しゅう as 猫田しゅうぞう
2020-12-25 06:31:55
740文字
Public ソーロキ
 

HappyHolidays!

アベンジャーズ後にミッドガルド暮らしする(中略)🎄

街はリボンやモールで飾り付けられて賑やかだ。磨いた林檎のようにぴかぴかのオーナメントには道行く人々の影さえ映り込む。
この季節になると街の賑やかさは冷え込む空気を打ち払うようだとソーは思う。子どもだけではなく大人も皆どこか浮かれていて、雑踏に紛れるだけでも感化されるようだ。
大きな箱を抱えた青年が走って行く邪魔にならぬよう脇に一歩寄れば、側のショーウインドウに映りこむ自分の姿が目に入り、思わず足を止めた。ガラスの奥には手書きの星が散る美しい布地の夜空が広がっており、明るい色味の自分は夜空に浮かぶようだった。
そうしてぼんやりと映りこむ自分の姿は周囲から浮いているように見えた。白いコートも灰青のストールも見立てられたものだから着られているようなむず痒さを感じているだけかもしれないが。
アスガルドを離れて久しいが、いまだに当世のミッドガルドには馴染めている気がしなかった。弟のほうは順応はずいぶん早かったので、いまいちおもしろくないことだ。しかしどこかずれているとわかるようになっただけ進歩だという弟の弁を鵜呑みにして、いまのところ努力といえば今日のようなイベントを楽しむぐらいしかしていない――人間たちの真似をして。
なにしろなんだかんだで巻き込まれてくれる相手もいる。
遅いと文句を言うだろう顔を想像して、ショーウインドウに思わず微笑んでしまう。
もしかすると一人で先にワインを開けているかもしれなかった。ハムの箱を抱えた兄を出迎えもせずソファに横たわり、グラスを傾ける姿を想像するのは容易い。それから抵抗しない唇が文句の代わりに「冷たいな」とわざとらしく声を潜めることさえも。
まったく楽しい想像に、ソーは道行く浮かれた人々に紛れるような弾む足取りで歩き出した。