鯖男
2013-10-20 23:56:53
1365文字
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アンドロイド槍と修理師士郎


細かい設定なんてない。
アンドロイド槍を士郎が修理するだけ。







昔から物を直すのが好きだった。
最期まで使わないのも後味が悪いし、直った瞬間の達成感も好きだった。
だから今回もその延長なんだと思う。
俺の目の前には安楽椅子に座った半裸の男がいた。
全体的に煤けていて、とてもまともな人間に思えない。
そもそも人間ではないのだから。
アンドロイド。
人間に近しい機械人形。
俺は男の後ろに回り、尻尾のような髪を肩から前に垂らした。すると首筋にうっすらと線が見える。線に爪を差し込み、電池パックを開けるように引っ掻けると、そこには色とりどりの配線束が顔を出した。
人間で言う頸椎の部分だ。束を掻き分けると、思った通り、奥の配線は導線が剥き出しになっていた。
それもそのはず。ここは申し訳程度にある穴だらけの屋根しかない掘立小屋だ。雨漏りはするわ、湿った風に晒されるわ、防水加工されていないアンドロイドなら一発アウト。ご愁傷様である。
……と言ってもな」
基本アンドロイドは女性型が多い。愛玩用になり、力も強いのでボディガードにもなる。
だがこれは男性型だ。有閑マダムが買うなら線の細い少年型が主流のはず。成人男性型は珍しい。
なのに。
俺は問題のアンドロイドを見やる。
煤けて錆びたトタン屋根のような髪色。生気のない顔色(アンドロイドなので生気というのもおかしな話だが)。なくせに無駄な筋肉など一切ないしなやかな肢体。──髪や顔色だって生き生きするに違いない。根拠のない自身が俺に語りかけた。
どれをとっても既製品のアンドロイドとは思えない完成度だった。
幸い、故障といっても剥き出しになった導線からの漏電のみ。直そうと思えば数時間でできるだろう。
「────よし」
俺は鞄をひっくり返し、中から工具セットを取り出した。


あれから何時間経っただろうか。
漏電修理はすぐに終わったものの、あれもこれもと手を出しているうちに高かった日をすっかり落ち、代わりに月が穴から光を提供していた。
しかしその甲斐もあり、アンドロイドはすっかり綺麗になっていた。
洋服はなかったので半裸のままだが、体と顔は健康的な肌色が姿を現し、髪は突き抜ける空を思わせるほど澄んだ青になっている。
「よ、よーし、配線繋げるぞ……
誰に伝えるでもなく、一人呟いた。
ばちん!
電気が通ったのが、配線の接続部分から火花が飛び散った。俺は驚き、すぐさま配線の扉を閉め、掘立小屋の外へ避難する。火花は更に激しさを増し、このままでは大火災が起きるのではないかと危惧するほどだった。
やがて音は止み、辺りは静寂に包まれた。
……お、わったのか?」
恐る恐る扉を開けると、そこには信じられないものがいた。
安楽椅子にアンドロイドが座っている。
ただ座っているだけならさっきまでと同じだ。しかし座り方が違った。
最初は背もたれに全体重を預けていたのに、今は足を開き、前かがみに座っている。
やがてそのアンドロイドはゆっくりと立ち上がった。
「──よう坊主。てめえが俺を起こしたのか」
体と顔は健康的な肌色。髪は突き抜ける空を思わせるほど澄んだ青。
人懐っこそうにも野性味染みても見える表情に、
宝石のような肉食獣のようなキラキラギラギラした真っ赤な瞳。