鯖男
2023-11-26 22:57:23
939文字
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勘違いの思い違い

中指厶の家族認定に苛つく海賊グ

中指が管理しているクラブの奥の応接間。
胃に響くような重低音も、毒々しい装飾やライトもここには届かない。オレンジの蛍光灯が仄暗く照らすクラブで唯一落ち着ける場所だろう。
そこは中指と繋がっている組織との帳簿の確認や、金品の受け渡しなどに使われる。
中指の末弟であるムルソーも、双鉤海賊団副船長とのやり取りの際に使用している部屋だ。

あ、と思った時にはもう遅かった。
グレゴールは自身の死のみならず、双鉤海賊団の壊滅が頭をよぎった。だが吐いた唾は飲み込めない。この場合、ぶち抜いた壁は戻せないと言うべきか。こればかりは自身の速さを恨む。
だが止められない。止まらない。
グレゴールのフックが応接間の壁を貫いていた。しかも中指末弟たるムルソーのこめかみギリギリを通って。男の目はいつもと変わらぬ静謐さがあった。驚きも怒りもない。穏やかなそれ。まるで子どもの駄々を見守っているようで、グレゴールの神経はささくれ立つ。
……何か問題があっただろうか」
「問題、ねえ?」
揶揄している様子は微塵もなく、ただ純粋に質問してくる男に口元が歪む。だがふつふつと煮立つ脳の片隅が取引相手であることを知らせてくるので、形だけでも笑みを作った。その笑みは歪で、いつもの営業スマイルとはほど遠い不完全なもの。
いつもと異なるもの。ムルソーは通常時と照らし合わせ、異変を察知した。ここで初めて静謐な双眸に揺らぎが生じた。それだけでグレゴールの心中は少しだけ落ち着く。少しだけ。
……家族なのだから教えて欲しい」
「家族う?」
堪えきれずに漏らされた息は、嘲笑と共に吐き出される。
「あはは、そう家族……家族ねえ、」
グレゴールの左手がムルソーのタンクトップを掴み、勢いよく引き下げる。業腹な身長差だった。
グレゴールはムルソーの唇に噛みつき、無理矢理隙間から腔内に入り込んだ。分厚いムルソーの舌に触れ、先端で優しく愛撫していく。新緑の瞳が穏やかになるのを見計らい、ちゅ、とリップ音を残して鍛え抜かれた胸板を突き飛ばした。
「家族とこういうことしないよな? 俺とあんさんは協力関係」
「オーケー?」とムルソーの唾液で濡れた唇を、指でなぞっていく。
そしてその指を、見せつけるように舌先で舐めた。