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みずか
2026-07-07 23:59:12
3311文字
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白バイ隊員のお仕事
浅葱先輩と千速さんで、保育園での交通安全教室に行くお話。後日書く予定の後日談で重悟が出てきます(この話はノー重悟の気配)
交通機動隊の仕事は、白バイで交通違反者を摘発することで事故を未然に防いだり、ひいては市民の安全を守るばかりではない。
違反者に反省を促すのはもちろんのこと、事故に遭わない為の心構えを広く伝えるのも大事な役目。
特に、好奇心旺盛で、まだ周囲へ十分に注意を払えない幼い子供たちには、交通事故に遭わないために、交通ルールを分かりやすく伝えるのも大事な役割の一つ。
管轄内の保育園から交通安全教室の希望を受け、交通企画課から第三交通機動隊に依頼が入ったのは、一ヶ月前。
白バイとパトカーを派遣して欲しいとの希望で、第三交機の中隊長は前後のシフトなどを確認。また園からあまり怖くないお巡りさんでお願いしたい、とのリクエストもあり、そうなるとこの二人だろうと即座に勤務予定を押さえた。
その二人が揃って巡回から戻ったところで、呼び止める。
「浅葱、萩原ちょっといいか」
「はい」
「来月、みなと保育園で交通安全教室がある。企画課から依頼があったんで、七日頼んだぞ。勤務予定は更新してある」
「了解しました」
浅葱がこたえると、中隊長は頼んだな、と部下達にエールを送る。
揃って入った昼休憩、話題は先ほど要請を受けた交通安全教室のこと。
「今回は保育園か
……
浅葱先輩は、こういった子供向けの安全教室って、行ったことありますか?」
「いや、初めて。萩原は前に行ったことがあったな」
「幼稚園でしたけど。年少と年中クラスで、なかなか賑やかで楽しかったです。最後は白バイ囲んで、一緒にマイムマイムしましたよ」
「マイムマイム
……
あのフォークダンスの?」
「はい。お礼に踊りを披露してくれて、誘われたので」
「
……
想像がつくな」
今回の任務ばかりは自分よりも後輩が頼りになりそうで、浅葱は少し胸をなで下ろした。
そして交通安全教室当日。
保育園に到着すると、先生方と挨拶をし、本日の段取りの確認にはいる。司会進行役は交通企画課の警部補で、幼稚園・保育園向けの教室を何十件と仕切っているベテラン。浅葱達とも事前に内容は確認しているだけあり、園庭での位置取りなどが主な確認事項。
園内に白バイとパトカーがやって来たと知って、打ち合わせをしている部屋を見ようと子供達が窓から一生懸命、部屋の中をのぞいている。
目があうと、千速は小さく手を振ってみた。
ぱぁっと笑顔になって手を振ってくる子、照れて顔を隠す子、さまざまで見ていて飽きない。もちろん、きちんと仕事の話も忘れてはいない。
いよいよ交通安全教室の始まり、園庭にパトカーと白バイを停め、浅葱と千速は自身の白バイの横に立った。
「みなさん、こんにちはー!」
「「「こんにちはーーーーーー!」」」
「おおー、元気があっていいなぁ。これから、みんなと交通ルールのお勉強をします。今日は白バイのお姉さんとパトカーのお兄さんと一緒に来ました。白バイのおねえさんは、浅葱さんと萩原さん。パトカーのお兄さんは伊藤さん。司会は、佐々木お姉さんです。よろしくお願いします」
司会進行の佐々木警部補の挨拶で紹介されると、浅葱と千速は笑顔で敬礼。パトカーの伊藤巡査部長も慣れているのか、こちらも敬礼すると、子供達も真似して敬礼を返してくれる。
「
……
可愛いものだな」
「そうなんですよ。まぁ、なかにはやんちゃなのも居ますけど、そこは先生がシメてくれるので」
いま一瞬、この場に似つかわしくない物騒な言葉が聞こえたが、浅葱はあえて無視を決め込んだ。
交通安全教室は、まずは基本の横断歩道の渡り方から。
司会進行にあわせ、悪い見本を千速が、正しいお手本を浅葱が演じ、横断歩道を渡る時は左右を見たらもう一回右、を子供にも分かりやすいように伝える。
みんなで練習したあとは、白線で書いた横断歩道での実践へ。
ここで浅葱と千速は白バイに乗り、横断歩道手前までゆっくり走って行く。実際に赤色灯を回転させて走る白バイに、子供達の視線は釘付。
千速は車道で待つ白バイ役として、横断歩道手前で停車。浅葱は、これから横断歩道を渡ってくる子供達を出迎える役として、渡った先で白バイを停めスタンドを立てた。
「それでは、みんなで横断歩道を渡るよー。白バイのお姉さんも、ちゃんと止まって待ってくれています。慌てないで、手を挙げて横断歩道を渡るけど
……
渡るときはどうするのかなー?」
佐々木警部補が子供達に問い掛けると、「右見るー」「左もみる」「また右」と元気よく答えがかえってくる。
伊藤巡査部長の先導で、子供はちゃんと左右を確認し、手をしっかり上げて横断歩道を渡っていく。
千速は子供達と目が合うたびに、にっこり笑って見守りに徹する。
渡りきった子供達は、待っている浅葱とハイタッチして、担任の先生のところへと戻る。
この繰り返しで、ひとりひとりしっかりと横断歩道を渡る時の心得を伝えていった。
浅葱は横断歩道で子供達を出迎える役目ながら、そこそこ人数が居るので最初に終わった子供達は若干飽きてくるらしく、浅葱のそばをちょろちょろして話かけたり、腰の帯角に手を伸ばしたりと、なかなかやんちゃをしてくる。
そうすると、どこからともなく現れた担任の先生が子供をスッと回収して去って行く。その手腕といったら実に見事で、確かに千速が担任がシメてくれる、と言うのも分かってしまった。
最初は微笑みながらハイタッチをしていた浅葱も、自然と「上手に渡れたね」「ちゃんとできたね」と一声かけながら、小さな手からパワーを受けとめていた。
こうして交通安全教室は無事に終わり、最後は園舎に戻ってのご挨拶。
通されたのは広めの遊戯室で、季節柄か笹飾りが並んでいる。
「それでは、交通安全教室で来てくれたお巡りさん達に、お礼のおうたを歌います」
ピアノ伴奏にあわせ、子供達が披露してくれたのは『ありがとうの歌』
保育園オリジナルの歌のようで、振付も一緒に、元気いっぱいな歌声が遊戯室に響く。
佐々木警部補と千速は見よう見まねで振付を真似て一緒に踊り、浅葱と伊藤巡査部長は手拍子で場を盛り上げる。
「元気いっぱいのありがとうのお歌、ありがとうございます。これからも、おねえさん達おまわりさんも、交通安全を守って頑張るので、みんなも事故にあわないように、元気に過ごしてください。今日は七夕なので、お巡りさん達も皆が元気に過ごせますように、って短冊を書かせてもらいました」
佐々木警部補の挨拶に合わせて、千速達もぺこりとお辞儀をする。
わー、と拍手が上がると、子供達はお巡りさん達の手を取り、こっちこっちと引っ張って行く。
千速も例に漏れず、左右の手に子供達をぶらさげたまま笹飾りに案内された。
「これ、ぼくのたんざく」
「わたしのお願い、これー。みえる?」
自分の短冊はこれ、とお巡りさんに見て貰いたくて、口々に自分の短冊を紹介してくれる。
「順番な、順番に見ていこうか。まずは
……
ひろ君。君の短冊は?」
千速は名札で名前を確認すると、名前を呼びながら短冊のありかを聞いて願い事をみせてもらう。
浅葱も似たようなもので、やはり左右の手を子供達とつなぎ、短冊をみせてもらっている。
短冊披露会の後、一緒に七夕の歌をうたって、交通安全教室は終了し、保育園をあとにした。
佐々木警部補・伊藤巡査部長を乗せたパトカーとは途中で別れ、浅葱と千速は第三交機へ帰還。残る仕事は、交通安全教室の報告書の作成だ。
「
……
子供のパワーはすごいな。あの子達が事故に遭わないようにしないといけないな」
「そうですね。先輩、ずいぶん懐かれてましたね。モテモテだったじゃないですか」
「それは萩原もだろう」
今日の出来事を思い返しながらも、浅葱はきっちりと報告書を書き進めていく。
「
……
どうせなら、短冊に報告書は免除って書けばよかったな」
冗談とも本気ともとれる、千速の真に迫った一言、浅葱は先輩として軽くお説教ならびに報告書が書き上がるまで監視、もとい、見守りをするのだった。
【了】
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