Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
鯖男
2022-07-12 16:18:54
1884文字
Public
Clear cache
ハオホロif幕間3
5と6の間くらいの話。狼の血は途切れていない。
黒の手甲をつけ、深く息を吐く。
シャーマンファイト一回戦。ホロホロの初試合でもあった。
「なんだ、緊張してるのか」
「馬鹿言え。余裕だわ」
「ホロホロうそだめ」
ハオの言葉をいなすも、心を読めるオパチョによって不発に終わる。そもそもハオにはお見通しだったかも知れないが、素直に吐露できなかった。それはプライドの問題だけではない。
「
……
別に緊張ってか、なんかざわつくんだよ」
緊張感か戦闘前の興奮か、ホロホロの肌は粟立っており、撫でることで落ち着かせようとする。だが一向に収まらず、不満げに口先を尖らせた。
ハオはふむ、と顎を撫でる。
自然霊の頂点とも言えるスピリット・オブ・レインを持ち霊とし、仲間と腕試しを続けてきたのだ。ハオの見立てから、ホロホロはどの参加者と比べても引けをとらない。それどころか凌駕していると言っても過言ではなかった。だがホロホロの心中は波立っている。
王を決めるための神聖な戦いとしてとはいえ、見世物の舞台なのだから緊張するのは理解できた。
見ず知らずのシャーマンと戦うことへの興奮も理解できる。
多少なり関係はしているだろう。だが決定的ではない。
こういった情報収集はラキストに一任してるんだがな。
ハオはチーム分けの時を思い出し、一人ごちた。
「ラキスト、今回は裏方に回ってほしい」
「仰せのままに」
チーム分けをする際、ラキストへ告げる。頭を下げ、受け入れるラキストにホロホロは首を傾げた。
「ラキストはチームに入らねえの?」
「三人一組だからね。一人余ってしまうだろ。馬鹿だな」
「最後の一言余計だな!」
ラキストをチームに入れられなかったのは戦力的の痛手にはなるが、大したことではない。星組はハオ一人で成り立っているようなものだ。
それよりも単独行動ができることで、情報収集に時間が割ける方がプラスに動くだろう。
「別に僕一人でどうにでもなるから、緊張も何もないだろ」
「そういうんじゃなくて
……
」
上手く考えが纏まらないのか、口元は忙しなく動くも言葉が出てこない。
恐らくホロホロのそれは、何かを感知してのことだろう。だがその精度はまだ低い。
「ハオさま、ホロホロ、しあいはじまる」
「わかったよ、オパチョ。ほら行くぞ」
「わあったよ」
歓声の波を受けながら、ハオ率いる星組は姿を表した。
羽織った黒の着物が風に靡く。すると下に着たタイトなパンツが顔を出した。ベルトには媒体である扇子をしまうホルダーがつけられている。これらは花組を筆頭に仲間達が口を出してコーディネイトされたものだ。服装の好みはあまりないものの、自身のために選んでくれた服は存外気分が良い。
「ホロホロ、まだざわついてるかい」
「まあ、な
……
」
着物の袖から覗く腕は、今も変わらず粟立っていた。
「まあなんにせよ。早く終わらせよう。時間の無駄だ」
試合は一瞬だった。
相手が何をするでもなく、ホロホロが戦闘態勢につくまでもなく。
相手の魂はスピリット・オブ・ファイアに収容された。
残ったのは抜け殻である。
「ああ、掃除は忘れないよ」
だがそれすらも無くなった。
残ったのは数グラムの塵である。
感慨はなかった。感慨が起こるほどの試合ではなかった。
現にホロホロの脳裏には、既に相手の顔がもやがかっていた。
「ハオさま、すごい。はやい」
「当たり前だろう」
「まあ、早いわな
……
」
肌を撫でる。試合には勝ったというのに、ホロホロのざわつきは消えない。それどころか不明瞭な違和感が責め立ててくる。ホロホロは踵を返す。これ以上ここにはいられなかった。
瞬間。
「お兄ちゃん!!」
呼吸が止まった。洪水のように想起されるのはあの日のこと。
強さを求めた。
なぜ。
自身の弱さのせいで殺してしまった。
誰を。
同級生を。
誰を。
……
同級生を。
誰を?
────すきなこを。
指先が震えた。血が通っていない。うまく息ができなかった。
ふと遠くでカリムが言っていたことを思い出す。
『氷使いは珍しくない』
最初は一回戦初戦のアイスメンのリーダーかと思っていた。だが「珍しくない」のだ。一人ではなく二人いてもおかしくはない。そしてホロホロは抜かした氷使いの二人目がいたのだ。恐る恐る振り返り、観客席を見やる。そこには幼子から少女として成長した妹の姿があった。
「────ぴりか、」
兄と同じ色をした髪と瞳。一族を代表するかのような文様の入った戦闘服。妹には不釣り合いと思う。
少女は跡継ぎである兄の失踪後、シャーマンとなったのだ。
一族の狼は途絶えていなかった。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内