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かのまる
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伊剣ワンドロワンライ「わらびもち」
まとめてワンドロワンライのログを投稿します。
遅くなってすみません。
原作時空です。
セイバーは性別不詳です。
わらびもち
だいぶ日差しも強くなってきた卯の花月。
宮本伊織は額に浮いた汗を痣のある甲で拭う。
隣を歩くセイバーに目線をやると汗一つかかず涼しげな笑みを浮かべた。しかし
――
。
「あー!!」
大きな声で叫ぶと、セイバーはいきなり童のように走り出した。
三つ編みが猫の尾のようにしなり、手を伸ばしても捕まえられない。
しばらくして、遠くで伊織を呼ぶ声が聞こえる。
「よっ、浅草の名物夫婦!」
「相変わらず仲がいいねぇ」
もう慣れたと思ったが、周囲の冷やかしに伊織はまた一段と汗をかいた。
「まったく、勝手に離れるんじゃない」
頭上の声には耳も貸さず、セイバーは和菓子屋の前で目にキラキラと星くずを浮かべている。
「イオリ!このぷるんぷるんは何だ?」
「ぷるん
……
?ああ、わらび餅だよ」
わらび餅はわらびの根から作られた粉を使った和菓子だ。今がちょうど旬の菓子で、初めてわらび餅を見たセイバーは涎を垂らさんばかりにわらび餅に真剣な眼差しを向ける。
「なあ」
「ダメだ」
「何でだ!!」
セイバーのおねだりを一蹴した伊織に、当然セイバーは抗議の声を上げる。
「値段を見ろ、俺だって食べたことがないんだ」
「私だって食べたことがないぞ。なぁ、買ってくれないのか?」
うるうると大きな瞳で伊織を上目遣いに見つめる。
店の前で騒ぐより、己のつぶらな
眼
まなこ
で訴えた方が効果があることをセイバーはよく理解していた。
「仕方ないな、店主。
……
これを」
結局伊織は一番小さいものを購入した。内心ケチと思ったが、セイバーは黙ってわらび餅が包まれるのを待った。
「イオリ、ぬるくなる前にすぐ食べたい!こんなに柔らかそうなのだからすぐ食べないと溶けてしまう」
「さすがに溶けはしないと思うが
……
まあもう今日は帰るか」
伊織が丸い頭を撫でると、セイバーは勝ったと云わんばかりに笑った。
長屋に戻り、熱い茶を淹れる。
セイバーは改めてわらび餅をしげしげと眺める。
「すごいなぁ。金色の粉がかかっていて、つつくとふるふる揺れて
……
じゅるり」
「金の粉は大豆で出来ていて、きな粉と云うんだ。上方では黒蜜もかけるらしいが、江戸ではきな粉だけだな」
「うむ、楽しみだ!」
そう云うとセイバーは口を大きく開けた。おかしな行動に伊織は首を傾げる。
「ん。急にどうした?」
「柔らかくて落っことしそうだから、イオリが食べさせてくれ」
まるで燕の雛のような姿に、伊織はふふと口の端を上げた。
「はいはい、召し上がれ」
口の中にわらび餅を放り込むと、セイバーは夢中で頬っぺたを動かす。
「うまあい!!柔らかくて口の中でとろけるみたいだ。モチよりもずっと柔らかくて、素朴な甘味がいいな。このキナコが香ばしくて飽きが来ない」
目を閉じて、わらび餅を味わう姿。
伊織は丸い頬を思わず手で包む。しっとりもちもちと吸い付く感覚を楽しんでると、セイバーは頬を染めてふるふると震えていた。
「おっと、すまない」
「急に触られたらびっくりするだろう!」
「口吸いでもされると思ったのか?」
「んな
……
!?」
セイバーがみるみるうちに真っ赤に染まり、口をぱくぱくとさせている。図星だったらしい。
「ほら、きな粉が口の端についてるぞ」
伊織が口の周りの粉を舐めとると、セイバーが胸ぐらを掴んできた。
「ふん。イオリのイジワルめ!!」
伊織の口の中にじわりと甘い味が広がる。
わらび餅より熱くて柔らかいそれは
――
。
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