鯖男
2024-12-18 22:51:14
1261文字
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神父🪲が壊れた話ラスト

前回とは別ルート。壊れそうだったけど👢が力技で何とかしました。最後は未来がある感じでfin

いつまでもいつまでも。
手には親殺しの感触が残っていた。

遠くの空が白んでいく。澄み切った早朝の空気を、血なまぐささが上書きしていく。
昨晩、一つの地獄が終わったのだ。
人間の笑い声と血鬼の苦しみによって築かれていたラマンチャランドは、人間の苦しみと血鬼の笑い声に満ちている。
人間だったものは血袋と化し、幽鬼のように徘徊する。物陰に隠れていた生き残りを見つけては、まるでアトラクションのように追いかけ回し、血を啜る。
正しい血鬼の姿であった。
そんな光景を呆然と眺めるのは、返り血に汚れた神父服の男だった。
「浮かない顔だな」
男は睥睨する。だが女性は鼻で一蹴し、同じ光景を眺めた。
「俺は、俺たちは不孝行者だ……!」
「最初に裏切ったのはあちらだろう」
女性の眼光が鋭くなる。
最初の裏切りがあったからこそ、家族は飢え、苦しみ、狂っていったのだ。
上位眷属に逆らうことは本能的な嫌悪があったとしても、彼女は拳を振り下ろすことに、躊躇いなどなかった。
「だとしても! 俺たちは父上様を殺すべきではなかった!」
「話し合いなど無駄だったのに?」
「っそれでも……俺は……!」
父上様という基盤が崩れる音を聞いた。血鬼である自身を支えていたものだった。
男は足元から崩れ落ちるように座り込み、周囲を見回す。
そこには父上様が望んだ『共存』などは存在しなかった。
……立て。グレゴール」
頭上から落とされる女性──ウーティスの声が素通りする。
男──グレゴールはもう、立てる気がしなかった。
「っ立て! 第三眷属!!」
一人でラマンチャランド従業員の衣装を作り上げてきた彼女の腕は、しなやかで逞しい。その腕でグレゴールの胸ぐらを掴み、息がかかるほどの距離で告げた。
「父上様は死んだ! 今は『ドンキホーテ』を継いだサンチョ様とロージャ様が一族の長だ! 我々はその下……はるか下の眷属を守る位置にいるんだ!!」
「守る……
気が遠くなるほど気休めの言葉を吐いてきた。
気が遠くなるほど我慢を強いてきた。
気が遠くなるほど何も変えられなかった。
グレゴールは遠くを眺めるように目を細め、記憶の苦さに顔をゆがめる。
……お前は家族が狂わないよう守ってきたさ。これからも同じように家族の心を支えればいい」
シャンとしろ、グレゴール神父!!
軍人もかくやとばかり。青空を震わせるほどの檄に、周囲の家族も何事か、と目を丸くする。
「お前は……ほんと……はあ、」
グレゴールは深く息を吐く。そして深呼吸をした。肺を満たすのは周囲にまき散らされたおぞましい量の血のにおい。人間ならば噎せ返るほど濃密な死の香り。
──だが血鬼であるグレゴールには、早朝の澄んだ空気のように清々しい気分にさせてくれる。
手には親殺しの感触が残っていた。
この感触はいつまでも残っているのだろう。
思い返すたびに死にたくなるのだろう。
だがそれでも立て、と叫ぶ家族がいる。
自罰ではなく、家族のために命を使うのも悪くはない。
せめて罰が下るまでは。