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しゅう as 猫田しゅうぞう
2020-08-02 20:56:27
1174文字
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その他色々二次創作
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流れ星には願わない
アクタージュ ちよなぎ Tシャツサインの件
誰だって私を見る。かわいいって、きれい、って目を奪われる。そうでないと困るのだ。
私が見つめたなら、彼女だって目を奪われてくれる。「私」を見つめ返して、隣を歩いてくれる。けれども、あっという間に人の輪の中に入ってしまう。
なんの躊躇いもなく、彼女は私を置き去りにする。自覚なんかないだろう。私の手を取ったのはケイコだ。手を取られたのはカレン。
振り回している花火みたいにぱちぱち眩しい夜凪さんの側に駆け寄ったりはできないから、一番好きな線香花火をもらった。静かで大人しくて寂しくて、終わってしまうのを待ち望んでいると、夜凪さんが空に向かって叫び始めた。つられて顔を上げると、武光くんも夜凪さんに負けじと叫び始めて、花火にはしゃいでいた皆の楽しげな空気はますます熱を帯びて、まとまる。
みんな若いなあなんて同年代の彼らのはしゃいだ様子をかわいく思いながら、手持ちの花火が尽きるころ、夜凪さんが声をあげた。
――
サインがほしい、だって。
いつのまにか夜凪さんの白いTシャツは共演者のサインで寄せ書き状態になっていた。スペースなんて「無地」なんてわけのわからないプリントがされた胸ぐらいしか残ってない。
「動かないでね、夜凪さん」
ペンのキャップを持った手で、彼女の肩を掴む。
そういえばお芝居以外でこんなふうに他人に近づくことなんかあっただろうか。はたと気がついて顔を見れば、夜凪さんははじめて会った時みたいに引きつった顔をしている。素直だな。かわいいな。
「なんで怯えてるの、夜凪さん」
「お、おいくらぐらい払えばいいのかしら」
「冗談だよ、だって友達でしょう?」
真正面で、キスでもできそうな距離で答える。笑うつもりはなかったけれど、一瞬にして照れた夜凪さんに釣られて、私まで唇が綻ぶ自覚があった。
――
また、夜凪さんに引っ張られている。
もう私はカレンじゃないのに。夜凪さんだって、ケイコじゃないのに。
夜凪さんの胸の上に、ペンを走らせる。複雑じゃない。かんたんなサインだ。それにどれだけ繰り返し書いたかわからないほど手が覚えているサインだけれど、たぶんこれより印象深いサインはこの先ずっとないだろう。
サインに集中するふりで一瞬視線を逸らしただけだったのに、次に目があったときの夜凪さんはちょっとぼんやりしていて、そうだようやく私に見惚れていたのだ。
「どうしたの、夜凪さん。書けたよ」
ぼんやりと見つめる彼女にとびきり綺麗な顔を作って微笑む。誰の目にも完璧で、あなたには見えないと言われる顔で。
「え、あ、ああ
――
ありがとう千世子ちゃん」
「ふふ、出世払いを期待してるね」
「えっ」
私は彼女の手を取る。うろたえる彼女の手に、はっきり答えないまま笑って無理やりペンを握らせる。みんなみたいには目を奪われてくれない、その手を握る。
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