍は通常個体と差異があったため、変異体の可能性が極めて高いと思われます」

「変異体だと? 古龍の名は何だ」


一拍おいて、ヒロはその名を告げた。悔しそうに、それはもうとても悔しそうに名を口にする。


「バルファルク。奇しき赫耀のバルファルクです」

「「!!」」


古龍、バルファルク。それも変異体奇しき赫耀のバルファルクと呼ばれる、最重要危険モンスターとして纏められるモンスターの一種だと言った。
バルファルクは、数千年の周期で人々の前に姿を見せる赤い彗星と呼ばれている。その飛行速度は音を追い越し、加えて体内器官で大気を凶悪な龍気へ変換するのだ。溢れた龍気は翼撃や突進を致命的に破壊的なものへ変え、龍気だけを発射しハンターや他モンスターを蒸発させる。
そんな通常個体でも危険だというのに、奇しき赫耀のバルファルクは更に凶暴性と危険度が増しているのだ。天彗龍、絶望と災厄の化身、銀翼の凶星。呼び名は様々だが、どれも凶兆であることに変わりはない。


「ギルドに所属するハンターを緊急招集。ギルドマスター、それと近隣のハンターにも通達を。マスターには『絶望の星が現れた』とだけでいい、それで向こうは把握するだろう」

「は、はい!」

「観測所にも情報を通達。バルファルクを発見次第、現G級ハンターを主軸にした撃退あるいは狩猟を開始。絶対に村には近付かせるな!」


リーダーの指示を合図に、ハンターたちは行動を始めた。ヒロは医務室へ連れて行かれ、カンジはその補佐に当たる。作戦の要であるG級ハンターのアサヒとソウゲツは、詳しい説明を受けるためリーダーの後に続いた。
そうなってもなお、ソウゲツはカンジの言葉の続きを気にしている。ほんの少し、狩猟には支障がない程度ではあった。しかしそれは確実に、彼の心を軋ませている。唯一見抜いたアサヒは、修羅場になることを確信し頭を押さえた。