みやこ
2026-07-01 22:47:42
2446文字
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鬼神原ぐだ♂Part4

曇らせパートはここで終わりになります。次で最終話になるかと…‼️最終話は全年齢か、全年齢+🔞にするかは考え中……

────時刻は夜十時。

立香は、とある廃墟に居た。
そこはかつて、自身が生きていた場所。

(りつかは、ここで原田さんと出会った)

あの時はただ、消えたくなかったから。

消えたくなかったから、原田にしがみつくようにして着いて行った。

門前払いする訳でもなく、暖かく迎えてくれて。まるで本当の家族のように接してくれた。



それが今ではどうだろうか。消えることを切に願ってしまっている。

(もう、いなくなりたいな)

窓ガラスの埃を、小さな手で拭う。

社の中では血色が良かった肌も、彼処での加護が無ければ死人同然の色。

青白い肌に、乾燥した唇。生気の宿っていない瞳。

そして、消えかかっている爪先。

社から距離を置いた影響もあり、立香の魂は消滅への歩みを加速させていた。

そして、立香はふらふらと覚束無い足取りで寝台へと向かう。

寝台、と呼んで良いのだろうか。人間の体液……それも血液のようなものがこびり付いた、鉄製の台。



そこに小さな身体を投げ出し、目を閉じる。

(だいすき……だったなぁ………)

ちょっとだけでも、いっしょにいれてうれしかったなぁ。




………香!」

意識を失う間際、大好きだったあの人の声が聞こえた気がした。







───数刻前。
家臣達の制止する声も聞かず、原田は着の身着のままで社を飛び出した。

ただ一つの可能性に賭けて、山を越え、ビルの屋上を次々と飛び越えていく。



そして漸く辿り着いたのは、かつて孤児院だった廃墟。

正面扉を蹴破り、中へと入っていく。



居るとするならば、彼と初めて会った場所。

そこに居なければ、もう探しようも無い。



原田は常に最悪な事態を考えていた。

魂だけの存在を、現御神としての加護でどうにか現世に留めていた。

それが、急激に自分から距離を取ればどうなるか。想像に難くない。



一縷の望みを抱き、一室の扉を開ける。



部屋の中心に設置された鉄台。

……………見つけた」



……その上に彼は寝ていた。
身体は今にも消えそうだった。

…………立香!!」

原田は急いで駆け寄り、立香を抱き寄せる。

……返事は無い。

………おい!立香!!」

かくん、かくんと身体が揺れるだけ。




心臓の脈動が早くなるのを感じる。


嫌な予感が、現実になろうとしていた。


……………?」




腕の中にある小さな魂が、どんどん冷えていく。


……嗚呼、これは非常に不味い。




原田は即座に廃墟を抜け出し、社へと急いだ。

手元に抱いた、小さく冷えていく魂を抱えてただ走り続ける。





「は……………はぁっ………

息も絶え絶えになりながら、どうにか社へと戻る。

立香の身体は、既に冷え切ろうとしていた。

……原田様!皆の者、原田様と立香様がお戻りになられたぞ!!」

社に戻った原田を見るや否や、家臣達が飛び出して来る。

「立香様は…………嗚呼、なんて事だすぐに処置を致します!」

「貴方様の迅速な対応に感謝致します。原田様も、本日はお休み下さいませ」

家臣の言葉を遮り、原田は立香の元へと向かった。

「いや、俺はいい……とにかく立香を……

家臣たちの間から見える、だらりとぶら下がった手足が鮮明に焼き付いた。








─────翌朝、午前九時頃。

………………………

立香は、自室の布団で目を覚ました。


「あれ…………?」

自分は確か、昨日廃墟に居たはず。どうしてここに……

首を傾げていると、襖の向こうから声がする。


「立香様、おはようございます。入ってもよろしいでしょうか?」

「あ、はーい」

すーっと襖が開き、家臣が入ってくる。

立香に家庭というものを教えた、例の家臣である。

……改めまして、おはようございます。ああ、良かった……無事回復されたのですね」

あともう少し遅かったらと思うと……と、家臣はその場で泣き崩れた。

「あ、あの……りつかはもうだいじょうぶだから……!なかないで……?」

「はい、ええ……そうですね。立香様がご無事で何よりです……!」

朝餉をお持ち致しますので、少々お待ち下さいませ。

そう言って家臣が退室した後、立香は改めて部屋を見回す。


視界は良好、意識も鮮明。爪先の感覚もある。

ふと、両手で自身の頬を持ってみる。

……じんわりと温かい。

(ぜんぶ、もとどおりになってる……)

昨日の死人のような身体が嘘みたいに回復している。


「ごはんまで時間あるし、顔あらいに行こうっと」

そっと自室を出て、洗面所へと向かう。



洗顔と歯磨き両方やったせいか、かなり時間が押していた。

早く戻らないと、家臣がまた自分を探してしまうだろう。

そう思い急げば、何かとぶつかってしまう。

「わわっ!?」

……目の前には、見覚えのある袴。

立香が恐る恐る上を見ると、原田が自分を見下ろしていた。



「ぁ……………

昨日、勝手に社を出たから怒られる。そう思い、ぎゅっと目を瞑る……が、突如として何かに包まれる。

……?」

恐る恐る目を開けると、原田が屈んで自身を抱き締めていた。

……無事だったんだな……良かった……

原田の優しい声が耳元で響く。
その瞬間、涙が堰を切るように溢れ出す。

「うぁあぁあ゙ぁ……ごめんなさい……ごめんなさい…………

自分を抱きしめてくれる体温が。頭を撫でてくれる大きな手が酷く優しくて。

原田を小さな身体で抱きしめ返すように、立香はただ泣いた。

やっぱり、およめさんになれなくても原田さんをきらいになれない。

もう少し、もう少しだけ……原田さんのとなりにいさせてください。


そう願いながら、ただ原田を抱きしめ返していた。