鯖男
2024-11-09 00:14:47
1121文字
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ドブ味でも少しマシ

姫🪓×神父🪲

告解とは罪を告白し、神に赦しを請うことである。

青い夜だった。
月明かりに透かされた夜は、澄んだ青をしており、深海を思わせる。
閉館した遊園地もその深海の中に沈んでいた。だが生憎、遊園地には深海どころか、水の中にも入ったことのない血鬼たちしかいなかったわけだが。
回転木馬も、大観覧車も、深海に沈み、沈黙する。朝の開館時間まで、眠りについている。
アトラクションの一つである告解室。そこも他同様に眠りについているはずだった。
中には二つの人影がある。
一つはアトラクションの主である神父。もう一つは豪奢な衣装に身を包んだ令嬢であった。
それだけを聞けば、令嬢の告解を聴く神父なのだろう、と考える。
だがそこで行われていたのは、告解ではなかった。
否。『罪を告白し、赦しを請う』という意味では告解だったのだろう。
赦しを請う対象が神ではなく親であることと、告白しているのが神父であるのを除けば。
「ねえ、グレゴール……この傷はなあに?」
四つん這いとなった神父がいた。令嬢の白魚のような指が、神父の背を撫でる。ミミズ腫れとなり、時折血を滲ませた折檻の痕が残る背を撫でるのだ。
傷跡の刺激は背筋を震わせるほどに甘く、神父は歯を食いしばるも、犬のように喉を鳴らしてしまった。罰だというのに、甘美な痺れに快感を芽吹かせたのだ。令嬢の口元は緩く微笑む。
神父は令嬢の愛らしい犬だった。
「勘違いしないで。私、怒ってないのよ? ただ『私のもの』が傷つくのがすこぉし厭なだけ」
傷跡に立てられた爪は、ずぶずぶと食い込んでいく。鋭い痛みに神父は鈍く唸るも、与えられた痛みに安堵の表情が浮かんだ。
「っあ……はぁ……もうしわけ、ありま、」
「怒ってないのよ?」
あふれ出る鮮血は月明かりに照らされ、宝石のように輝いていた。だからだろうか。令嬢は音もなく神父の背に舌を這わせ、赤い宝石を嘗めとった。
血鬼にとって、同族の血なんて獣の血よりも劣る最低品質だというのに。
それでも令嬢は、丁寧に零すことなく、神父の背を嘗めていく。
傷口を抉るように舌の先端で。傷口を労るように舌の面で。
それで性的な愛撫を連想させ、神父の口からは色を含んだ堪える鳴き声が漏れる。
……っは、ふふ。ほんと、同族の血ってドブみたいね」
「っあ、っはぁ、んん……ロ、ロージャ様、ご容赦を……
譫言のよう、懇願のように「ご容赦を」と呟く神父の耳元に唇を寄せる。
「「やめろ」って言えばいいのよ」
「ロージャ様……ご容赦を……
祈りのように手を合わせ、四つん這いの神父はなおも呟く。
「ふふ、あはは……かわいい私の眷属。貴方の血はドブの味だったけど、他のドブよりマシだったわ」