鯖男
2022-03-17 15:28:39
1548文字
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ピノホロした2

続いたんだぜ

ピノの家は歴史があり、所々リフォームはされているものの、昔ながらの家具も少なくはない。
シャワールームがその一つで、ボイラーで湯を沸かすタイプだった。「シャワーを浴びたい」と思っても、湯が沸いていない。そして湯を沸かすのに三十分ほどかかる年代物。ピノは入浴に重きを置いておらず、リフォームも後回しになったらしい。
「不便じゃねえ?」
「生まれたときからコレだから別に。むしろパッチの宿泊施設ですぐにお湯が出ることにびっくりしたぜ、オレはよ」
数年前の会話を思い出す。
そのときにはホロホロの身体は成長期に入っており、ピノの肩を優に越えていた。

温かな湯が顔を濡らしていく。
このまま頭のもやもやも流れ落ちればいいのに、とホロホロはシャワーヘッドを睨めつけた。だがそれは八つ当たりであり、自業自得というものだ。

ホロホロはピノからの好意を親愛として受け取っていた。
理由は明らかで、自身の身体の変化だ。
ピノと知り合った頃、まだ少年と呼ぶに相応しく、身長もピノの肩ほどしかない。鍛えているとは言っても未だ頼りない細腕。なだらかな腹筋。全てが子供だった。
自身を見ながら藍鼠色の双眸が熱を帯びた瞬間、『そういったもの』が好きな男なのだろう、と思ったほどだ。
程なくして関係が進んだ頃。触れ合うのも、唇を食まれるのも、満たされるのを感じながら頭の片隅で冷めた自分が見ていた。自身が『そういったもの』じゃなくなったとき、ピノがどうなるのか。胸に小さな影を落とすには十分だった。
シャーマンファイトが終わり、ホロホロは農業高校へ進学した。勉学は程々に、実習の連続だ。だがシャーマンの特訓と比べれば大したことはない。
数年後、無理なく着実に鍛えられたホロホロの身体は逞しく成長した。細く引き締まった腕は以前の頼りなさは微塵もなく、しっかりと割れた腹筋は同年代よりも立派だろう。身長も随分と伸び、成長痛に悩まされた。
そこで昔の冷めた自分が耳打ちするのだ。
自身が『そういったもの』じゃなくなったとき、ピノはどうなるのか。
「──なら、戻ればいい」
愛だの恋だの、惚れた腫れただの、面倒くさいこと抜きにしたただの友人に戻ればいい。
幸い、身体のまぐわいはなかった。互いに五百年振りの戦いに熱を上げていただけだ。
「友人としてピノはいい男だと思うぜ」
ホロホロは心から誰にいうでもなく呟いた。

──だがホロホロの考えは明後日の方向を向いていたようで、ピノはショタコンではなかったし、昔も今もホロホロを性的に見ていたことがわかってしまった。
「「さっさとシャワー浴びてこい」とかどこのAVだよ……
ふとシャワールームの外に吊されている時計を見やる。シャワーの湯はボイラーで湧かしている以上、量が決まっているのだ。自分一人で全ての湯を使い切ってしまうわけにもいかない。手早く髪と身体を洗い、飛び出るようにシャワールームを出る。恐らくあと一人分ぐらいの湯は残っているだろう。そんな希望観測をして。
雑に髪を拭きながら『あること』に思い至り、「あ」と間の抜けた声が漏れた。
シャワールームはボイラーで湯を沸かすタイプで「シャワーを浴びたい」と思っても、湯が沸いていない。そして湯を沸かすのに三十分ほどかかる年代物。
三十分かかるのだ。
なのにホロホロはすぐにシャワーを浴びれた。
工事などされていない年代物のボイラーなのは変わりがないのに。
答えは簡単だった。
三十分以上前からシャワーの湯は沸かされていたのだ。理由など一つしかない。
「ぁ……あぁ~~~…………
初めからセックスする気満々じゃねえか!
羞恥の悲鳴は細くか弱く。タオルの隙間から覗くホロホロの耳は熟れたリンゴのように真っ赤に染まっていた。