しゅう as 猫田しゅうぞう
2021-08-22 12:10:27
685文字
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帰郷

そのうち前後も出せるといいですね

足が沈むという感覚は心地のいいものではありませんでした。一歩ごとに砂で爪先が隠れる沈む砂地をどうにか抜け、緑を踏み、土を踏み、それから煉瓦敷きの道に辿り着く頃にはすっかり忘れてしまうようなささやかな不快感に過ぎませんでしたが。
そうして歩いて、歩いて、歩いて――とうとう辿り着いた城下町は賑わう街でした。紛れこむのには最適です。かつてを知る身としては、変わっていないようですっかり変わった町並みを散策するのは不思議な気分でした。
かつても賑やかではありました。けれどなんだか違うのです。治める主によって変わるものなのか、それとも時代の流れであるのかは判断できませんが、しかしその変化は興味深くもありました。
それからわざわざ正門をくぐらなかったのは別に隠れたり紛れたりしたかったからではありませんでした。いたずら心のせいでした。
美しく手入れされた生け垣を眺めるように城壁のまわりを辿った先は砂利が敷かれ、行き止まりになっています。けれどもそれこそが、彼にとっては秘密の抜け道。足を踏み出しても砂利は音一つ立てず、それどころかいつかと変わらずその場所には魔法が残っておりました。それで彼は子どもの頃のようにするりと秘密の抜け道に踏み込みました。
繋がる先は城の一角。かつて彼の部屋であった角の部屋です。踏み込む床は埃をかぶっているだろうという予想はすっかりはずれました。
埃なんてどこにもありません。本の配置は少し変わっているかもしれませんが、あまりに遠い記憶なので定かではありません。とにかく目の前にあったのは、今も誰かがここを使っているのが明らかな部屋でした。