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みやこ
2026-06-29 21:09:37
2313文字
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鬼神原ぐだ♂Part2
昨日上げたPart1の続きになります。二人がそれぞれ別の場所で家臣とお話してるだけ。
Part3は近日中に上げられればと思います‼️
小鳥のさえずりが聞こえる。
「
……
おーい、立香」
原田の声掛けに、立香はパチリと目を覚ます。
「
…
おはよ
……
ございます
……
」
二度寝したいと言わんばかりに、布団の中でモゾモゾと丸くなる。
原田は、「立香が寝起き良くないの珍しいな」と思っていた。
彼の知る限りの立香は、自分よりいつも早く起きていて「おはようございます!」と挨拶をしてくるのだ。
「
……
随分と寝坊助だな、立香」
フッ、と口端を上げて立香の前髪を撫でる。
立香は、原田の心地の良い声を聞いてご満悦と言わんばかりに笑った。
「
……
は?」
家臣の言葉を聞き、原田は固まった。
「ですから、昨日
……
立香様と舞を拝見しに伺いまして
…
」
それでよくお眠りになれなかったのかと、と家臣は続けた。
「俺は、立香に舞の姿を見せるなって再三言ったはずだが?」
「ですが
…
立香様も目を輝かせて『見に行きたい!』と仰っておられましたし
……
」
何故、舞を見られるのが嫌なのです?と逆に質問をされる。
原田は座布団の上にどかっと座り、もごもごと話し始めた。
「俺は、舞とかそういうのやる質じゃねえんだよ。槍術ならまだしも
……
」
密偵として働かされていた時に、房中術とか女を誑かすような術は仕込まれた。けど、こんなのは初めてだ。
見様見真似でどうにか追いついて、それでやっとだ。正直言うんなら、山南先生や沖田先輩のが上手くやれる。
「
……
それに、俺の背丈見りゃあ分かるだろうが
……
振り間違えたら目立つんだよ
…
」
そんなの、ましてや立香に見られたら面目丸潰れだろうが
……
と、彼は目を伏せる。
家臣たちは、「まさか原田様にも苦手なことがお有りとは
……
」と言いたげに互いに目を合わせていた。
彼は生前に密偵として仕込まれていたこともあり、何でも卒無くこなせる人間だった。それは現御神と化した今でも変わらなかった。
何故、立香に舞を見られたくないのか。その理由は分からずじまい。
「
……
この度は身勝手な行動をしてしまったことを深くお詫びいたします。」
気まずい空気の中、家臣の一人が深々と頭を下げたあと、原田に一言告げた。
「
……
立香様、大変お喜びになられていましたよ。『かっこいい、素敵』と。」
原田の瞳孔が一瞬開く。そして、緩みそうになる頬を抑えながら、平静を装う。
やがて家臣が退室し、辺りはしんと静まり返った。
原田は生来より、自己肯定感が高いといえる性格では無かった為、慣れないことに関しての自身の評価が消極的な部分があった。
……
彼が舞を見られたくなかったのは、そこに由来する。要は立香に格好悪いところを見せたくなかったのだ。
常日頃、自身を「かっこいい」「頼りになる」と、人間として慕ってくれている彼に示しがつかないと思い込んでいたから。
しかし、慕ってくれている彼が舞すらも素敵と評価してくれた。
「ま、立香になら見られるのも悪かねえな
……
」
原田は珍しく、満足そうな笑みを口の端に浮かべていた。
その一方、社の一室では家臣の一人と共に勉学に励む立香がいた。
その休憩中の事である。
「本日はここまでに致しましょうか。明日は『現代社会での生活』
……
そうですね、主に家庭を持ったあとの生活や、今の時代にどのような物があるのか
…
その学習にしましょう」
「かてい
……
?"かてい"ってなんですか?」
「家庭
……
ですか
…
?私の例になりますが、何方かと結婚して生活を共にする
…
といった意味が多いかと」
立香様も、いつかは持つ機会があると思いますよ。
家臣が言い終わるや否や、立香は詰め寄る。
「
……
あの!りつかも"かてい"つくりたい!」
「
…
立香様、お言葉ですが
……
貴方様の年齢で家庭を持つのはまだお早いかと
…
!」
「
…
じゃあ、じゃあ!ほかの人のかていに入るのは
……
?」
彼の言葉に、家臣は首を傾げる。
他の人の家庭に入る?嫁入りということか
……
?
「
……
立香様、もしや気になるお方がいらっしゃるのですか
……
?」
先程まできゃっきゃと騒いでいた彼が、急にピタリと静止する。そしてじわじわと、顔が赤く染まっていった。まるで、原田の舞を初めて見たあの時のように。
「
………………
うん」
しばらくの沈黙の後、こくりと頷く。
「
……
立香様の精神的な成長、私めも嬉しく思います。差し支えなければ、お相手をお伺いしても
……
」
「
………………………
原田さん」
立香は、自身の着物の裾をぎゅっと握っている。顔は尚も赤く染まったまま。
「
………
立香様は大変お目が高いですね。教えてくださりありがとうございます。」
穏やかに微笑む家臣を他所に、立香は俯いて話し始める。
「
…………
でもね、りつかは男だから
……
」
その声は消え入りそうで、酷く悲しげだった。
……
りつかは男だから、原田さんはきっとこっちを見てくれない。
「
……
決してそんな事はございませんよ。現代では同性で惹かれ合うのもおかしな事では無いとお聞きしています」
悲しげな声を掬うように、家臣は優しく声をかけた。
「
……
立香様が私どもの主人である原田様の奥方になってくださるのなら、これ程までに嬉しいことはございません」
きっと
……
いえ、絶対に私以外の家臣も喜んで下さることでしょう。
その言葉に、立香は顔を上げて満面の笑みを浮かべた。
「そうだといいなぁ!」
後日、その希望が容易く砕かれてしまう事に、この時は誰も気付いていなかった。
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