鯖男
2026-07-03 22:41:01
923文字
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俺もお前もどうかしてる

イシヤシのちゅーするところだけ書いた。

都会のコインパーキングは高額だ。
地元と比べると金額は段違いで、車を使うようになってから顕著に感じられた。
だからそこで盛るこいつの心理状態がどうにもわからない。
新宿の町並みは、無数のネオンによって毒々しく彩られている。だがカーフィルム越しでは、彩りも半減し、音もどこか遠くに聞こえた。
俺は目を細め、フロントガラスから正面へ視線を戻す。
目の前には粘度を持った赤のガラス玉。いつもは眼鏡越しだったそれが、楽しげにゆるりと弧を描くのがどうにも癇に障る。
俺は腔内に差し込まれた男の舌を軽く噛んだ。少しでも動揺すればいい。それで癇の虫も収まるだろう。
しかし男は、勘違いかはたまた嫌がらせか。俺の舌をすくい取り、舌先で縁をなぞっていく。
背筋に微弱の電気が走り、ちりちりと神経が痺れた。
きもちいいのかきもちわるいのか。
頭の奥がふやけて芯がなくなっていく。
ふ、とわずかに漏れた呼吸音に、男の目は楽しげに歪む。ひどく腹立たしかった。
尖らせた舌先は男の指先のように繊細で、皮膚の薄い裏側までくると、舌同士を擦り合わせながらわざと音を立てる。
こんな下卑たやり方、男の好みから外れている。
なぜだろう、と思うが、それ以上思考は走らない。E3を打たなければ、俺の脳みそはこんなにも愚鈍だったのか。
緩慢となる頭に活を入れるため、浅く鼻で呼吸をする。
すると男の上気した身体から、仄かに甘い石鹸のような香りがした。そこに混ざるのは嗅ぎ慣れた血腥さ。
決して合わさることのないコラボだ。
倒錯してる。
E3も使ってないというのに、頭がどうにかなりそうだ。
意識は徐々に遠のき、脳の奥では痺れと疼きが混在してる。もはや夢か現実かも曖昧になってきたとき、ようやく俺は解放された。
喘ぎながら酸素を食み、虚ろな頭のまま、元凶を睨めつける。
だが性根がねじれている男は、眼鏡をかけながら事も無げに笑う。
「ふ、は。おねだりですか? かわいいですね」
「ぬかせ……ころす、ぞ」
「はは、怖いなあ」
一言一言が神経を逆撫でする才能がある。
嫌な奴だ。
気が済んだのか、男はシートベルトをつけ、スマホを弄る。ロックの下りる音を確認後、滑るように車は走り出した。