yoAi_mochii
4384文字
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【召覚・召カム】深夜篇/その一

召カムメイン

あの酷く悪趣味で、気高いディナーが終わりを告げた頃。
肌にこびりついた体液や醤油、甘いタレの残り香を浴室で丁寧に洗い流した召使は、夜の冷気が満ちる脱衣所へと出た。

カミサマたちは、一度口にした言葉をあやふやに誤魔化すような、優しい存在ではない。
カムクラの宣言通り、脱衣所のどこを見渡しても、先ほどまで身に纏っていた私服は影も形もなかった。諦め混じりの陶酔を瞳に宿し、召使は洗い清められた肢体を惜しげもなく晒したまま、カミサマたちが待つ主寝室へと足を向けた。

重厚な扉を開けると、薄暗いライトに照らされた部屋の奥、豪奢なキングサイズベッドの中央に、すでにガウンを緩く羽織ったカムクラが座っていた。

「遅いですね。衣服を選ぶ手間すら省いてあげたというのに。ハジメなら、もう怒っていますよ」

長い黒髪を揺らし、昏く燃える赤い瞳で、カムクラは一糸まとわぬ召使の身体を、頭の先から爪先まで値踏みするように見下ろす。
そして、白いシーツの上を無造作に指し示した。
召使は一切の躊躇なくベッドへと上がる。白い免罪符のような肢体を、シーツの上へ惜しげもなく投げ出した。

「あれ? 日向クンは?」
「ハジメなら、自身の不手際による遅れを挽回するための準備に、もう少し時間を要するそうです」
「ふん……? そっか。後のお楽しみってわけね。彼がいないのは少し寂しいけれど、それならそれで、今の時間を楽しまないと」

主寝室に張り詰めた甘やかな空気の中、カムクラの白くしなやかな指が、迷いなく召使の張り詰めた熱へと滑り込んできた。
……んっ」
「効率的に事前準備を進めましょう。ハジメが戻るまでに、僕も最適な閾値まで引き上げるための踏み台になってもらいます」

カムクラの声は、相変わらず淡々としていた。
膨大な知識によって、事象の結末をほとんど予見できる彼は、肉体的な快楽に対してさえ酷く冷淡だった。滅多なことでは、その純然たる熱量を暴走させない。
人の感情というものに、どこまでも疎い。
召使は、そんな少年の頑なさを自分なりに深く、そして愛おしく理解していた。

昼間の賑やかな喧騒とは違う。二人きりの静寂の中でその頑なな少年を見つめていると、召使の胸の奥で、じわりと嗜虐に近い支配欲が頭をもたげた。
下からカムクラの冷淡な赤い瞳を見透かすように見つめ返し、その冷たささえ優しく呑み込んでしまうような、甘やかな笑みを浮かべる。

「ふふ……相変わらず真面目だね、カムクラクンは。それなら、もっと効率的な方法があるんじゃないかな?」

許しを請う姿勢は崩さないまま、召使は不意にカムクラの手首を取った。
あくまで恭しく、けれど拒む余地を与えない確かな強さで。
カムクラが微かに眉をひそめるよりも早く、召使はその人差し指の先を、自らの熱い口腔へと深く導いた。

湿った舌をねっとりと絡め、指先から指の腹まで、丁寧に、まるで慈しむように味わっていく。それがただの指ではなく、カムクラという存在そのものの一部であるかのように。
恭しく、従順に。その奥では確実に主導権を握るような動きで。召使はたっぷりと唾液を絡めながら、祈るような熱心さで、その白い指を扱った。

……なるほど。粘膜による直接的な摩擦のシミュレートですか」
カムクラは淡々と呟いた。その声に、微かな熱が混ざり始める。
「ハジメが好む理由は理解できます」

しかし、赤い瞳の奥には、まだ大した期待など抱いていない無関心が平然と居座っていた。どうせ自身の退屈をいくらか凌ぐ程度のものだろう――そんな冷めた予見が、召使には手に取るように伝わってくる。
それでも召使は、微笑を崩さなかった。一度だけカムクラの指を解放し、潤んだ瞳で彼を見上げる。その冷たさごと包み込むように、甘く囁いた。

……ねえ、カムクラクン。キミが望むことなら、ボクはなんだってしてあげられるよ? 今、キミが一番欲しい刺激を、素直に言ってみてくれないかな」

あえて、次の決定権を優しく投げ返す。
それは見せかけの従順ではなく、カムクラの冷たい理性を少しずつ溶かしていくための、甘く執拗な誘惑だった。
期待されなくても構わない。底冷えするような無関心を向けられても、一歩も退かない。
それが召使という男の、歪んだ忠誠と、狂おしいほどの独占欲だった。
むしろ、その冷たい視線の奥に潜む「退屈」に触れるたび、召使の胸の奥は熱く疼き、歓喜の輝きを増していく。

……
召使の意図を察したカムクラの長い睫毛が、わずかに揺れた。
パチ、パチ、と。
密室の静寂の中で、スローモーションのように繰り返された二度の瞬き。
通常なら決して迷いなど見せない彼が、目の前に差し出された誘いを前にして、珍しく見せた微かな逡巡だった。

……これ以上勝手に事を進めれば、無駄な摩擦を生むだけです。ハジメを無意味に刺激する理由はありません」

カムクラは、あくまで静かに言い放つ。
「ハジメが戻るまでの間、あなたにはこれで足りるはずです」
そう言いながらも、カムクラは自ら緩めたガウンの裾を静かに捲り上げた。白く滑らかな太ももが、薄闇の中に露わになる。
それは彼なりの、不器用で静かな歩み寄りであり、そのささやかな譲歩に、召使の瞳が愛おしげに細められる。

……あはっ。素直でいい子だね。いいよ。ボクみたいな貧相な身体でも、使い勝手のいい『おもちゃ』として、いくらでもキミの熱を煽ってあげる……

召使はシーツの上で体勢を整え、カムクラの足の間へと滑り込んだ。
視線だけは逸らさない。冷淡な赤い瞳を真正面から受け止めたまま、召使は自らの熱を、白く滑らかな内腿へとゆっくり押し当てた。

……ふっ……

太ももの柔肉に伝わる熱に、カムクラの喉から微かな吐息が零れる。
召使はその反応を見逃さなかった。
明確な一線は越えない。ただ、越える寸前の場所をなぞるように、角度を変え、力を変え、カムクラの反応をひとつずつ確かめていく。

「ふ…………

小さな吐息に、ついに熱が混じり始めた。
知識としては快楽を理解していても、自らの内から湧き上がる情動の扱い方を知らない、若き天才。その未分化な心がどれほど冷淡に振る舞おうとも、召使は真正面からその視線を受け止めた。
そして、ゆっくりと、逃げ場を与えないまま、己の熱を彼の内へと重ね合わせていく。

……ねえ。キミだって、こうして誰かに熱く愛されること……決して嫌いじゃないはずだよ?」

囁きながら、召使は再びカムクラの指を深く口に含んだ。
舌先で丁寧に絡め取り、舌と頬の内側で深く吸い上げる。下半身の動きを続け、足の柔らかな肉を重点的に擦りながら、わざと角度を変えて熱へと脈打つ先端を滑らせて、軽く擦り上げた。
それは奉仕のようでいて、同時に、カムクラの冷たい理性へ自分の熱を流し込むための、甘く執拗な侵食でもあった。

その一方で、召使のもう片方の手は、カムクラの視界の死角で密かに動いていた。
たっぷりと蜜で濡らした指先が、焦らすように。確かめるように。まだ触れられていない窄まりの輪郭だけを、ひどく執念深くなぞっていく。

一気に踏み込むことはしない。
ただ、今朝カムクラが自分へ与えた熱を思い出させるように、ねっとりと、逃げ場のない窄まりの皺の一つひとつを描きながら、少しずつ反応を引き出していった。
そんな召使の言葉と、不意に重ねられる甘い侵食に、カムクラの赤い瞳が、快楽の予感に不穏なほど静かに揺らぎ始めた。

……やっぱり、あなたのその盲目的な献身は不可解です」

長い指が召使の舌の上で小さく震える。秘められた場所は、硬い質量に擦られるたび、蜜を溢れさせ、さらに滑りを増していった。
召使は、指を扱う舌の動きに合わせて、下半身の律動も同じリズムで波打たせる。口と張り詰めた硬直、そして背後の指による三重の愛撫で、同時にカムクラへ丁寧な刺激を積み重ねていった。

召使の動きは祈るように熱心でありながら、どこか支配的だった。
自らの主人を、この手で導くことができるという想像。そして、それが決して不可能ではないという、確固たる確信。
それがどれほど烏滸がましく、不遜なことかは理解している。理解していながらなお、その揺るぎない事実に、召使の心はぞっとするほどの歓喜で満たされていった。
ご奉仕の名を借りた、甘く執拗な侵食で、カムクラの感情の欠落へ、少しずつ、少しずつ、自分の色を流し込んでいく。

常に揺らがない神経が、じわじわと熱を帯びていく。
腹の奥底から這い上がる甘い痺れ、秘部を擦られるたびに漏れる湿った水音、そして入り口を執拗になぞられる微かな刺激。
それらすべてが、カムクラの冷たい理性を少しずつ侵食していった。
抗いがたいほど深い泥濘が、静かに雪崩れ込もうとしていた。

「ふ……はっ……カムクラくん」

召使は、カムクラの反応を一滴残らず味わうような執着を込めて、籠った声で甘く名を呼ぶ。指を根元まで深く咥え込み、喉奥で絞るように吸い上げながら、腰の動きをさらに大胆に重ねていった。
カムクラの肉体に、確実に熱を刻みつけていく。同時に、自身の限界だけは、ぎりぎりのところで抑え込む。
二人の息が荒くなり、肉体が熱を帯びて同期し始めたその頃。
主寝室の扉が、控えめな音を立てて開いた。

…………遅くなった」

まだシャワーの湿り気を帯びた髪を後ろに掻き上げ、ガウンの前を乱暴に閉じただけの姿。
息はわずかに乱れ、白い頬は、内側からせり上がる熱で上気している。
カムクラの言う「準備」に時間をかけた分、日向の瞳には、抑えきれない熱と興奮が宿っていた。

彼はベッドの上の光景を一瞬で捉え、鋭い目を細める。
……お前ら、随分と楽しそうじゃないか」

日向の声には、剥き出しの苛立ちと、どこか楽しげな興奮が混じっていた。
扉を背中で閉め、獲物を追い詰めるような足取りで、ゆっくりとベッドへ近づいてくる。
その視線が、カムクラの乱れた表情と、召使の背中を交互に這った。

低く鋭い声音に射すくめられた瞬間、カムクラの身体がびくりと小さく跳ねる。
白いシーツを掴む指先に力がこもり、握り締められた布地が深く皺を刻んだ。

日向の微笑の裏に潜む、確かな殺気。それを感じ取ってなお、召使は至って悠長に、カムクラの指を口内から愛おしげに離した。
ぬるりと引き抜かれた指先から、銀色の唾液の糸がベッドへ滴り落ちる。
召使は満面の笑みを浮かべたまま、まるでお気に入りの客人を特等席へ誘うような、紳士めいた仕草で日向へと手を差し伸べた。

「やぁ! 日向クン、ちょうどいいタイミングだよ」