ガントレットの締め付け跡が残る骨張った手が、グレゴールの膝に置かれる。突然の接触に肩を振るわせるものの、殴りつけないところから嫌悪は抱いていないようだった。それだけでムルソーは許された気がし、手のひらを太ももへ滑らせていく。
──否、滑りはしなかった。グレゴールのズボンの素材のせいか? それも否である。ムルソーは気づいていた。自身の手のひらがじっとりと汗ばんでおり、そのせいで滑りが悪くなっていたことに。
だが湿気を含んだことで、太ももとの密着度が高くなり、ムルソーの心臓が一際騒ぎ出す。
若干細身ながら、みっちりと筋肉が詰まった戦う者の身体だった。この脚から繰り出される蹴りの重さは、体格から考えられないほど重いことを思い出す。
膝と太ももの間で手のひらが止まる。グレゴールは未だ止める気配がなかった。
人差し指を這わせる。その動きは尺取り虫のようだ。じりじりと距離を詰める様は、散打を思い出させる。中指、薬指と、その一本一本が蛇のように太ももを這う。グレゴールは未だ止める気配はなかった。
そしてもはや誤魔化せないところまで来てしまった。太ももの付け根、である。
グレゴールは未だ止める気配はなかった。
許されているのか、と。ムルソーの呼吸が深くなる。じわりと汗が全身から噴き出る。深緑の双眸がねぶるようにグレゴールを見やった。
瞬間、飴色の双眸を視線が交わる。グレゴールもこちらを見ていたのだ。レンズ越しの瞳は、煮詰めた飴のようにどろどろに溶けていた。許されていたのか、と口角が上がる。
グレゴールは未だ止める気配はなかった。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.