🦕
2026-06-29 22:32:05
2202文字
Public
 

暗め

放課後
雨が降りそうな曇り具合だ
きっともうすぐ降るだろう
みんなあちらこちらに散らばっていく
長い授業を終え遊びに行く生徒や教室に残っておしゃべるをする生徒部活に行く生徒などさまざまだ

「ねぇマオ今日一緒に帰らない?途中でさゲーセン寄って
「ごめんゆうぎ今日は用事があって少し学校に残らなきゃいけないんだすごく時間がかかりそうだからゆうぎは先に帰っていてくれないか?」
うんいいよ」
マオは急いでどこかに消えてしまった

クラスメイトはいるけどマオがいないひとりぼっちの教室
空模様とおんなじで僕の心もどんよりしちゃう
ゆうぎは机の中にあるプリントの塊をカバンに詰め込んだ
仕方ないよねマオの事情だから僕がわがまま言ってもマオを困らせちゃうだけだよね


ゆうぎは歩き出して出口に向かった
どんよりとし少し薄暗く青みがかった雨が降りそうな曇りのあの独特の天気だった

下を向きながら歩いていく
もしマオに用事がなかったら今頃僕たちは
そんなことばかり頭に浮かんでくる
湿った空気が心に入り込んでくる
頭はどんどん暗いことを考えてしまう

曇りのせいにしてしまおう

突然肩に強い衝撃を感じた
ぶつかった
運の悪いことにガラの悪そうな人に
「ごごめんなさい僕よそ見してて
「はぁ?ごめんなさいだぁ?よそ見してたくせにごめんなさいで許されると思ってんのか?あぁ?」
ガラの悪そうな男が2人
どう見たって僕より身長が高い
挟まれてしまって逃げ場がない

マオは今いない

「ちょっとお前こっち来い」

僕は手を掴まれて裏路地に引き摺り込まれる
天気が悪いからなのか周りには人がいない

僕は抵抗できずに裏路地の奥に入っていく

「あぁ痛いな、この痛みどうやって治してくれるんだあぁ?」
僕は何も言えずに俯いてしまう
「そうだこいつにもおんなじ痛みをあわせるってのはどうだ?」
「いいなそれ」
手をポキポキと鳴らす

あぁまだなんだ
もう慣れていた
治安が悪いこの町では日常茶飯事なのかな
それとも僕が原因なのかな

お腹に強い衝撃が加わった
痛い
シャツ一枚じゃ僕を守ってはくれない

痛みに悶えて丸くなる
しかし手は止まってくれない

じわじわとしかし確実に僕を追い詰めている

ぽつ__

ぽつ______

雨粒が落ちてきた

しかしまだ手は止まない
視界が歪んでいく
痛みと雨粒の冷たさが容赦なく僕の体を襲う

「ふこれくらいで勘弁してやる」
「行こうぜ土砂降りになる前に」


二つの足音が遠ざかっていく


僕はアスファルトの上で横になっている


…………マオ」








教室の窓から外を見る
もう外は暗くなり始め雨も強くなっていた
今日用事とは言えゆうぎの誘いを断ったことが少し心に引っかかっていた
もしオレに用事がなかったらオレはゆうぎと
考えるのをやめた
考えたところで何も変わらない
帰ろう

マオは校門をすぎ
バス停でバスを待った


冷たい雨がバス停の屋根に容赦なく打ちつけている
冷たい空気が心に入り込んでくる
明日になったら
明日なら
きっとゆうぎと



マオはバスに乗り込む
雨の日のバスは混むため座ることができなかった仕方なく吊り革に捕まり
ぼんやりと外を見ていた

バスが信号で止まった
ぼんやり見ていた窓の外に
不思議なものが写っている

裏路地の前に靴がある
あの靴はゆうぎと同じ……

嫌な予感が胸の中に広がった
考えたくない
だけど心臓の音がそれに反して強くなっている
まだ停車駅じゃないけどマオは停車ボタンを押した
まだ止まらない
耳元で心臓の音が聞こえるくらい激しい

バスが停車したと同時にマオは飛び出た


雨に濡れている
でも関係ない


走る


息を切らしながらマオは問題の裏路地の前にきた
間違いないこれはゆうぎの……

マオは裏路地の中に入った

雨に打たれながら小さく丸まっている
ゆうぎの姿があった

「ゆうぎ‼︎」


ゆうぎの体を起こしなん度も呼ぶ
「ゆうぎゆうぎ!ゆうぎ‼︎」

ゆうぎが静かに目を開けた

……まお?」


ぼんやりとした目がマオを見ている

「ゆうぎ何があった
……まお僕ね」

「僕、雨が好き」

「僕が泣いても雨が隠してくれるから


「それに泣いていることも雨のせいにできるから

マオは静かにゆうぎを抱きしめた
冷たい濡れた体を

オレは雨が嫌いだ」

「雨は笑顔を隠してしまう

冷たい雨が2人を打ちつける

「雨は

マオはぎゅっとゆうぎを包む腕に力を込めて強く抱きしめた

「雨は、オレの大切なゆうぎの暖かさを奪ってしまうから

ゆうぎは何も言わなかった
マオも何も言わずにゆうぎを抱きしめている


ゆうぎの冷たい体温がマオの暖かい体温に反応している
じきに消えてしまう体温に


「もう離したくない……もうどこかにいってほしくない体温も笑顔もゆうぎの全て」




ゆうぎは何も言わずマオを抱きしめた



僕は雨が好き

僕が泣いていても隠してくれるから

泣いていることを雨のせいにできるから


雨に濡れて冷たくなってもマオが温めてくれるから




マオの体温を肌で感じられるから