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TensiSki
2026-07-09 02:32:03
2951文字
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忍🥚
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うぃざー○りぃパロ2
伊作くんがやっと出てきた *あなのなかにいる*
「あたた
……
はあ、不運だぁ
……
」
どこからともなく声がする。辺りには人影はおろか、動物の気配すらない。
正確には、「地表には」人影がない。そう、声は地中に掘られた穴の中から響いている。
善法寺伊作
――
彼は、相変わらずの不運に見舞われていた。
今日は趣味と実益を兼ねてあの山伏の姿で人々の治療をして回っていた。ひとしきり治療を終え、ついでに薬草でも摘んで帰ろうかと立ち上がったとき、頭上に鳥の気配を感じる。これは“うん”の落し物がある! と咄嗟に避けた先に小石があり、見事にズッコケた。
今度こそ立ち上がりとぼとぼと歩いていると、茂みからガサガサと音がした。刹那、イノシシがこちらに走ってくる。日頃の不運で鍛えられた瞬発力にてなんとかイノシシをかわした先には、なんと幸運にも珍しい薬草が生えていた。これはある程度戴いて帰らねばならない。
惜しむらくは、今、彼は決まった拠点を持たずに転々としているため薬草園を持たないことだ。薬草園があったならば、栽培して思うさま使い放題試し放題のめくるめく薬草ライフを送れていたことだろう。
話が少々ずれたが、ふらふらと何かに
――
というより、珍しい薬草に導かれるようにして「あっこれも
……
あっあっあそこにも
……
」と薬草を採取しては、薬が入っていた今は空っぽの箱笈へと入れていった。
どれほど道草を食って(※食べてはいない)歩いてきただろうか。箱笈の中には今や大量の薬草が仕舞われており、彼はこれまでの不運が報われたとニッコニコのホックホク顔である。
あれは煎じてこれはすり潰して
……
あの薬草は保湿の効能があるからあれと組み合わせたら相乗効果でもっといいものが出来るかもしれない
……
脳裏を過るのは、忍術学園に在籍していたころより自分たち保健委員を懇意にしてくれ、時折「曲者だよ」と現れてはともに穏やかなひと時を過ごす、今でも思いを寄せているあの忍び。
雑渡さん、元気かなあ。次はいつ頃お会いできるだろう? 怪我が増えていないといいなあ。
――
そんなことを思いながら、上の空でふらふら歩いているとふいに地面の感触がなくなった。
*おおっと* *おとしあな*
あなのなかにいる。
そういうわけで、今、彼は落とし穴の中でふぅん
……
と鳴き声を上げていたのだった。
箱笈に損傷は無く、自分も足を挫いてはいない。手首を捻ったりもしていない。雨の気配もおそらく大丈夫。不幸中の幸いだなあ
……
と自分に言い聞かせながら、ため息交じりに再びふぅん
……
と力なく呟く。
こういう時に、いつもどこからともなく雑渡さんが現れて「相変わらず不運だねぇ」とほんの少し笑って自分を引き上げてくれる。穴に落ちるのは不運だけど、あの瞬間は恥ずかしくもあるけど、実は好きだったりもしている。
どんな不運に見舞われても、あの瞬間はほんの少しだけ、報われたような気がしてしまうんだ。
「組頭ぁ、あと一人はどうするんですか? そもそも、この人選
……
この書物にある“僧侶”担当がいませんよ」
木々の上をひょいひょいと飛ぶ人影が五つ。タソガレドキ忍軍組頭雑渡昆奈門を筆頭に、“だんじょん”攻略を命じられた精鋭の五人である。
そんな面子に選ばれた尊奈門は、懐から例の「大・丈・夫? ネオ室町の攻略本だよ?」と書かれた書物を取り出しつつ雑渡に問いかけた。
「ああ
……
あと一人ね。うーん、いつもの感じだと多分そろそろ会えるんじゃないかなと思うんだよね」
「見切り発車もいいところですな」
「痛いところつかないでよ押都
……
」
移動するたびにひらひらと雑面が揺れるが、やはり押都の顔は“いけおじだんでぃー”な口元より上は晒されることがない。誰が呼んだか鉄壁の雑面。彼の素顔を見たものは生母の他に居ないという噂まである。
一方、そろそろ会えるのではないかと言われた尊奈門はうっすらと、否、はっきりと嫌な記憶が脳裏を過った。忍術学園の教師である土井半助に勝負を挑みに忍術学園に赴いた際にけしかけられたあの人物
――
あの日はひどい目に遭った。その人物にとっては日常の不運な出来事かもしれないが、普段そのような不運な目に遭うことのない尊奈門にとっては散々な一日だった。
「げ、善法寺ですか?! 我々の命がいくつあっても足りなくなるのでは?!」
「そうか? 善法寺君と合流できたとしたら治療面においてとても心強いと思うんだがなあ」
「山本小頭はあいつの不運を直接経験していないからそんな事が言えるんですよ
……
わたし、散々な目に遭ったんですから!」
「尊奈門、そんなこと言っているからお前はいつまで経っても土井殿には勝てないし、チョーくんだのハナちゃんだの言われる羽目になるんだ。ちょっとぐらいの不運ならば、全部力でねじ伏せてしまえばいい」
「高坂さんもです!! あいつの不運を甘く見てますね?! あいつの不運は“ちょっとぐらい”じゃ済まないんですってば!」
とはいえ、伊作の不運をねじ伏せてしまえそうな人物もまたここにいる。この隊列の先頭を行く、室町最強格の忍びである雑渡昆奈門だ。
尊奈門は「
……
いや待てよ、善法寺の不運を組頭や我々がなんとかどうにかして防いでしまえば
……
あいつの治療の腕は確かだし、本当に心強い存在になるかも」と少し思い直した。
「しかしそううまく善法寺君と合流できるか
……
」
「ああいう不運な子はね、こういう面倒なことにだって巻き込まれがちなんだよ。
……
ん? つまり、私たちがあの子の不運になるってこと
……
? それはちょっと嫌だな
……
」
「それほどまでに不運ならばどこかで穴にでも落ちているかもしれません。となれば、そこで雑渡様に会えたなら善法寺君にとってはこの上ない幸運になるのでは」
言いながらしょんぼりとする雑渡を高坂が即座にフォローする。ありがとうね、と言いながら雑渡は眼下に視線を落とす。
「
……
皆、待て。今、何か聞こえた」
「え? わたしの耳には何も
……
」
風に乗って、微かにふぅん
……
と音がしたのを雑渡は聞き逃さなかった。こっちだ、と言うや否や速度を上げて音の聞こえた方へと向かう。
「やあ、伊作くん。本日はお日柄もよく
……
穴の居心地はどうかな?」
「!! 雑渡さん! いやあ、あはは
……
」
「本当に善法寺が居た
……
」
尊奈門は「些細なことも見逃さないなんて流石は組頭!」と思うよりも先に、組頭の善法寺捜索機能はいったいどんな高感度なんだ
……
と、正直少し気持ち悪く思ってしまった。
雑渡がひょいと穴の中へ降り、伊作と箱笈を抱えて再びひょいと穴から脱出する。その様子を見てほんの少し羨ましいという気持ちと、成人男性一人と軽くはない荷物を抱えて浅くもない穴から瞬時に出てしまう雑渡様はすごい! さすがは雑渡様!! という気持ちで目を爛々と輝かせる高坂が居た。
伊作と箱笈をそっと地面に下ろし、軽く土を払ってやる。横から山本が伊作に水を差し出す。軽く周囲を見回った押都が周囲にひとの気配がないことを告げると、これからの話をすることも兼ねて暫しの休憩時間を取ることとなった。
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