鯖男
2016-01-30 23:21:05
1021文字
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無配にしようと思ったけどやめた

タイトル通り。理由は暗すぎる。フォロワーさんが「猫弓士がほしい」と言ったから書いてみたけど多分求められてるのと違う気がした。人間弓×猫士郎(瀕死)なんだよ。

その子はダンボールの中で生まれた。
まだ目の見えない時分から母はいなかった。
野良だからか、育児放棄だろうか、車に潰されたのか。
とにかくその子には母はいなかった。

みぃみぃ、と鳴いてみる。
目ヤニによって開かなくなった目は意味をなさず、寒さでかじかんだ手足は動くことを放棄した。その子にできることは鳴くだけだった。
みぃみぃ、みぃみぃ。
元々栄養が行き届いていない体だ。その子はすぐに息を切らし、ダンボールの隅に縮こまった。
何も持っていないと思ったが、その子には風を凌げるダンボールだけで十分だった。雨はまだ体験していないのでわからない。

生まれて間もないその子は知らなかっただろうが、体の限界はあっけなく訪れた。
目は開かない。
手足は動かない。
腹も鳴らないほど空腹で。
幼いながらに『死』を意識した。
漠然と「おわりかぁ」と思う。『おわり』が何かも知らないくせに。
だがその子はお行儀よく待てず、みぃ、と鳴いた。
するとダンボールが翳ったのだ。
そこから先は意識がない。


胸糞悪い話をしよう。
その日、私は救いようがないほど運がなかった。
電車は遅れ、上司の失敗を肩代わりさせられ、財布を忘れ、同僚から「死相が出てるわよ」と言われる始末。
厄日と処理し、目の前の仕事を処理する部品として無心になれば、時間は容易く過ぎていく。
過ぎすぎてオフィスには私しかいなかった。
「なんでさ……
気持ちは下降しすぎて地面を抉っている。こんな日は寄り道せずにまっすぐ帰ろう。
冬も暦の上では折り返しにきている。……はずなのだが、身を裂くような寒さに私はコートの合わせを握りしめる。
「む」
と、道の端に何やら箱が置いてあるのが見えた。外装から見るにダンボールだろう。不法投棄かと思い、ここいらに住んでいる人間のモラルの低さに弊害した。
「大体もう少し歩けばごみ捨て場だろうに」
見てしまった災難か、そのまま放っておけず、私はダンボールを持っていこうとした。──が、その手は空で止まる。ありえないだろう。
「なんだ、これ」
傷んだ生肉がタオルの上にあった。生理的な嫌悪が走り、生ごみの日は明日であることを脳内カレンダーで確認する。
だが、
「──────みぃ、」
「な、いた……?」
その後はただ近くの病院に転がり込んだことした覚えていない。
余談だが、近くの病院は歯医者しかなく、動物病院にはそこの医師が調べてくれた。恥ずかしい。