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うずめび
2026-07-04 20:22:22
2346文字
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聖遺物と剪定の話 書きたい場面のみ
よくある全部終わった後に聖遺物になってしまったぐだ♂と、それに呼ばれたジョンとリチャードの話。性質上死ネタを含みます。
前提として人理修復が終わり、両想いではあるけど平穏な人生を願った・願われたために互いに思いを告げなかったジョンぐだ♂の二人がいます。
リチャードは二人の仲を察してたし、それはそれとして全部が終わったら焼かれてもいいよを言われたことがあったり。こちらは同じ受刑者の仲といった感じ。
最後は剪定事象になったこの世界に正しい世界の立香がきて、剪定されておしまいになる感じかなとか想像してました。悲しすぎるので小ネタどまりですかね……
―――
お前は必ず日常に帰るんだ。日々の取るに足らないことに追われて、それに一喜一憂して最後には楽しかった、と穏やかに笑える人生を過ごして欲しい。
人理修復が本当の意味で終わり、カルデアで別れるときにジョンから言われた言葉を思い出す。それに立香も頷いたはずだ。平凡に幸せに生きていくと。最後に優しく笑った顔が綺麗で、愛おしくて。
――――
どうせならあの時、最後だから好きだと言っておけば良かった。困らせてしまうから言えなかったけれど。
「
………
………
」
ぶつりぶつりと何かが途切れ、千切れていくなかで、思い返すのは昔の優しい記憶ばかり。穏やかに笑う面影を思い出して、けれどもよぎるのは約束を破ってしまった悲しみだった。幸せになってくれと願われたのに、きっと今の状況はそうではないから。
世界を滅ぼした代価と思えば立香としては当然の報いと受け止めても、あの人からすればきっとそうではなく。願えばきっと来てくれる確信があったが、それゆえに願うわけにはいかなかった。忘却補正があるアヴェンジャーであればこそ、最後には優しい記憶だけ持っていって欲しかったから。
あのお人好しのマスターは最後はきっと平凡に終わったのだと、そう考えてくれるならそれでいい。優しいあの人はこんな薄暗い工房も血の臭いも知らなくていい。
随分と懐かしく優しい気配に呼ばれた。いつかの旅路で愚王である人に寄り添ってくれた、たった一人のかけがえのない人。
(
―――
立香?)
人理修復は終わり、カルデアも平穏にその役割を終えたのを確かに見届けたはずなのに、どうしてまた呼ばれるのだろう。
(また何かに巻き込まれたのか)
いつかに時間が巻き戻った騒動があったから、似たような事があったのだろうか。ならばわずかであってもあの子を助けてあげたかった。一度別れてなお大事な人を、迷惑だと告げはしなかったが愛しい人の傍にいたくて。
「立香、いったい何が」
「ああ、ようやく成功したぞ!」
召喚先でジョンは立香に声をかけて、けれども返ってきたのは見知らぬ男の声だった。実験は成功した、聖遺物として機能したんだと歓喜にわく無数の人の群れの中、ジョンはそれを見た。
―――
否、見てしまった。床の片隅、台座に恭しく置かれた愛しい人の一部。涙の跡が残るその顔を。
「
……
りつか?」
すきなひとにあえたらな。けれどあのひとをまきこむわけには。のぞんだらきっときてしまう。
やさしいひとだからきっときずつく。だからきてはだめ。ひとりでおわりに。すてきなおもいでだけあのひとにはもっててほしい。
ああ、でもさいごにきもちだけ。じょん、だいすき。ざでも、どこでもいいからずっとしあわせでいてね。かなうならもういちど、きみとおちゃがしたかったな。
以後、肉体及び精神反応の消失。霊魂は実験による磨耗により捕捉不能。以後、肉体に対する聖遺物化の研究に
―――
そこまで読んでジョンは報告書を握りつぶした。こんな言葉を残すならなぜ、もっと早く呼んでくれなかった。立香が損なわれ、失われるぐらいなら俺の心など。
リチャードは呼ばれるときに声を聞いたのだという。あなたの大事な弟を傷つけてしまう。だからどうか傍にいてあげて欲しい、と。リチャード。先に焼かれて待っているね、と炎に包まれてそれきり。
その言葉にジョンはさらに涙を落とす。立香、立香。俺の星、極点にあるただ一人の尊いきみ。なぜ、君がこんな最後を迎えなければならなかった。取るに足らない日常に帰ると約束しただろう。平凡に幸せに生きていくと。
「俺には忘却補正がないから曖昧だが
……
確かにこの子は大事な人だったという記録がある。世界を救う旅に身を投じて、故に共に歩く無二の友人だったはずだ。煉獄に行くならともに、とも」
「っ、あにうえの、ししのすがたをみても、めをそらさないでやさしくわらうひとでした。もし、あにうえがほんとうにけものになるなら、いっしょに、とめてくれると、やくそくして」
こんな俺の傍に立ってくれた優しいひと。お兄ちゃんに困ったら一緒に頑張ろうねと。一緒にと言ったのにどうして。君は俺に一人にならないようにと兄上まで呼んだのに、なぜ君はただ一人で体を切り刻まれ魂まで焼かれて。ーーーああ、耐えられない。
器ががらりと入れ替わる。若やいだ姿は内側でずっと泣き続けているのを感じた。枯れた姿でさえ耐えがたいというのに、あの姿ではあまりにも。
「ジョン、その姿は
……
」
「私にはいくつかの姿があり、その一つですよ兄上。この子を慈しみ、同い年の友人のように過ごした若やいだ私にはあまりにも酷ですから」
兄上にそう語り、腕の中にいる子を撫でた。ああ立香、君のが先に燃え尽きてしまったのか。随分と小さくなってしまって、これでは若やいだ私と一緒に歩くことはできないだろうに。若やいだ私は君の隣にいることがいっとう好きだったのだよ。そして私もまた。見上げてくる瞳が愛おしかったのに窪んだ眼窩が痛ましくて。
「兄上、私はこの世界が剪定されるように動きます。私の星が斯様な終わりを迎えたこと、それを正史として成り立たせることを許すことができない。愚かな弟だと、人理に背くつもりかとお笑いになりますか」
人理のため、あまたの人のためにあれほど尽くしたのに、最後にはそれに磨り潰された悲しい人。過酷な過程があるなら幸福な終わりがあるべきだったのに。立香。私の愛しい君、極点にいたはずの尊い星。君なき人理など必要も意味もない。たとえ君がそれを望まずとも。
―――
いずれ正しい世界に選ばれた君が私もろとも剪定してくれるまで。
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