しゅう as 猫田しゅうぞう
2021-04-16 09:18:04
973文字
Public ID:INVADED
 

無題

ID:INVADED #BRAKE-BROKENで墓井戸にめちゃくちゃになった結果その3

なにをしろとも言われなかった。ただ、変な椅子?に座らされただけだ。投入という言葉が頭の隅に残ったけど四散して、それから意識は途切れた。
それで私は自分を忘れて、それから――きみが。
きみがいた。
きみのイドとかいうやつに入ったときと違って、今度はまるで他人の夢を見るみたいだった。私は私じゃなかった。
わたしはきみをみて、きみの目で自分を見た。思い返すと不思議だ。まるで二人で一つみたいだった。
きみは懐かしい姿だった。いや、服はなんだか見慣れない、コスプレみたいなのだったけど――それは自分にしろそうだった。きみの目に映る私はいまとそっくりおなじようで、でも着てるのは和服みたいな妙な服だし、異様な赤い目隠し。それになにより鏡を覗き込んだときより、ずっと美人に見えた。
ふうん、そうなんだ。そうかも、って思ってたけど。
きみの目に映る私が、ほんとうにそうだったならいい。確かめられないけど、まあ、たぶん間違いじゃない。
ホテルマンとか運転手とかそういう格好のきみはわたしだった。わたしはきみだった。きみはわたしを不快にしない。現実と一緒だ。いや、問いかけたわたしは現実と違ってほしいものがなかったから、これは正確じゃない。でもきみはわたしで、わたしはきみだったから別にそんなのどうでもいいのだ。
目覚めてしまったあとから思えば手でも握ってくれたらよかったのに、きみはなにもしなかった。ただ私の望みに寄り添ってただ静かに目を閉じた。きみの視界が閉ざされた途端、世界が閉じていくみたいだったけど、まあだめじゃなかった。そうして二人黙り込むのは心地が良かった。皮膚の一つさえ触れていなくたってきみと私は一つだった。

意識がふいに生じて、ああ目が覚めてしまうと気がついたとき、なるほどこれは罰なのかもしれないと思った。瞼を開けたところでなんになるっていうんだろう。拘束されてるし、隣にいたきみの気配はもうない。きみが私の視界に映ることはもう二度とない――いや、それはまあ、どっちにしたって変わらないことなんだけど。でもきみはいる。二度と触れられなくてもわたしのなかに、たぶんそう。それがわかってますます目を開けたくないけれど、どうせ私の目はちゃんとあって、きみを通さなくても見えてしまうんだ。試さなくたってわかりきっている。何もかもを覚えてる。