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asahito
2026-07-04 21:22:28
7720文字
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XYZ⑨
前作駒草太夫の現パロのお話はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/7583585
一部R18です
続編である今作の第1章(錦上京キャラ中心)はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/14625442
一部R18です
東方キャラが現代にいて、普通に人間として暮らしてたらを書いたお話です。
現パロの阿梨夜さんとユイマンって何月生まれなんでしょうね
結局あの人には会えなかったけど、ユイマンの為になりそうなことをひとつ得られた。それだけで心は幾分か重石が取れた気がした。
あの人に真面目に問い質すのは意味がないとは思っていたし。あの人は、私をはぐらかしても騙す事は絶対にしないから。
ならば。少しずつ研究をまた新しい切り口から始め。無駄な研究にならないように先を進むしかないのだ。ユイマンとの生活の為にも。
寒くなれば暖房費もかかるし。ユイマンの為の毛布や布団だっていいものがあれば解体。
小さい頃から暑い、寒いと口癖のように言う彼女は。暑がり寒がりだと周囲から揶揄われていたけど。服を着こんでも私に熱を求めることが多く、特に寒がりの癖は暑さよりも酷かった。
あーちゃん、さむいよ。冬になって一緒に帰っていると決まって手を繋ぎたがったり、抱き着いて私の熱を得て。私の熱に安堵する彼女を眺めるのが好きだったけれど。
成長して知識を得始めると世の中には体温調整がうまく機能しない病気もあるのだと知り。もしかしてユイマンは苦しんでいるかもしれないと、心配になっても。それを口には出せなかった。
私の背中の痣の様にどうやっても治らないものだったら、彼女を傷つけることでしかならない。日常生活は問題なく送れるし運動の成績もいい彼女だから、体温調整はきっと問題はない筈なんだ。そうは思っても。
冬に着込んだ彼女が寒さに顔を顰めるのを眺める度に、温めるものを私は欲する。躰の触れ合いでは温めきれない部分を温めて上げたい。無駄な私の熱をいくら与えても彼女の内臓や血を全て温め切ることはできないから。
お茶や漢方を調べることもあるけど、変な味がするから漢方は嫌だって言うし。お茶も買った所で私はコーヒーばかり飲むから結局余らしてしまう。
コーヒーとお酒。お酒はあの店主のバーに行くようになってから、ユイマンが興味を持って調べる姿をよく見るようになったし。元々酒豪の家系の彼女だ、きっとこのカクテルも気に入ってくれる。
店主がくれたメモを鞄の奥に大事にしまい、私はバーを後にする。店主が帰り際に安全な道を通るようにと私に言って来たので、言われた通りに脇道を通り交番のある通りを経由して帰っていく。
強めの酒を二杯飲んだためぽかぽかと躰が熱く。元々体温が高いため汗ばむほどだ。昔からなぜか体温は高い。背中の痣の部分は特に熱くて、疼いたり腫れたりするわけでもないのに感情が高ぶったりすると熱が高まる変な癖がある。
始祖鳥の痣。せめてもの慰めに、学芸員になるために得た知識をその痣につけたけど。この奇妙な痣は今も少し、熱を帯び始めている。
熱を保てるなら寒がりのユイマンを温められますように。彼女の事を考えながらカクテルのレシピをいつ練習してみようかと思案する。
無事に変な輩に絡まれることなく駅に辿り着き、改札を抜けて電車を待っている間に。
スマートフォンを取り出し、先ほどの店主のメモを撮影した画像を眺めた。無くした時の為に画像を先に撮影しておくことは大事だ。
コーヒーや生クリームはスーパーで売っているものでも十分に美味しいと聞いたけど、肝心の酒はあまり耳にしたことのないものであった。アイリッシュウイスキーとあるが、ウイスキーも産地で異なるというのか。
いつも父が飲んでいる銘柄は取引先から頂くもので、買い物もお手伝いの人がしてくることが多かったからスーパーにその銘柄があるか分からない。でも、ユイマンとよく行くスーパーの洋酒コーナーを見ても店主が見せてくれた瓶は見覚えがなかった。
『専門の店とか、酒屋に行った方が手に入るかもしれませんね。もしくは通販って手もありますが』
店主は丁寧に酒の入手方法も教えてくれたが、通販で買うとユイマンが見つけてしまった時に問い詰められるだろう。正直彼女を驚かせたい気持ちもある。
地図で検索すれば思ったよりも多く酒屋は点在しているようだ。勉強も兼ねて、こういった店で酒を選ぶことも大事だろう。今は無理でも、知識をつけて行けばそのうち何か分かるかもしれないのだ。
職場から行けそうな場所をチェックした後に、ホーム画面に戻りメッセージアプリの通知が複数来ていることに気付く。
そこで私は、肝心な事をずっと忘れたまま今に至る事を思い出し。慌ててメッセージアプリを開いた。
ユイマンからのメッセージやスタンプ。最初は私に今日は残業して帰るのか質問するメッセージだったけど、あの店主のバーで飲んでいる時間帯になると今どこにいるかのメッセージに変わり少し苛立ちが垣間見える内容であった。
添えられている鹿のスタンプも怒っている鹿の顔であり、それはまさしく彼女の気持ちの代弁であろう。
いつもは私の方がメッセージを送って彼女に色々と聞いてしまうのに。私がユイマンを無視してあれこれしていたなんてばれたら、きっと彼女は臍を曲げる。やましいことはしていなくたって。
「少しカフェと本屋で寄り道してたからすぐ帰るよ
……
っと」
寄り道はしてたがあそこはカフェではない。いやでも、コーヒー飲んだからカフェってことにならないかな、ならないか。
こんな時に限って電車はすこし遅延気味で。この路線が遅れるとなると、最寄り駅に辿り着く為の乗り換え駅に着くのも遅れるだろう。運が悪い。
メッセージをユイマンに送って謝罪する恐竜のスタンプもつけたが。そのメッセージは既読になることはなかった。何か別の事でもしているのだろうか。
ユイマンは今日は残業せずに帰ると言ってたから家には着いているだろう。私の方が遅いと思って食事の準備をしていたら申し訳ない。ご飯を食べて帰るとは言ってないから、用意したまま待っているのかもしれないと先に食べていていいと追加でメッセージを送る。
しかし、既読はそのメッセージにもつかなかった。
少し不安になりつつも。遅れていた電車が駅に到着すると言うアナウンスが流れたのでスマートフォンを鞄にしまい電車に乗る準備をする。
遅れた分だけ人が増えるホーム。やっぱり、この駅は来るのに精神も体力も使う。あの店主もこの路線を使ってるのなら、嫌気が差したりしないのだろうか。
電車を乗り継ぎ、人混みを掻き分け最寄り駅に向かうための電車に座ると。途端に瞼が重くなり、そのまま私はうつらうつらと居眠りをしてしまった。
次に起きた時は最寄り駅に到着する寸前で慌てて電車の掲示板を見上げれば、眠っていた時間があっという間のような感覚だった。電車で眠ってしまうなんてあまりないのに。疲れと酒のせいだろうか。
鞄や貴重品などは抱えて持っていたので盗まれてはいなさそうだけど、ある程度中身を確認し安全が分かってから私は電車を足早に降りた。
夜道を歩きつつマンションの方へ向かっていると、マンションから少し離れた道で誰かが複数人で立っているのが見えた。
ここは人よりも車の通りが多い道であり。ああやって立っている人間はあまり見ないため目立つ。暗さではっきりと顔が見えないが、通りがかりの車のライトが当たるとそれは見慣れた顔であった。
「あー、やっと帰ってきた。遅いじゃん眼鏡」
「
……
馴子?チミさんも」
立っていたのは管理人のチミさんと孫の馴子だった。制服を着たままということは、学校から帰ってそのままここに来たのだろうか。
管理人の勤務時間はとうに終わっているはずなのに。マンションにまだいるのは何故なのだろう。私を待っていたかのように立っているし。
「どうしたんですか。管理人の勤務時間は過ぎてますが
……
」
「どうもこうも、原因はあんたじゃよ」
私の疑問に管理人は呆れたように言う。私が原因って、どういうこと。
「それがさー。婆ちゃんと仕事終わりにスーパー行ったんだけど、マンションの前通りかかったら銀髪がうろうろしてるんだもん」
「ユイマンが?」
家にてっきりいると思っていたのに。馴子がマンションのエントランスに入って行き、共有部の方に声を掛けるとユイマンがこちらに向かって来た。
表情は、とても不機嫌そうに。
「お前さんが帰って来ない、連絡がないと心配しててな。危ないからあそこに座って貰ったんんじゃ」
「
……
」
管理人と馴子の話でだいたいは理解した。私は遅くなる時は必ず何時くらいに帰るかとか、最寄り駅には何時に着くとか連絡を入れるのに、それを失念していたからユイマンが心配で外に出たのだろう。
最寄り駅に向かって私を探しに行くこともできただろうが。行き違いになることや、今度は私が心配すると思ってここまでに留まったのだろう。
「阿梨夜。やっと帰って来たの?」
「その
……
ごめん、ちゃんと連絡しなくて」
「私が何度も携帯に連絡したのに何時ごろ帰るかも返さないし」
ユイマンは怒りの感情をふたりの前では抑えているが。これは、かなりの鬱憤を溜め込んでいる。瞳の色や瞳孔が怒りを纏っているのは明らかだ。
もう謝るしかない。こういった喧嘩を二人に見られるのは気まずいしばつが悪い。
「ワシら帰ってもいいか?明日塵塚のとこのゴミ収集が来るからの」
「あ、私も。期末テスト近いし」
険悪なムードを察した二人はスーパーの買い物袋を手に帰ると言い出した。その助け舟が有難かった。
「ええ、とんだご迷惑を
……
」
頭を下げて帰宅するよう促すと、馴子は私の肩をポンと叩き、本当銀髪は不安そうだったんだよとこっそり教えてくれた。
そのさりげない言葉に、心が酷く軋む。帰らないことへの不安の辛さは私が一番分かっていて。残業に追い詰められるユイマンに何度も連絡した事もあったのに。
二人はここから少し離れた家に帰ると言ってそのまま手を振って帰って行き。ユイマンは二人がが遠ざかっていくのを見届けている。
今、ただ自棄酒を飲んで帰ってきたなんて言ったら。ユイマンが鋭い牙を剥いて大蛇モードに豹変するだろう。
店主に帰り道でたくさん水を飲んでおけと言われ素直に従っておいたが。おかげで酒臭さは誤魔化せたか。
途中何度かお手洗いに行く羽目になりそれも帰りが遅れた原因であれど。店主の助言は正しいものであったろう。
「寄り道するなとは言わないけど。ちゃんと帰る時間教えてよ
……
どこにいるかも分からないし」
最寄り駅までの電車の中でいくらでも送る時間はあったろうと言われたが、酒と疲れですぐ眠ってしまい乗り過ごしかけたのだ。
降りた後も頭がぼんやりとして、歩きながら携帯を見るわけにもいかずそのまま家に帰ったのがいけなかった。
寄り道してこれから帰るよ、だけでは不安だったのだろう。喧嘩の痕はやはりすぐには直らない。
「本当ごめん
……
寒かったよね、家に入りましょう」
私はユイマンの頬に手を伸ばしそっと触れる。コートを羽織っているとはいえ彼女の頬は、外気に触れてひんやりとしていた。
「
……
ばか」
私の手は熱を帯びているからユイマンにとっては心地の良いものだろうけど。熱に安堵して笑ってしまえば私への怒りが消えてしまうから。
珍しく私を罵倒する精一杯の言葉をぶつけて彼女は目を閉じた。不服そうに、私の手にやさしく掌を重ねて。その手は長く外で待っていたのか、元からの体温のせいなのか、すぐ温めて上げたくなるほどに冷たい。
すぐにでもあのお酒をユイマンに飲ませてあげられたらと思うくらいに。
エレベーターを上がって玄関の鍵を開けて二人で帰宅すると。すぐにユイマンはドアが閉じるのを見計らい私に抱き着いてきた。
私が帰りが遅くなることは、頻繁ではないけどない訳ではないのに。どうして今夜はこんなにも不安定なのかと、少し不思議でもある。私が連絡しなかったのが悪かったのが一番だけど。
普段の彼女なら運動や動画でも観て気ままに時間を潰している筈なのに。
玄関のドアに躰を預けるようにして彼女の躰を抱きしめ返すと、そのまま唇を求められる。今、唇を重ねるとお酒の匂いがばれてしまうかもしれないと危惧するが。
拒否する方がよほど不自然になるため素直に応じ唇を重ねる。ばれてしまえばその時は頭を下げて謝るしかないだろう。
「ちゃんと連絡しなくてごめんなさい。心配かけたよね」
唇を離し彼女に謝罪すると、ユイマンは唇に手で触れて何かを確かめているようだった。鼻の利くユイマンだから気づくかと一瞬ぎくりとするが。
「
……
コーヒーの味がする。本当にカフェに寄ってたのね」
お酒の匂いはコーヒーが掻き消してくれたようで、いい豆を使ってくれた店主に心の中で感謝する。
玄関でいつまでも抱き合っているわけにはいくまい。靴を脱いで中に入ろうと促すと、ユイマンはそれに従って一緒に靴を脱ぎ始めた。
リビングには飲みかけのお茶だけが置いてあり。彼女はずっと私を待っていて、それでも耐えきれず外に出てしまったのだろうか。
ユイマンが激務の時に私も冷めた夕食の前で何度溜息を吐いたか分からないから。気持ちを感じ取り、また心の中で詫びる。
鞄を置くために自分の書斎に入りコートを脱いでいると。ユイマンも部屋に入って来て、ベッドの上に腰かける。
「普段なら連絡すぐ返してくれるのに、よっぽど考えたい事でもあったの?」
いつもの私と違うから、こうなったのだろうと。彼女は察して尋ねるのだろう。あの不可解な出来事を店主に話しても納得できなかったのに。ユイマンに話したところで彼女を困らせるだけではないか。
鞄の中に入っている店主のメモは見つからないように奥に押し込める。かと言って何でもないと隠すのも彼女を不機嫌にさせる。
「
……
実は研究が頓挫してね。一人で考える時間が欲しかったんだ」
あの人を探してバーに行ったことは言えなかったけど。考える時間が欲しかったのは事実だった。嘘は付いていないけれど。
ユイマンの前で悩み続けるのは厭だ。彼女の前ではなるべく苦手でも明るく振る舞いたいと思っている。
「頓挫って、解決すれば何か見つかるかもしれないってこと?」
「そうならいいんだけど。これはもう打ち切りって言った方がいいかな。研究する必要がなくなったの」
ユイマンの励ましが辛い。でも、プロジェクトだって打ち切られることがあるんだからそれと同じだという事はユイマンも分かるはずだ。
私の言葉にユイマンは言葉を続けるのをやめ。悲し気に俯く。
「
……
そう。あんなに一生懸命調べてたのにね」
「海外の論文とかも見たんだけどなあ」
力なく肩を落とす私にユイマンは傍に来るように促し。私が隣に腰掛けると労うように頭を抱き寄せてくれた。
「阿梨夜はちゃんとやったんだから、落ち込まないで」
「
……
何かが起きる前に気づけて良かったかも。嘘の論文を大々的に出さなくてよかったよ」
AIにお願いすれば偽りの論文など数分で書き上げてしまう時代に。自分の労力をかけて偽りを作り出してしまうなんてのは、とんだお笑い種だ。
「間違っている論文だって世の中に沢山あるんでしょう?」
「それで何人もの人が死ぬこともあるんだよ。一回の欠陥であろうとずっと詰められるのは
……
ユイマンも知ってるでしょう」
少しでもシステムが遅延すれば何故欠陥があるのかと、分からず屋どもに叱責される。
誤りは誤りであると言う私の言葉に。彼女の手の力が強まるのが分かる。彼女に守られていると、安堵が胸に湧き上がる。彼女を守りたいと思っていても。結局は守られている。
「今夜はどうしたい?阿梨夜がやりたい事があったら一緒にしましょう」
「私の、したい事は
……
」
こんな状態で論文のような本を読む気にもなれない。かといって、ユイマンに慰めを求めてベッドの上で縋り付くのも違う気がした。求めれば私が疲れ果てるまで抱いてくれるだろうけど。
それは安易に逃げの性欲に縋る事になる。仕事の苦しみを伴侶にそのままぶつけてしまうのは、ユイマンの古い傷を抉る。
「お茶が飲みたいな。あとは温泉旅行の動画でも観てゆっくりしたい」
その言葉にユイマンは笑い。会社で旅行に行って来た人から頂いたお茶があると教えてくれた。その笑顔はいつものユイマンだった。
「ユイマン」
だからこそ今夜の行動を尋ねてみたくなる。
「何?」
「今は寒いし暗いからあまり外に出ちゃダメよ。ちゃんと、遅くなる時は連絡はするから
……
」
チミさんと馴子が偶然ユイマンを見つけてくれたから安全だったけど。綺麗な彼女を狙う輩はいるかもしれない。
私が叱れる立場ではないだろうと思うが。ユイマンは困ったような顔をして私の顔を覗き込んだ。
「
……
ええ、そうね。どうしてあんなことしたのかしら。お月様が綺麗だってSNSで皆が騒いでるからベランダから月を見ただけなのに」
「月?」
「眺めてたら急に阿梨夜が心配になって、我慢できなくて
……
」
説明をしつつも彼女も理由は分かってないようだった。ただ、月が彼女にとって禍々しいものかもしれないと私も感じた。月などいつも空にある満ち欠けなのに。
「満ち欠けが精神に作用するって説もあるから、そういう気分になったのかもね」
頭を抱いてくれている彼女の腕を解き今度は私が彼女を抱きしめる。奥底からの愛おしい気持ちと、ユイマンを抱きしめていなければいけない気が急に襲ってきて。強く腕の力を込めた。
「大丈夫よユイマン。私がいるから」
「うん
……
」
私が動いたことにより鞄に足が当たり、中から石がひとつ、零れ落ちる。
それはあの人から貰った石のひとつだった。大事に別の袋に入れておいたのに、動いているうちに出てきてしまったのだろうか。
私の腕の中から抜け出したユイマンがそれを拾い上げると、その石をじっと眺める。
「変わった石ね。見たこともない色というか」
「その石の研究をずっとしてたんだけど、結局普通の綺麗な石だったみたい」
パワーストーンのお店とかでも色んな石があるから。その中の変わったものだけを集めればひとつくらいはこういうのもあるだろう。
あの人が騙すとは思えないけど。この石はただの石でしかないのは、あの人たちの手によって証明されてしまっているのだから。
「綺麗な石だけど
……
なんだかこの石は懐かしい気がするの。私の実家みたいな
……
」
「実家みたいな石?似たような石の置物とかあったかしら」
「ないと思うけど、久しぶりに神奈子たちに会いたくなってきちゃった」
ただの緑がかった石といえばそれまでだが。ユイマンはその石が特に気に入ったようだった。研究の心を刺激する謎を秘めた石も良いが、純粋に綺麗な石というのも良いのかもしれない。
「じゃあ、うちの玄関にでも飾っておこうか
……
自戒も込めて」
過去の血縁とただの石に散々振り回された数か月間は。慌ただしくも、やっと激しい変化をやめて穏やかな日々へと戻った気がした。
続く 次回、最終回です
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