鯖男
2022-08-09 17:36:21
1175文字
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ワンライ作品『けもの』

カリホロがぐだぐだ話してる

相手を動物に例えるとどんなのかしら?
「やっぱりバイソン、か? 草食ってるイメージ」
「それを言ったらお前は狼だな」
「互いに捻りがねえなあ」
「むう……こういった想像は苦手でな」
頭上から聞こえる低音はひどく心地よかった。安定感のある身体を座椅子代わりに、ホロホロは雑誌を捲る。
先ほどの一文は雑誌の特集ページからだ。相手を動物に例え、その動物に一喜一憂する若い女性向け雑誌。明らかに少年向けではないソレをなぜホロホロが持っているのか。十祭司の誰かがパッチ村に持ち込んだからに他ならない。外部との接触を絶っている民族である。十祭司といえど、久々の外部刺激に浮き足立ってしまったのだ。
ホロホロはカリムの胸に寄り掛かり、雑誌を叩く。
「じゃあバイソンと狼なしでいこうぜ」
「苦手と言ってるだろうに……
苦手と言いながらも、思案するカリムは人が良かった。だからこそホロホロは質問するのだ。
しかし、とホロホロも考える。カリムを動物に例えるとなんなのだろうか。
まず最初にカリムの特徴を脳内に羅列する。
身体が大きい。話によるとシャーマンファイトの会場造りや資金繰りエトセトラを担う縁の下の力持ち。顔が厳つい。他の十祭司に頼りにされてる姿を見るのも珍しくない。
…………ゴリラ?」
「ゴ、ゴリ!? どちらにしろゴツくないか?」
「あんた、その見た目でゴツくない動物当てはめられると思ってたのか?」
確かにゴリラはゴツい。そして威圧感もあり、蔑称と捉えられることも多いだろう。
だが実際のゴリラは温厚であり、むやみやたらと攻撃をしてこない。しかし攻撃しないからと言って弱いというわけではない。握力は推定五百キロ。一概には言えないが、強さは動物界でも上の方だ。
穏やかだが戦えば強い。
ホロホロにとってカリムとはそう言う男だった。
「ゴリラ……うーん、ゴリラか……
「ほれ、俺はなんなんだよ。かっけーので頼むぜ」
手持ち無沙汰に雑誌を捲るも、他のページは化粧や服のあれこれである。全くホロホロの興味はそそられず、最後のページに行く前に閉ざされてしまった。再び手持ち無沙汰になってしまった。ホロホロは何の気も無くカリムの手をつまみ上げる。
逞しい手はホロホロの倍はある。手のひらの皮が厚く、特に指先が硬い。爪は思ったよりも綺麗に整えられており、カリムの細やかな気遣いが読み取れた。指同士を絡めれば自身との違いは歴然である。同年代と比べれば多少逞しくはあれど、なまっちょろい手だった。積み上げてきた年季が違う。
……ああ、そうか。狼以外なら猫なんかどうだ」
「猫ぉ? あんま狼と変わんねえな」
「そうか?」
カリムは意外そうな声をあげた。
「ぴったりだと思うがな。こんなに人の指にじゃれついてくるなんて仔猫以外の何者でもないだろう?」
「は──」