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しゅう as 猫田しゅうぞう
2020-04-29 20:20:20
2412文字
Public
ID:INVADED
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無題
ID:INVADED 『井波さんと数田くん』にそういうかんじなのかーと思いながらも井波へのこっちの感情が重くなってしまったので感想代わりにしたためた妄想
人を傷つけるのも癒やすのも、知識がいる。だから最初は危うく殺しかけてしまった。
そもそもそんなことになるなんてお互いに困惑して、でも井波さんは落ち着いた僕がぼろぼろみっともなく泣いているのをみては大喜びだった。
最初なんてあははと大爆笑し、血があちこちに飛んでいるリビングで、ついさっきまでの衝動を失って座り込む僕をひとしきり笑い、「もぉ、やだ、頭クラクラする、のに、そんな、笑わせないでよ」なんてひぃひぃ笑いながら「病院行ってくるから、片付けておいて」と一人で身支度して病院に行った。
そんなことを何回か繰り返した。多分どうしたのか病院で疑われたりするんじゃないかなと思うけれど、彼女がどう誤魔化したのかは結局知らない。井波さんはそういうことをつまらないこととして扱って、僕には全然教えてくれない。
井波さんは、割れた花瓶に似たものを買い直して置き直した。割れた花瓶は彼女が病院に行っている間にゴミとしてまとめたけど、だから今も同じ場所に花瓶はある。そうして何にもなかったみたいに井波さんは時々思い出したように花を生けている。
彼女を刺しかけた包丁だって、今も調理に使われている。
彼女の腕を切った包丁を綺麗にしたのは血の滲んだ壁の次だった。包丁の刃から彼女の血を丁寧に洗い流したとき、シンクに流れてあっという間に消えた血を眺めて手が止まったのを彼女は知らないはずだ。でも牛肉の脂肪を切り離しながら「わたしも余計なお肉ついてたらよかったな」と言ったことがある。手を止める気配にキッチンを見るといつの間にか僕を見ていた井波さんはウフフ!と上機嫌で笑った。「数田くんてステーキよりハンバーグのほうが好きな人でしょ」なんて言って。
まあとにかくそんな風に時折、彼女は自分を傷つけたことを忘れないぞと僕に示してくる。もっと直接的に思い出の品に触れながら「あれ、痛かったなぁ〜」なんて言ってちらりとこちらを見ることもある。
そんな時の井波さんは決まって嬉しそうで、楽しそうで、いつにも増してきれいだ。
そして井波さんがそういう意地が悪い言い方をするとき、彼女の興奮が僕にまでうつるような気がする。皮膚が触れていればなおさらだ。お互いにそれがわかってきて、井波さんが病院に行くことはなくなった。
僕たちは学んだ。井波さんも僕も手当がうまくなった。井波さんは逃げるのがうまくなった。
いまだって扉を隔てて僕たちは息を荒げている。セックスしてるみたいに心臓をやかましくして、興奮している。僕の肉体はまるで意識と切り離されてしまって、肉欲は遠いのにそう思う。井波さんのせいだ。
彼女が興奮していると気づいたのは、彼女が階段を踏み外したときだった。
二階の彼女の部屋でたまらない気持ちになって彼女の首を絞めた。彼女があんまりきれいで、僕を試すように誘うものだからいけなかった。キスしようとしていたのにやっぱり豹変する僕にもちろん彼女は抵抗して、部屋を逃げ出した。でも酸欠に脚がもつれたのか、スリッパで滑ったのか、階段を転げ落ちた。僕がその音で正気に戻ったのを彼女は認識していなかっただろう。階段下で僕を見上げる彼女は僕に怯えてなんかいなかった。
衝動が意思より先に身体を動かす。殺したいとかそういう理由じゃない。
嬉しくて、興奮して、たまらなくて腕に力が入る。足が勝手に出る。凶器になるものを視界に捉えてしまえば、手にせずにはいられない。
荒れた息の理由。加害衝動やそれにともなう運動のせいじゃない。普通だったらきっと、勃起でもしてる場面だ。だって井波さんはうっとりと僕を見上げていて、そのうえ甘い声ではっきりと言った。
「最低」
響きは違っていても、だいすき、と言われたのだとわかった。
井波さんは蕩けた目をしていた。セックスしようとするときの、女の子の目だった。
僕は興奮して、彼女を階段から蹴り落とした。
会いたいだとか愛しいだとかそういう綺麗な言葉を並べるのを井波さんは嫌った。いや、嫌ってはいないかもしれないけれど、ひどく馬鹿にしているのはわかる。井波さんは考えていることを表に出すのが下手だけど、不快なことを隠すのは下手だ。
井波さんは自分がどうかは言わないけれど、僕の恋愛遍歴を聞きたがった。付き合った女の子がいると知ればキスはしたのかセックスはしたのかと明け透けに聞いてきた。びっくりしていると「気になるでしょ、そりゃ」と不思議そうにして「ほら、言っちゃいなよ。どんな子?どこまでしたの?いつ?数田くんから言い出したの?」と問い詰めた。井波さんはまるで自分とはキスもできないのにと責めるようだったけれど、そうなのかと思えば「べつに数田くんとセックスしたいわけじゃない」とつまらなさそうに言った。
でも恋人とセックスをしたことがあることを白状すれば、聞いたくせにつまらなそうな顔で「ふうん」と言い、「なんかむかつく」と言った。「私が知らないのにさ」と。
だから考えて
――
準備をした。準備に思ったより時間がかかって、一ヶ月はまったく会わなかった。でもそれが最初の贈り物だ。URLを伝えると彼女は喜んだ。
樽の中を写すその映像を僕の隣でしばらく眺めて、「数田くんいいね、やっぱりおもしろいよ」と褒めた。
それで僕はまた彼女を殴った。嬉しくて、愛しくて、堪えられなくて、彼女を何度も何度も殴った。
それが彼女が最後に入院した原因だったけれど、退院した井波さんは僕にハンバーグを作ってくれた。
とても満足そうに笑うその目元はまだ痣のあとが残っていたけれど、井波さんは僕の視線に気がつくと、わざとらしく目元を撫でて「きもちよかったね」と声を潜めた。
==
数田くんに童貞であって欲しいとも思ったけど井波がその相手を殺させてたらめちゃ興奮するな!と思ったので俺はその説をとる、ということが言いたかっただけなのだった おそまつ
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