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紫よか
2026-07-14 09:19:28
2019文字
Public
イナズマイレブン
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赤くてすっぱい!
風丸一郎太×四季ありす 3年生、両片想い
「みんなー! 休憩にしましょう!」
マネージャーの一人、秋の呼び声で練習をしていた部員たちがぱっと走る足を止めた。今日は土曜日。授業こそ休みだが、部活動は行われる。このサッカー部もその熱心な部活のひとつであった。
「みんなでおにぎりとレモンの蜂蜜漬けを作ったの」
「飲み物もありますよ!」
「具も違うの。梅とツナマヨとこんぶ。食べてくれるとうれしいです」
夏未と春奈と冬花が言う。並べられたおにぎりは大小さまざまで、まさしく手作りといった具合だ。夏未の作ったレモンの蜂蜜漬けは、陽光に照らされて黄金色に輝いている。
もちろん、ありすもこの大切な仕事に参加していた。世界大会が終わり、学年がひとつ上がり、円堂たち三年生は今年で引退だ。最後のフットボールフロンティアに優勝するために頑張っている。冬花が転校してきてより手厚くなったサポートのおかげで、選手たちは日曜日の休日以外の毎日を練習に捧げているのだ。冬花はまだ雷門中に転校してきて日は浅いが、世界大会でマネージャーを勤めたこともあり、マネジメントの手際の良さにはありすは惚れ惚れとするばかりである。
──それこそ、入学してからサッカー部のマネージャーを務めてきたのに、もうすぐ引退なのに、未だにおにぎりを均等な大きさに握れない自分に危機感と劣等感を感じるくらいには。
「
……
私のおにぎり、すっごい不細工」
「え? そんなことないよ?」
「あ、秋ちゃん!
……
聞こえてた?」
「うん。ばっちり」
「やだもう! 忘れて!」
「えーっ? 聞いちゃったよ」
秋は優しく笑う。そんな笑顔を見て、ありすはやはり気恥ずかしくなるのだ。
「風丸くんに梅おにぎり渡してこようか? 梅、ありすちゃん担当でしょ」
「や、やめてー!」
「ふふっ、冗談よ。
……
あ、みんな手洗ってきたみたい」
ありすが風丸を恋い慕っていることを知っているのはマネージャーたちだけだ。乙女の秘密というものである。そう、四季ありすは風丸一郎太のことが大好きであった。怜悧な眼差し、鮮やかな空色の髪、そして何よりも真面目で誠実な在り方。同性の後輩からも慕われる彼は、『かっこいい』のだ。
そして、皆で手を洗ってきたことを報告するかのように女子たちに綺麗な手のひらを見せるその姿は、なんだかいとけなさを感じて『かわいい』と、ありすは感じている。
皆がはい、どうぞ。と差し出されたおにぎりやレモンの蜂蜜漬けに勢いよく手を伸ばす中、風丸はほんの少しだけ出遅れた。何かを探しているようであった。そして、手を伸ばしたのは──梅の入ったおにぎり。それも、いびつな形になってしまい奥の方へ置いておいた、ありすの失敗作。
(あ
……
)
ありすは今すぐ彼のその手を止めたい気持ちでいっぱいになった。けれど、声をかけてしまったら自分が作ったことがバレてしまう気がして、迷ってしまった。
「ありすさん、行かないんですか?」
そんなありすに声をかけたのは冬花だ。彼女は穏やかでありながら時に鋭い。ありすが目を泳がせていることに気づいたのだろう。やわらかな微笑みを浮かべながら、それでもいたずらっぽくありすの肩をつつく。
「え、ええと
……
」
「せっかくのチャンスですよ。私が作ったって、言ってみたらどうかな」
「でも、冬花ちゃんみたいな綺麗な形じゃないし」
「形って、そんなに重要です?」
「大事だよ!」
「ああ、ううん。こう言っちゃあれだけど、男の子って美味しかったらきっと満足しちゃうから、ありすさんのおにぎりは美味しいし、喜んでくれると思うの」
「う、うう
……
。そこまで言うなら
……
行ってきます」
「がんばって、ありすさん」
おずおずとありすは風丸に近づく、彼はそんなありすを見ると、ごくりと噛んでいたおにぎりを飲み込みながら彼女に向き直った。
「四季?」
「あ、あのね、風丸くん」
「どうした?
……
あ、手、汚れてたか? ちゃんと洗ったつもりだったけど」
「う、ううん。そうじゃないの。その
……
そのおにぎり、私が作ったの。
……
美味しかった?」
「
……
。ああ、美味かったよ」
「
……
! 本当?」
「うん。
……
それに、四季のおにぎりはすぐわかるから。
……
そ、の
……
食べたくて」
「え
……
」
「い、今のなしな! レモンもらってくる」
「風丸くんったら! 待って!
……
わ、私のおにぎりって、やっぱりわかるほどぐちゃぐちゃなんだ
……
」
すたすたと早足で集まりの元へ駆けていく風丸を、ありすは赤くなった頬で追いかけた。その一部始終を聞いていた秋と冬花は、はあ
……
とため息を吐くのであった。
「もうっ、いつお互いの気持ちに気づくんでしょう」
「卒業までには
……
かなあ」
それでも、彼女たちの目には、ふたりは微笑ましく映るのであった。後々、ありすから円堂のことを聞かれて反撃されるのは、また別の話。
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