鯖男
2017-05-20 22:48:46
1310文字
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ありったけのお題かきあーつーめー

『あなたの新刊の書き出しったー』さんから出してもらったお題を140文字で書いたもののまとめ。ちょこちょこ増えそう。

(槍士)
両想いのつもりでいたのは俺だけだったらしい。
ひどく滑稽だ。滑稽すぎてもはや腹も立たない。
「坊主」
なんだ、と子供は振り返る。
「すきだぞ」
ありがとうな、とわらった。心からではなく、機械的に。こう言われたらこう返す、みたいな。壁に話しかけてるみたいだ。ひどく滑稽だった。


(タニリミ)
こいつを裸にして、真っ白い皿に乗せて、上から特製ソースを垂らしたい。
そんな考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。だがふと、我に返った。そもそもそんな装飾はいらないのだ。奴の纏う白い衣ごと食い荒らしてやればいい。紅白の衣はさぞかしめでたい衣へと変貌するだろう。


(槍士)
「素直になれば可愛がってやる」
傲慢な物言いだが、彼に随分と合っていた。
「素直にならなきゃ可愛がってくれないのか?」
「バカ言え」
戯れるように頬をすり合わせ、目や頬に唇を落とす。
「俺ぁどうでもいい奴に宝具使わねぇよ」
どうやら彼にとっての可愛がりだったらしい。


(キャスリミ)
魚になりたい。魚になって彼の手の中で泳ぎたい。
願いは願いのままであり、決して現実になることはないだろう。だが俺は絶えず願う。言葉など水に溶かしてしまえ。足はヒレへ。体のいたる所に鱗を。
絶えず願う。
だってそうなれば彼の腹の虫が鳴いたとき、口へ飛び込めるじゃないか!


(弓士)
「今からお前は俺のものだ」
なんでもないように吐かれた言葉には強制力はない。なにせ子供の我儘のようなものだ。鼻で笑い、何事もない顔をすればいい。
だが私は無言を返してしまった。無言とは肯定だ。
「いいだろう?」
子供は首に手を絡め、抱きしめる。まるで縋っているみたいに滑稽だ。


(弓士)
その日のあいつはまるでいたいけな幼子だった。
むう、と呻きながら俺の胸板に頭を擦り付け、隙間が開かないようにぎゅうぎゅうと締め付けてくる。サーヴァントの腕力を忘れているのか。骨の軋む音がする。
「しろう」
舌足らずな呼びかけに「なんだ」と応える。図らずとも声は甘くなっていた。


(槍士)
恋文を書いた。その次に遺書を書いた。さあ、死に場所はどこにしようか。
まわりを見回し息を吐く。不思議と心は凪っていた。
死に場所などとうに決まっていた。現実離れした禍々しい槍を携えた戦士よ。心臓を彼に捧げよう。
「ランサー、心臓はあんたにやる」
体は世界のために擦り切れさせよう。


(弓士)
彼の匂いが好きだ。
夕飯を作っているときの匂い。様々な調味料のハーモニーを操る指揮者のようであり、俺はその腕前に感心やら嫉妬する。
体を交えているときの匂い。湧き上がる熱により、鼻孔を擽る彼自身のもの。
血と鉄の臭い。
彼が一番纏っているものである。
俺は彼の匂いが好きだった。


(弓士)
恋は地獄だ。だから、落ちるのだ。
徐々に高まる熱は地獄の業火である。こうして首輪をはめられ、奈落の底へ引きずり込まれるのだろう。
「アーチャー」
子供が声をかける。まるで蜂蜜のようで甘く纏わりつく。しっとりと汗ばんだ手が頬を撫でた。不思議と嫌ではなかった。
だから地獄なのだ。