白殊皎(しらよし こう)
2026-07-11 22:13:25
1310文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

全てを受けて、全てを渡す

黒の剣士の首筋に執着する土方の真意は……。

歳勇ワンドロライ作品です。
冒頭がぬるいですが最中なのでこちらにて。
直接表現はないので、とりあえず全年齢で。

 白い喉が反らされる。
「と、し……
 背後から己の首筋に噛みつく男に、黒の剣士は喘ぎにも似た声で名を呼んだ。
「近藤さん……
 噛み痕を残してなお、土方は近藤の首筋への執着を見せた。
 汗ばんだ身体をきつく抱きしめられ息が詰まる。
「あッ……!」
 背筋を通った幾度目かの甘い痺れに、近藤は一声啼いて意識を手放した。



 霞がかった思考が、少しずつ明瞭になる。
 もぞりと身体を動かせば動くな、とばかりに抱きしめられた。
「くすぐったい」
 うなじに当たる吐息にそう言って後ろに視線を流す。
「いいじゃねえか」
「今日のお前は何だ。俺の首でもほしいのか?」
 先ほどまでの睦みで首の周りにはいくつもの紅い痕が散らされている。
 自分では見えないが、この霊基の衣服でないと、否、それでも隠しきれないほどにつけられているのがわかる。
……だと言ったら?」
 土方の手がそっと延ばされ、そろりと喉仏の辺りを伝った。
「おまえになら、くれてやる」
 その手を取って、甲に口吸いをする。
「あんたの、全てが欲しい」
「だから、くれてやると」
 もう全部、自分の渡せるものは渡している。
──誰よりも想う、この男に。
「もう、傷つけさせねえ」
 土方は言って再び首筋に口吸いをした。
「──あんたのここに、もう傷はつけさせねえ」
…………
 現界して思いを交わすようになり、この霊基で肌を合わせる段になった時、土方が密やかに言った。
『──よかった』と。
 首元を隠す黒の剣士の衣装。
 それが傷を隠すものでなくて、よかった、と。
 その時の辛そうな顔は今でもありありと浮かぶ。
「おまえのせいで、俺は姿を変えられない」
 不貞腐れたようにそう呟けば、ふふ、と微かに笑われた。
「どの姿でもあんたはあんただ。いいじゃねえか」
 それに魔力の編み直しで身体の痕などどうにでもなると。
……消したくない」
 近藤はぽつりと呟く。
 それは本音。
 かなしさから与えられた証を、そんな風情のない方法で消してしまいたくはない。
「いくらでもつけてやる」
 また、微かな音をさせてうなじに口吸いがされる。
「欲張りめ……
 肌が触れ合う温もりに、言い知れない安堵を感じた。
「あぁ、俺は欲深くて──罪深いさ」
「おまえがそうなら、俺も同じだ」
 自分たちは共犯者。
 この秘めやかな関係を続けるためならば、時に今の主すら欺くだろう。
「俺の全てをおまえにやる。だから──おまえも全てを俺に寄越せ」
 土方の腕の中で寝返りを打って向かい合わせになり、近藤は土方の唇を奪った。
「俺はとっくに、全部あんたに渡してる」
 その短い口吸いを受けて土方は夜目にも浮かびそうなその白い身体を抱きしめる。
「足りない。もっとだ」
 近藤はとん、と土方の胸元を握りこぶしで叩いた。
「あんたのがよっぽど強欲だ」
 土方は苦笑してその顔を覗き込んだ。
「うるさい……そうしたのは、おまえだ」
 近藤は微かに頬を染めてそっぽを向いた。
「それは、嬉しいこった」
 再び首筋に唇を這わせ、土方は微笑む。
 執着は──まだ続きそうである。